もう1枚預けとけばよかったわ


 一日目を終えて、私は控室でそのまま泊まることにした。

 別に宿に戻っても良かったんだけど、大会の控室でお泊りなんてめったにできないもんね!


 まぁ、アイシアとディア君も晩御飯は一緒にここで食べたものの、拠点の方に戻ってったけど。一緒に部屋で寝てよかったのに。


「というわけで、マシロさんをお呼びしました」

「……マジで空気がテラリアルビーの、テラリアワンの、中央コロシアムだな」

「そうだけど?」


 国境を無断で超えたら密入国だろ……とか言うマシロさんだけど、この部屋からでなけりゃいいだけの話よ。うん。マシロさんならそこらへんしっかりしてくれるって信じてる。


「ついでに、この国の事について聞いておこうかと思って。今更だけど」

「前にも色々言ったろ? 大体それで全部だよ」

「ちなみに私、今マシロさんから預かったお金も賭けて大会出場中ね」

「よし何でも聞いてくれ」


 マシロさんが協力に前向きになってくれたところで、質問してみよう。


「んじゃ、改めて確認したいんだけど……王様も白狼族なんだよね? マシロさんと同じ」

「おう。バルバロス様も白狼族だぞ。ああ、もし大会で当たっても遠慮することはねぇからぶちのめせ。あのおっちゃん、一番人気だけどちょいちょい大会で負けたりするし特に気にするこたぁねえよ」


 王様をおっちゃん呼ばわりするんだマシロさん。


「一応、滅茶苦茶遠いとはいえ親戚だからな。大会で戦ったこともある。勝てなかったけどなかなか善戦したぜ?」

「おー、マシロさんが勝てないだなんてすごいね!」

「お前が言うか??」


 まぁベッドの上では勝てないじゃん。ね?


「ま、ガロウ将軍の方が手ごわいかもな」

「そうなの?」

「黒狼族は闇に紛れたら見つけにくいんだ。昼の白狼族、夜の黒狼族ってな」

「なるほど!……でも大会は昼間の明るい時間にやるよ?」

「暗器とか使ってくるからよ。アタシも少し嗜むが、黒狼族は本格的だぞ?」


 もし黒狼族と当たる場合は、守備をしっかり固めた方がよさそうだ。


「ま、どちらにしてもお前の敵じゃねぇよ。優勝して精々稼がせてくれ」

「うんうん、任せておいて。このまま勝てば10倍――ディア君ので増やした分も含めたら200倍になるからね!」

「……カリーナに金貨1枚預けてたよな?」

「このままいけば金貨200枚になるね」

「くひっ……」


 マシロさんの顔が引きつった。


「……わりぃ、なんか変な笑い出た」

「あ、今の笑いだったんだ。初めて見た」

「はー、マジか。金貨1枚が200枚? とんでもねぇボロ儲けじゃねぇか……真面目に仕事すんのがバカらしくなってくんなぁ。……もう1枚預けとけばよかったわ」


 そう言うマシロさんだが、「これで五大老の姐さん達に装備注文できるぜ」とか言ってるあたりまぁ冒険者を辞める気はないだろう。


「ところでカリーナ。大会で11連戦したんだって?」

「ああうん。その後休憩挟んで1回戦ったところで明日に続く感じ。予選も今日まとめてやったみたいな?」

「めっちゃ戦ったなぁ……そんだけ戦ったんなら、さぞ昂ってるよな?」


 言いながらマシロさんが部屋に備え付けてあったベッドに腰かけ、ぽんぽんと叩く。

 ……お? これは誘われてるな?

 いいぜ乗ってやるよ! 私の準備はできてるぜ!

 と、私はマシロさんの隣にちょこんと座った。


 か、かかってこぉい(受け身)


「このためにディア坊達を帰してアタシのこと呼んだんだろ? いいぜ、家賃の時間だ。こんな部屋で一度してみたかったんだよなぁ」

「……くぅん!」


 マシロさんにたっぷり家賃を払ってもらったので、私は明日の大会にスッキリした気分で挑むことができそうだった。




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