家賃代わりに作ってもらいますか?
その試合で勝利したのは熊耳獣人の方だった。
だが両者ともアザだらけで痛そうだ。めっちゃ殴り合ってたし顔も容赦なくだったもんなぁ。
「これ、トーナメントでしょ? 次の試合までに治るもんなのかね。どうなのアイシア」
「ポーションがありますし、治ると思いますよ」
ポーション! なるほどそれがあったか。
見ていると選手二人は運営スタッフからポーションをもらって飲んでいた。一部直接アザに塗ったりも。おー、打ち身くらいならすぐ治るんだね、すげー。
「ポーションはルーちゃんが得意なんだよねぇ。作ってもらって売るのはアリかな」
「……おばあちゃん達のポーションなら、間違いなく売れますね。五大老印でもつけて売ります?」
(思い出のカフェの話とか聞いててちょっと気まずかった)
「僕もそれは良いアイディアだと思いますよ。ヒーラーがミーさんの息子になってますし、その伝手で仕入れたと言えば自然でしょう。家賃代わりに作ってもらいますか?」
「家賃かぁ。そういや特に考えてなかったな」
だって妻から家賃貰うってなくない? むしろ工房を餌にして住んでもらってる感ある。
「マシロさんは家賃払ってるって聞きましたよ。別にいいんじゃないですか?」
「んぐっ!? でぃ、ディア君。その、あー」
マシロさんの家賃はカラダで、カラダに払ってもらっているので、まぁうん。
ってかそれで言ったら五大老のみんなも家賃払ってもらってるわけで!
「あ。……奴隷のアイシアさんはともかく、僕も家賃払ったほうが良いですよね?」
「え!? あ、う、うーん、き、気にしなくていいんだよ!?」
「いえ! こういうのはしっかりしておかないと!」
そ、そんな。ディア君から家賃を払ってもらうだなんて……ッ!
ディア君は観賞用美少女なのに、家賃だなんてそんな……うう、で、でもディア君がどーしてもって言うなら……ちょっとくらいなら……あとでマシロさんにお仕置きされちゃうだろうけどそれもまた……
「ちなみに月あたりおいくらなんでしょう? 手持ちはお姉さんからもらったお小遣いくらいしかないので、僕の国に行ったら纏めて払う形になると思いますが」
「え!? あ、そ、そうだね! お金かぁ……お金だよね、うん」
あれ。ちょっとホッとしてるけどガッカリもしてる自分がいる。
「ディア様。金銭で払うと、あるじ様の拠点クラスの部屋は相当な額になりますよ? お風呂使い放題、作業場あり、完全に安全な個室、三食ごはん付き。敷地面積は計測不能でペット可ですし」
「……確かに。ドラゴン飼える環境とかそうそうないですよね」
「アーサーは私のペットだから! ノーカン! ノーカンだから!」
私よりディア君に懐いてる感はあるけど、アレあくまで私のペットだからね!
しかし、言われてみれば私の所有物にあたるアイシアやアーサーはともかく、ディア君は完全に私が養ってる感じだった。可愛い上に超賢くて頼れる仲間なんだけど。
「やはりここは、ディア様にも身体で払ってもらうのが手っ取り早いのでは?」
「えっ」
「そうなりますか。僕もやぶさかではないですが」
えっヤダうそまって、ディア君にもやっぱりカラダで家賃を払ってもらうの!?
……朝起きて腕の中にディア君がいたりなんかしたら超幸せだろうなぁ……
「とはいえ、家事はアイシアさんの仕事で、最近は物作りも五大老工房が稼働して僕の出る幕じゃなくなってるんですよね。ついでにって色々教わってますし……」
「ディア様にはアーサーの面倒を見る仕事があるじゃないですか」
「それも普通に遊んでるだけですけど……そうなるんでしょうか?」
あ、うん。身体で払う、つまり普通にお仕事を担当ってことね。
ちょっと焦ったわ。ちょっとだけね。
「……んじゃあディア君の家賃は、可愛い格好するのとアーサーの面倒みることで払ってもらってるってことにしとこ。今更徴収したくもないし。……ってか仲間なんだから気にしないで。私、ディア君にはいつも助けてもらってるもん」
「むぅ、お姉さんがそう言うなら。……あ、次の試合始まりますよ!」
そう言ってリングを見るディア君。
ちなみに私がディア君の『家賃』を考えて悶々としていたら、いつの間にか試合は終わっていた。
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(20日に発売だぞー!!
bookwalkerでも予約できるよ!)
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