テイマー専門大会『従魔杯』
テイマー専門大会『従魔杯』。
それは、テイマーとして名を馳せんとする者達の登竜門。
この大会で上位入賞すれば、年に一度行われる最大の見せ場、『大従魔杯』に出場するための資格を得ることができる。
そのため、『従魔杯』に出場する選手たちの目は野望に満ちていた。
そんな中、可憐な、一輪の花のような少女が大会にエントリーしにやってきた。
銀髪を
これは初心者向けの大会である『従魔レース』や『従魔大会』と間違えてエントリーしてしまったのではないか――と、受付の男は思った。
「お嬢さん、こちらは『従魔杯』の受付だよ。初心者大会じゃないよ?」
「あ、はい。大丈夫です」
受付で、Dランク冒険者のギルドカードを提示して受付用紙に必要事項を書く少女。
テイマー名、ディア。従魔:アーサー。以上。
「おや、従魔は1体だけかい?」
「ええ。あ、何体かいないとダメとかでしたか?」
「そんなことはないけどね」
ただ、当然ながら複数の従魔が居たほうが、勝てる。
そういうこともあり、この『従魔杯』ではエントリー可能な最大数の6体までをフルに用意して挑む出場者が殆どだ。
「負けても泣かないでおくれよ?」
「大丈夫です」
にっこりと微笑む少女に、男の胸はドキッと高鳴った。
もしこの子が泣くのなら胸を貸してあげたい、とそう思った。
そして始まった従魔杯。
16人によるトーナメント戦だ。今回は丁度16人のエントリーで、オブザーバーの出番もなく、余りとなって他より多く試合をすることになる選手もいない。
そして、この従魔杯では優勝予想の賭けが行われる。上位大会程ではないが、それなりに大きなお金が動くギャンブルだ。
無名選手「ディア」の
本来ならもっと大きく倍率が開くところだが、本人の自分への賭け金(選手は自分にだけ賭けることができる)が金貨4枚あり、この倍率に落ち着いた。
他の出場者が従魔を連れて会場に入ってくる中、ディアは従魔を連れていなかった。
そして、貴族のダンス会場でも見かけないようなフリフリヒラヒラした黒いドレスを身にまとっている。
明らかに場違い――そんな視線がディアに向けられる。
「ディア選手。従魔はどうした? 1体もいないなら失格だぞ?」
「あ。すみません。今出しますね」
と、ディアは手に玉を持った。手のひらに乗るサイズの玉だ。
その玉に入るとは、どれだけ小さい従魔なんだ? と他の出場者は思った。
「出ておいで、アーサー」
ぽいっとその玉を投げると、玉が割れて従魔が出てきた――
『ギュアアアアアぉおオオンっ!!』
――サンダードラゴン。
それは、従魔がたった1体である不利を軽くはねのける、とんでもない存在だった。
馬車ほどの大きさのある巨体が、手に戻っていったあの小さな玉に入っていたのだろうか。どうやって。
いや、恐らくドラゴンを使役できる
「さて、第一試合を始めましょうか」
その笑顔は、天使のようでもあり、死神のようでもあった。
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