五大老工房(五大老視点)

 カリーナの拠点に、五大老の工房が完成した。

 五大老5人がそれぞれカリーナの能力を聞いて作り上げた、理想を超えた夢の工房。


 空間魔法の壁で作り上げた完全断熱性能を持つ炉やポーション瓶。


 安定した気温と湿度の空間。

 まだ花は咲いていないが、季節ごとの気候を再現している花壇もある。


 ミリ秒単位で正確な時刻を知らせる時計。

 天窓から常に定位置へと降り注ぐ日光と月光。


 いくらでも素材や製造物を収納できる無限倉庫。

 しかも作業場から軽く手を伸ばせば好きな棚にアクセスできる。


 作業を中断する際、空間の時間ごと停止しておける離席機能。

 食事も『作りたての作り置き』がいつでも摘まめ、新鮮で綺麗な水も使い放題――


「うわぁ……こんなの痺れちゃう……すっご」

「こ、こんなのっ……ホントに、ホントにあちき達が使っていいの?」

「わぁ、天窓からのお日様がまぶしいー、満月も綺麗ー」

「すごいねぇ、ありえない光景すぎる。あたし、感動だよぅ」

「調合もし放題……いちいち倉庫にいかなくても手を伸ばせば取り出せる……!」


 あったらいいけどあるわけないよね、を、いくつも現実のものにしてしまった。


「ところでバーミリオン。今更だけど時間に干渉するのって禁忌じゃなかった?」

「カリちゃんは神様から許可貰ってるから大丈夫なんだってさ」

「神様公認なら安心だね!……時間加速ができないのは惜しいけどっ!」


 神様が定めたという禁忌だけど、その神様がカリーナには使っていいと言ってるのだ。

 怖いものなど何もない。


「とはいえ、あたし達が時間に干渉する魔道具とか作るのはマズいよねぇ、多分」

「そもそも理論が分からないし」

「下手に手を出してこの工房から追い出されたらいやだからわっち触んない」


 いや、ひとつだけあった。この工房から追い出されることである。

 それ以外に怖いものなど何もない!!



「あ、皆さん。工房完成おめでとうございます。不具合はないですか?」


 と、そこにエルフの男の、ディアが顔を出した。

 今日はカリーナの好むワンピース姿だ。銀髪ポニーテールのうなじが眩しい。


「お! ディア君ちゃん! 今のところないよ!」

「今日もめんこいねぇ、ディア君ちゃん。飴食べる?」

「工房の設計を先にやらせてもらったおかげですぐ稼働できるよぅ!」

「早速いろいろ作るけど、問題があったら言うねぇ」

「みんなの力を合わせて素敵なもの作るからねぃ」


 五大老達はディアを囲んできゃっきゃとはしゃぐ。

 ロリドワーフ達が男の娘エルフを囲む様は、カリーナが見たらだらしなくにやけていただろう。


「あんまり危ないもの作ったら、ダメですからね?」

「「「「「……わ、わかってるよぅ」」」」」


 と、釘を刺される五大老。

 なんだかんだ甘えれば流されてくれるチョロいカリーナとは違い、ディアはそのあたりしっかりとしている。


 また、カリーナの寵愛を受ける五大老だが、その愛と信頼はディアには勝てないと肌で感じている。女の勘というヤツだ。

 恐らく、ディアと五大老の意見が対立した際、カリーナはディアの方に付く。

 落としどころを探るにしてもディアの意見が大きく通るだろう。


 実質的に、このカリーナの拠点に置いてディアが最高権力を持っているといっても過言ではない。五大老達はそう認識していた。


 とはいえ、そこに反発しても良いことはない。

 むしろカリーナと一緒にディアを愛でる方向でガッツリ可愛がりたい。

 実際可愛いし、悪いことはしない子だし、ディア自身も十分な譲歩をしてくれる。

 表に出せないような代物を作っても、表に出さなければ許してくれるだろう。


 というわけで、今のところ不満もないし、やっぱりなにより可愛いに尽きる。


 ぶっちゃけ実孫より可愛いディアに対し、何かしてあげたい老婆心がムラムラと湧いてくるのは仕方ないのだ。五大老、実際ドワーフ的にはお婆ちゃんだし。


「よーし、それじゃ五大老工房始動だよ! 最初の作品は、ディア君ちゃんのドレスだぁ! みんなぁ、かかれー!」

「「「「おー!」」」」



 かくして最高の職人達が最高の技術をつぎ込んだ最高の品が出来上がるわけだが、その性能は矢弾飛び交う戦場で優雅にピクニックできる程度には表に出せないほどの逸品だったので、早速お蔵入りになった。




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(とりあえず、特典情報一覧が出たので近況ノートに置いときますね!)

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