この国は教育によくないかもしれない
テッシン・ギドラーガ帝国・パヴェルカント王国、の3国に囲まれた小国、テラリアルビー。その国境は何事もなく通過した。
車についても『ドワーフの新作』で通るあたり、ミーちゃんからもらった身分証はとても便利である。
で。今は首都テラリアワンに向かって車を走らせていた。
「テラリアルビー、国境を越えてわずか1日で首都、というかほぼ首都しかない国なんだねぇ」
「小国だとたまにそういうのもありますよ、あるじ様」
旅に詳しいアイシアが言うならそうなんだなとすんなり納得できる。
まぁ実際、首都の周囲に農村・開拓村等あるものの、宿場町も途中に1つしかなかった。
車すっ飛ばしたんでその宿場町もスルーしたけど。
「テラリアワンってことは、テラリアツーとかあるのかな」
「ここの兄弟国には、テラリアニャー、テラリアパオンというのがありましたね」
「じゃあ国名の方はテラリアサファイアとか、テラリアスカーレットとか?」
「いえ、兄弟国ですが、元々テラリアルという大国があったらしいです。そこが内戦で独立してテラリアルアー、テラリアルビー、テラリアルシーといった国々に分裂したという話をきいたことがありますよ」
国名の方はルビーじゃなくて
……まぁどうでもいいか!
今いる国はテラリアルビーで、目的地は首都はテラリアワン!
それだけ分かってればヨシ!
* * *
さてさて。特に何事もなく首都テラリアワンへと着いた。
改めましてテラリアルビー。獣王バルバロスが治めるこの国は、主に観光によって栄えている。
その観光の主体となっているのが、首都にあるコロシアムだ。
血沸き肉踊り血しぶき舞う物騒な見世物は、地球は古代ローマでも大人気だった興行。この世界でも大人気である。
大人気であるため、首都テラリアワンには中央の円形大闘技場の他、何か所も闘技場がある。そして連日何かしらの大会が開かれているそうな。
差し当たりこの近くの闘技場で小さな大会があるそうなので、アイシアとディア君を連れて観戦してみよう。ふらりと観戦立ち見もOKらしい。
この大会の立ち見席観戦料は銅貨5枚、つまり中銅貨1枚だ。3人分ちゃりーん。
中央にリング、その周りには観戦者用の椅子がならんでいる。あのあたりはS席とかA席とかのチケットを購入しないといけない。私達はふらりと立ち見なのでさらにその椅子を囲んだところの段々になっている外側席だ。
プロレスとかボクシングの興行に近いイメージだ。リング周囲の席も8割埋まっている。
うち半数が獣人といったところか。マシロさんみたいなモフモフ系は1割くらいとみた。
「やっぱり獣人の国ってだけあって獣人が多い。でも、それ以外の人も結構いるね」
「そりゃああるじ様、ここってば観光地ですよ?」
「外貨が稼げそうでいいですね。ああ、実際稼げてるのか」
なるほど、私達含めて観光客が多いのも観光地だし当然と言えば当然だ。
そしてディア君の感想が実務的。そんなとこも可愛い。
少し待つと、試合が始まった。
大会ルールは魔法ナシの素手ゴロ。強化魔法も禁止なので、ぶっちゃけ私が出たら負ける大会だ。
ムキッと日焼けした筋肉が眩しい男二人――片や熊耳獣人、片や人間――の純粋な殴り合い。
おおう、バチンバチンと拳が肉を叩く音が結構えぐいぞ。
こんなの見せて両隣の二人は大丈夫かな……チラッとアイシアを見る。
「そこだー! いけー! ぶちのめせー!! いいぞー!!」
ノリノリだ!! ってかそんな風に声援とばすんだアイシア!?
え、吟遊詩人は流行や一般人が好きそうなものは当然の嗜みですか。
……ディア君の方は? チラッ!
「あのパンチ、狙いが鋭いですね。筋肉の質かな……」
自分の細腕を見ながらなんか言ってた。
ディ、ディア君はムキムキになっちゃやだよぅ!?
うう、この国は教育によくないかもしれないね……!!
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(いよいよ1巻が11/20(月)に発売ですよ!
2巻以降のためにも、買って応援してくれると嬉しいです!!)
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