ディア君VSお姉さん(全身タイプ熊獣人)(後半戦)


「鍛えられた女の人がイイって人も多いのよね」

「そうなんですか……?」

「お嬢ちゃんにはまだ早かったかしら。うふふ」


 と、そこからディア君は4連勝し、熊お姉さんの右腕が完全に開放された。というか、本気を出すためにわざと負けていったように思える。


「「叩いてかぶってジャンケンポン!!」」


 お姉さんの勝利、と同時に、ディア君の頭にそっと棒が乗せられた。


「……ッ!?」

「ふふっ、やっと一勝できたわぁ」


 おそろしく速い一撃。私じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 左手でジャンケンし、その直後には右手が動いていた。そして、ディア君を気遣うだけの余裕もあった。

 五大老工房製ドレスで身を固めたディア君を圧倒するとか、何者だよこのお姉さん……!


 ミーシャから借りたガーターリングのうち、手首に付けていたやつを外すディア君。それを見つつ、ミーシャがハッとその正体に気が付く。


「ディアちゃんの相手……思い出したニャ! むぅっ、よもやあの血まみれ熊ブラッディー・ベアーが出場しているとは……!」

「知っているのかミーシャ!?」

「ああ……あの人は趣味でハンターをやってる、戦う娼婦にゃ! 鍛え抜かれた筋肉から繰り出される大胆かつ繊細なテクが軍人に大人気だとか……」


 んん? 娼婦の方が本業なの?


「その筋肉に惚れて身請けを求められても、『私より強い雄がいいわ』と腕相撲で圧勝して断るとか……初恋はガロウ将軍らしいにゃ!」

「マジで詳しいなミーシャ。ちなみに戦闘方面の腕前は?」

「野生の熊を素手でボコボコにして『どっちがモンスターか分からないぜ』と揶揄われるレベルかにゃ。戦闘スタイルは格闘家グラップラーにゃ」


 なにそれ強い。ディア君勝てるのかな?


「パワータイプっぽいのに、ミーシャより早くね?」

「私のんが早いにゃ!……たぶん……おそらく……まぁ、うん……」


 自信なく答えるミーシャ。


「でぃ、ディアちゃん! がんばるにゃーーーー! 私の為にもそいつを上に上げないで倒しちゃってーーーー!!!」

「身も蓋もねぇ自分のための応援ウケるんだけど」

「うっせー! おめーもディアちゃん応援しろにゃ!」

「がんばれディアくーん!」


 ディア君は私の応援が聞こえてるかどうか分からない程、ジャンケンに集中していた。


 しかし、相手のお姉さんはあんまり勝つ気がない模様。

 ジャンケンで兜をかぶる時はゆっくりで、ディア君の攻撃をぱこんと頭に受け入れている。


「あーん、また負けちゃったぁ」


 そう言ってずしーんと腕輪を外すたびに一部の観客がごくりと生唾を飲んでいる。どういう性癖なの。強敵がパワーアップすると燃える戦闘民族さんか?


 と、ここで熊お姉さんがディア君に小声で話しかける。

 観客に聞こえない声量だが、空間魔法で盗聴だ。


「さて、と。これで腕輪は全部外れたわけだけれど……私の服はあと5枚。その間に、こちらも多少は脱がさせてもらうわよ? お嬢ちゃん」

「……! 最初から勝つ気はない、と?」

「最後まで本気出してほしいなら出すけれど、私にそれほどメリットないのよね。お金は十分持ってるし……早くこの肉体美を皆に見せつけたいのよ」


 あ。なるほど、露出好きで大会参加してるタイプ。

 腕輪は観客への焦らしプレイですかそうですか。



 で、その後ディア君は腕に付けていたガーターリングを全て取られたところで、熊お姉さんが全部脱いだ。ディア君の勝利だ。


 そして会場は超沸いた。主に獣人たちが。

 一部静かなのは私同様旅行者の獣人じゃない外国人の模様。


「フッ、まさか全部脱ぐまで降参しねーとはにゃ……!」

「全身タイプの熊獣人とか普通に野生の熊と変わらないように見えるんだけど、獣人には何か違うモノが見えるの?」

「は? おめー、あのオッパイがみえねーの? 下も丸出しとかド変態すぎる女にゃよ……」


 毛皮しか見えんが??

 やはり獣人には私には見えないものが見えているようである。いや、身体埋めたらモフモフで気持ちよさそうだけどね。マシロさんもそうだし。


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