楽勝だったのだ。だってドラゴンだよ?
場面は飛ぶが、なんかディア君がテイマー大会の本戦、『大従魔杯』とかいうのに出て優勝した。
「……優勝、ディア選手ーーーーーーーーーッ! 新星の如く現れた白銀の姫!! 伝説の龍の巫女ーーーーーーーーーッ!! 相棒のドラゴンを乗りこなし、たった1体で大会を蹂躙したぁーーーーーーッッ!!」
「ど、どーも……」
『楽勝だったっすね! ディア君ちゃん!』
そうなのだ。楽勝だったのだ。だってドラゴンだよ?
そもそもテイマーでひとくくりにして重量無制限なのは、ボクシングで言えば男女混合
で、ドラゴンはそこにアイアンゴーレム連れてきたり新幹線(しかも助走可)を持ち込んだりするような環境破壊なわけだ。ひどい。
まず大抵はひとにらみで動けなくなり、軽くブレスふけば倒れるし、空を飛べば手も足も出ない。鳥系のモンスターも居たけど、べしっと叩けばすぐ落ちた。
サンダードラゴン、空でも隙はない。そして、唯一の弱点足りえる
「アーサー、本当に無敵ですね」
『姐さん相手でもなきゃ負けねぇっすわ!!』
「あれ? そう考えると、お姉さん強すぎません?」
『今更っすよディア君ちゃん!』
ちなみに賭けは優勝しても1.1倍のオッズ、しかも賭金上限が金貨1枚だった。シケてんにぇ。でも仕方ないね。ドラゴンだもの。
優勝賞金が金貨20枚らしいし、ディア君お金持ちになったなー……あ、私もこの間金貨めっちゃ稼いだんだった! えへへ、大富豪!!
「えー、見事優勝したディア選手とアーサー様は、殿堂入りが決定しました! おめでとうございます!」
「殿堂入り?」
「はい! 大変名誉なことですよ! おめでとうございます!」
「……ありがとうございます?」
と、司会のごり押しにディア君は頷いた。まぁ殿堂入りとは言うけど、実質出禁だ。勝てないから出ないでくれというやつである。……ドラゴンだもんなぁ。
殿堂入りすると年金とか出るの? あ、出るんだ。じゃあ不労所得ってことじゃん。いいな。毎年徴収しに来ようね!!
「あ、ボクはエルフですけど大丈夫ですか?」
『自分もドラゴンなんで数百年くらいいけるっすよ?』
「……寿命長いっすね……だ、大丈夫です」
かくして、ディア君はテイマー殿堂入りを果たした。
よーし、今日はお祝いだぁ!
* * *
「龍の巫女様」
控室で、ディアは白いローブを着た女にそう呼び止められた。
ちなみにアーサーはちゃっかり小さくなってディア君の隣に飛んでいる。
「……ボクのことですかね?」
「はい。龍の巫女様。ご尊顔を拝めて恐悦至極に存じます」
と、目隠しするように顔の少し前に両手重ねてから、深々と頭を下げる女。
「いえ、ボクは別に龍の巫女ではないのでお気になさらず。では」
「お待ちください。どうかお話を聞いてください巫女様!」
「そういうのボクに言われても困りますんで……」
ディア君はさっさと控室から帰ろうとしたが、回り込まれた上に膝をつかれてしまった。さらに伏して嘆願の構えをとった。
「ドラゴン様と言葉を交わせる、それすなわち巫女の証……! どうか、どうか我々を助けてください、巫女姫様ァ!!」
むむ、と足を止めるディア。助けて、と言われてしまった。
ディアが憧れ、恋焦がれるあの人であれば――助けてと言われて、話も聞かずに放り出すようなことはしないだろうから。
小声でアーサーと話をするディア。
「……ねぇアーサー? アーサーとしゃべる人が全員巫女ってことになるんですか?」
『え、どうなんすかね? しいていえば姐さんが巫女だと思うっすよ?』
「うーん。……じゃあアーサーが話聞いてあげてもらってもいいですか? ボクが聞くと巫女云々でややこしいことになりますし……」
『えー。まぁディア君ちゃんが言うなら仕方ないっすね』
尚、ここまでアーサーは単語帳で会話している。随分と慣れたものだった。
……が、相手は伏していてこちらを見ていない。
「ほら、顔を上げてください。アーサーが話聞くんで」
「あ、ありがとうございます巫女様!……え? ど、ドラゴン様が!?」
顔を上げた女の視界に、アーサーが単語帳を開いて示す。
『ほら話せよ下等生物』
尚、カリーナの庇護のない相手に対してアーサーは
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(ミーシャとアーサー君の初遭遇について、サポーター限定SSとして近況ノートにあげときましたわ。あんまりサポーター還元できてなかったのでな!)
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