きっと儲かってるに違いない


 控室に行くと、そこは個別の選手控室で結構広かった。

 絨毯やベッドまでおいてあり、このままホテル代わりに泊まることもできそうなしっかりした部屋だ。テーブルに軽食のフルーツまでおいてあるよ。


「お疲れ様です、お姉さん」

「お疲れ様ですあるじ様!」


 で、ディア君はパーティーメンバーということで入れた模様。アイシアは私の奴隷なので所有物扱いで同様。


「さーて、ここから本戦らしいから、優勝目指して頑張るよー」

「あれ? 先ほどのって予選だったんですか?」

「あるじ様なら何でも勝てるだろうと適当に大きそうな大会にエントリーしただけだったので、私も詳しくは知りませんでした。そうだったんですね」


 予選があったのは私のところだけだったみたいだけど、きっと急遽参加したからだろう。他の参加者はみんな予選を既に突破していたに違いない。


 ……うーん、案内人みたいな人がいないとこういうの分からないこと多いよねぇ。

 無理言ってでもマシロさん連れてきた方がよかったかもしれないなぁ。


「けどまぁ、私にできることはとにかく勝つことだけ! たとえ相手に王様とか出てきても、絶対勝ってみせるからね! 金貨82枚もかかってるし」

「はい。あるじ様ならきっとバルバロス王にも勝てます!」

「そうですね。お姉さんならきっと勝てるでしょう。でも気を付けてくださいね、バルバロス王は強い女を見ると妾に誘ってくるそうなので」


 なるほど。それは気を付けないといけないな。ディア君をとられないように。

 テイマー大会でドラゴンを従え圧倒的勝利した謎の美少女、ディア君をとられないように!!


「うーん、王様相手にしたら弱いフリしてラッキーパンチで勝つ、みたいな演技しなきゃね」

「それで誤魔化せるといいんですが……」

「ごまかせなかったらその時はその時ですね。あるじ様なら逃げ切るのも簡単でしょうし。……次以降の試合に備えて、一応情報収集しておきますか?」


 今更、という感じもあるが……頼んでおいた方が良いかな。

 情報は大事だもんな!


「そうだね、お願いしようかな。頼むよアイシア」

「はい! お任せください!」

「ところでお姉さん、あと何試合勝てば優勝なんですか?」

「わかんないけど、まぁ全員倒せば優勝だよ。うん」


 と、控室に置いてあったフルーツを手に取る。本選出場者向けにこういうサービスもあるとか。いい大会だなぁ。きっと儲かってるに違いない。もぐもぐ。


「……お姉さん、それ毒とかはいってないですよね?」

「大丈夫だよ。空間魔法でスキャンしたけど、これもフツーのマスカットだ」


 大粒のそれを1つもぎ、パクっと食べる。うーん、甘い。果汁がのどに染渡る。

 赤いリンゴを空間魔法で8分割にパカッと切り分け、ディア君にも一切れあげた。


「あむ。……シャクっとしてて美味しいですね。これ、かなりいいやつですよ」

「そうなの?」

「はい。王族とかにきょうされるたぐいの高級品だとおもいます。……もしかしたら、大会に王族が出てるのかもしれませんね。控室に置いてあるのは、そのお零れではないでしょうか」

「あるじ様、私にも一切れいただけますか?」

「いいよ。はいあーん」


 アイシアの口に運んであげると、しゃくっとリンゴを食べる。


「……っ、す、すごく美味しいです! あるじ様、これ食料保管庫にコピーしておくべきやつです!」

「それほどかぁ。まぁ、売らないならいいかな。うん」

「ふへ、これを食べ放題……やはりあるじ様の拠点は最高ですね……! しかもあるじ様手づからのあーんで食べたら、美味しさも倍々というものです!」

「あはは、ありがとね」


 五大老かよいづまのみんなにも食べさせてあげよう。……いや、みんななら食べ慣れてるかもしれないな。ミーちゃん女王様とかだし。


「みんななら、こういうのを育てる魔道具とか作ったりしそうだよね」

「魔道具で、ですか?……確かに、拠点の環境をうまく使えばできそうですね。嵐とか害虫とかを考慮しなくていいですし」

「魔道具による全自動農場……アリだな」


 種から作るとなると今日ここで手に入れた果物を、というのは私的にルール違反だが、ミーちゃんの伝手でいい種を仕入れるならそれはアリだ。


「拠点に畑かぁ……そのうち拠点の中に国ができちゃいそうだね」

「作ろうと思えば簡単に作れるでしょうが、お姉さんに依存しすぎなところがありますからおすすめはしません」


 と、真面目に回答してくれるディア君。ディア君がそういうならやめとこう。

 私もそこまで大きくしてしまったら責任取れない。取りたくない。私が愛でられる範囲までしか囲い込む気はないしね。


「か、カリーナ選手。次の試合の準備をお願いします! あ、本日最後の試合になります!」


 と、スタッフが呼びに来た。


「ん? あー。2日にわけるタイプの大会だったんだね。そっかそっか」

「はい。本日はこの部屋をご自由にお使いください。勝っても負けても、はい、一晩はご自由にお使いくださって大丈夫なので」

「そっか。じゃ、いってくるかな……本戦に!」

「では私は情報収集に行ってきます。情報は適宜拠点経由でメモを置いておきますので、確認してくださいね!」

「僕は観客席から応援してますね!」


 私にあわせて、ディア君とアイシアも部屋を出た。


 試合? まぁまだ本選の第一試合だしね! あっさり勝たせてもらったよ。




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