複雑な家庭環境にゃんね……



「なんということでしょう……私でも一度に呪いをはがし切ることはできませんでした。なのでしばらく週に一度教会に通いなさい。いいですね、ミーシャさん?」

「は、はいですにゃ……ッ」


 いけしゃあしゃあと言う神様人形に、素直にうなずくミーシャ。

 ……そりゃ最初から呪いなんて掛かってないんだから、誰にも剥がせないっすわ!



  * * *



「……カリーナ。おめー、マジで神様の使いだったんだにゃ……」

「まぁ一応ね。秘密だよ?」


 と、お尻を真っ赤にしたミーシャと私は仲良くカフェでお茶していた。


「正直、この秘密を共有しているミーシャとは親友になれると思ってる」

「……ッ! ま、まぁー、おめーがどうしてもって言うなら友達になってやってもいいにゃよ?」

「あ、じゃあいいや。やめとく」

「なんでにゃ!? そこはどうしてもっていうトコにゃん!?」


 そういうからかい甲斐のあるとこ大好きだね、親友!


「まぁ折角だしウチに遊びにおいでよ。ドワーフの酒御馳走するし」

「おーおー、まぁお呼ばれしてやるにゃ!……あと、軟膏とかねーかにゃ? 尻ヒリヒリするにゃん……」


 ああ、カフェの椅子に座るときもビクッてしてたもんな。


「私の奥さんにお薬調合するのが上手な子がいるから、頼んどくよ」

「そーいや5人も奥さんがいるとか言ってたにゃ。あれマジにゃ?」

「うん。ドワーフでね」

「へー。腕のいい鍛冶屋紹介してもらえねーかにゃー」

「別にいいよミーシャなら。でもお金はちゃんと払ってね」

「おうにゃ! 裏表の大会準優勝の賞金もあるし、相手があの五大老でもなきゃ頼めるはずにゃ!」


 あ、じゃあ足らねぇかもな。



 と、カフェでのんびりお茶をして、ミーシャの尻が落ち着いたころあいで私はミーシャを拠点に招待。アイシアが出迎えてくれた。


「ただいまー。ルーちゃんいる? お尻の腫れに効く軟膏が欲しいんだけど」

「おかえりなさいませあるじ様。ルー様なら工房ですよ。……そちらは、ミーシャ選手? あるじ様の招待なら特に言うことはないですが」

「んにゃ。よろしくにゃ! 私も有名になったもんにゃ。サインあげてもいいにゃよ」

「あ、結構です」


 と、アイシアにサインを断られてミーシャはしょぼんと眉を下げた。


「にしても、驚かないんだねミーシャは。この空間について」

「さっきの神様のところで十分驚いたからにゃ。似たようなもんにゃ?」


 なんという柔軟な発想。やりおるわ親友。


「あの半分ドワーフが嫁のドワーフにゃ?」

「いや、あの子は嫁の一人の孫の一人で私の奴隷だよ」

「??? 複雑な家庭環境にゃんね……」


 うん、言ってて私もそう思ったよ。

 と、私はミーシャを連れて五大老工房へとやってきた。


「ルーちゃーん。お尻叩かれて腫れた子につける軟膏とかあるー?」


 工房に入ると、ディア君のゴスロリドレスのメンテナンス中で、五大老かよいづま全員が揃っていた。

 五大老の技術の粋を集め過ぎたこの装備は、現状まだ運用データを取る必要があるため細かいメンテナンスが必須なんだとか。

 中身のディア君はゴスロリドレスを脱いだ後、今はお風呂に入っているらしい。だからただいまの時に見なかったんだね。


「あ。カリちゃんいらっしゃい。ルーちゃん、軟膏だって」

「おしり叩かれたって? そんな腫れるほど叩かれたの?」

「わっちも昔おかーさんに叩かれたことあったなー」

「アーちゃんのお母さん厳しかったもんねぇ……」

「はいどーぞ。打ち身や内出血によく効く軟膏だよカリちゃん」


 と、例によって5人はわちゃわちゃしつつ、ルーちゃんが軟膏をくれた。


「ありがとルーちゃん。ほい。どうぞミーシャ」

「お、ありがとにゃ! この子たちがカリーナのお嫁さん達なのかにゃ? 誰も孫がいるような年齢にはみえないけどにゃ」


 にゃーん、とのんきに5人を見るミーシャ。

 逆に5人の目が一瞬ギンッと鋭く光った。


「身体能力だけで戦ってるね」

「才能はそこそこあるけど持て余してる。修練不足」

「うーん、まぁ悪い子ではなさそう。でももっと鍛えて」

「お尻から、聖なる気配を感じる……?」

「いい素材になりそう――総評は『並』かな?」


「お、おう? 並みかぁ……うにゃ!? なにこの軟膏、すげー効く!? え、尻の痛みが消えたんだけど!? 腫れもおさまってるにゃ!?」


 自分で軟膏をヌリヌリしていたミーシャが驚いて自分の尻をみようとくるくる回る。


「お、やった。実験成功。それ新作なの」

「すげーにゃ。アンタがつくたのかにゃ? さぞ高名な薬師にゃんね。ありがとうにゃ! 名前を教えて欲しいにゃ! あ、私はミーシャにゃ!」

「ん? えっと、バールゼブル・ショーニン……きゃっ、言っちゃった!」


 と、私の苗字を付けての自己紹介に照れるルーちゃん。かーわーいーいー!


「ばーるぜぶる……たしかテッシン五大老と同じ名前にゃ! この腕前ならきっと五大老を越えられるにゃよ!」

「あ、本人だよ。ショーニンは私の屋号だね」

「……にゃあ?」


 私のネタバレに、流石のミーシャも目が点になった。


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