あれもこれと同じシステムじゃないか!!



 スデゴロトーナメントを観戦し終えた私達は、宿を探しつつ適当に町をぶらつくことにした。


 観光客大歓迎な国であるテラリアルビーには宿がたくさんあるし、焦って探す必要はない。

 また、最悪宿が取れなくても問題ないので気楽に散歩だ。拠点あるし。


 宿には、『拠点に出入りする扉を安全に置く場所』『そこに泊まっているというアリバイを作れる』という役割しか求めていない。

 個室の宿ならどこでもいいってのは、かなり利点だね。


「私としては参考のために料理も求めたいところですが、それはレストランや酒場でもいいわけですし」

「アイシアは真面目だなぁ」


 コロシアムの周りには市場や屋台が出ておりにぎわっている。道行く人の半数は耳や尻尾があり獣人だとすぐ分かった。

 屋台には古着屋もあった。売っているズボンにも大体尻尾穴が空いており、尻尾がない人向けに「尻尾穴を塞ぐ用のハギレ」も併せて売られている。縫う手間賃はサービスでしてくれるらしい。さすが獣人国、そして観光地だ。


「へぇ、これは上手い商売ですね。尻尾穴塞いだら返品不可でしょう」

「えっ、そうなのディア君?」

「改めて古着として売ることはできますが、『尻尾穴塞いだんだからもう他の人には売れないよ』という感じです」


 そう言われて、ハッと日本の記憶が蘇る。

 中学の修学旅行で京都に行ったとき、京都とは何の関係もないメリケンサックや手錠を売ってる店が、そして『無料で名前を彫るサービス』があったが……今思えばあれもこれと同じシステムじゃないか!!

 なんてこった。当時の私は何も気づかずメリケンサック購入して名前入れてもらって喜んでたわ! 尚、一度も使うことなく実家の机の中にある……!!


「……まぁ、それはそれでいい思い出だよねっ!」

「返品しないなら関係のない話ですしね。ええ」


 まぁ木刀よりは場所取らないし、先生にもバレなかったもんな。木刀買ってたやつは普通に先生に怒られてたなぁ、ハハハ。



 と、観光客向けの市場で見慣れない果物と野菜を買ったところで、そういえば商人ギルドにも冒険者ギルドにも行っていなかったことを思い出す。


「すみませんあるじ様。私も気付いてませんでした」

「そういえば、今日はお姉さんと一緒に観光してるなって少し思ってました」

「うん、初手で闘技場行ってすっかり忘れてたよ。ちょっと行ってくるねー」


 と、ディア君達にマーキングをつけて商人ギルドへ向かう。

 場所は丁度買い物したばかりの八百屋の店主に聞いたのですぐ分かった。



 で。

 商業ギルドに火酒を卸して金貨3枚をゲットした。ついでに何か仕入れたいと思ったのだが、ここはコロシアムを中心とした観光が主産業ということもあり、珍しい特産品などはない模様。


 市場にあった見慣れない果物や野菜でも買い込んでみるかなぁ。いや、そんな日持ちしないモンみたいだし一介の行商人が仕入れるのはおかしいか……? ヒーラーが冷蔵庫用意したって言い張ればあるいは……?



 うーん、と考えつつ次は冒険者ギルドへ行き、テッシンからの配達依頼をこなしてお小遣いゲット。

 さーてディア君達と合流しようかなー、と、考えていたところで受付の人に声をかけられる。


「おめでとうございます。Dランク昇格ですね」

「お、そうなの? やった。手続きお願いします」


 確かDランク条件は月大銀貨2枚稼げて期間も必要って感じだっけ? 前に木こりで荒稼ぎした分があったもんなぁ。


「『フェイカーズ』パーティーメンバーのうち、ヒーラーという方はCランクに昇格できますね。お伝えしておいてください」

「あ、そうなんだ。了解です」


 え、Cランクとか私抜かされたんだけど? 特になんも依頼こなしてなかった気がするのに……あ、カルカッサでの功績が積もってたのか。アレ報酬が金貨だったもんな。


「ちなみにディア君は」

「その方はEランクのままですね」


 まぁ、ディア君冒険者としては配達依頼しかしてないし、仕方ないね。


「そうそう、この町でランクを上げるなら、ギルド協賛の大会に参加するのも手ですよ」

「へぇ?」


 冒険者ギルドが協賛している大会の場合、参加は冒険者ギルドからの依頼扱い、ファイトマネーも依頼報酬として扱われるとのこと。

 パーティー戦の大会とかもあるのね。ほほう、そりゃいいことを聞いた。


 折角だし、ディア君もランク上げしちゃおうかな!




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(あとごじ1巻発売は11/20(月)! 早売りだともう並んでる可能性もあるのかしら…?)

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