五大老とマシロ(五大老視点)
「ちょっと普段使いには性能が良すぎたかぁー。カリちゃんから買ったシルクスパイダー布、結構良質だったね」
「でも一回着てもらえたから満足かなって」
「ゴシックドレスのフリルひとつひとつに異なるエンチャントつけて重ねたのはやり過ぎだったかもしれない」
「一度着ちゃうと脱がせるのが難しいのはダメだったねぇ。改善改善」
「せめてヘッドドレスだけでも……ダメかな?」
五大老達が拠点のリビングでわいわい反省会をしていると、そこに肩に木箱を担いだ狼獣人が通りかかる。
この拠点にお風呂を使いに通うAランク冒険者、マシロだ。
「ん? 新顔か? ここにいるってことはカリーナの知り合いだよな、よろしく」
ニィッと笑顔を浮かべるマシロ。狼頭で、見ようによっては子供が泣きそうな笑顔ではある。が、五大老達は豊富な人生経験からそれが獣人の純粋な笑顔だと理解できたため、泣くことはなかった。
「お? フサフサ系な獣人さんだね。よろしくー」
「よろ。カリちゃんの知り合いさん?」
「もふい、良い毛皮……」
「ふかふかだねぇ。撫でたい」
「ワイルドな魅力? カリちゃんが好きそうな感じ」
五大老とマシロ、初めての出会いはこんな軽い挨拶で始まった。
そして、五大老は早速品定めのような視線をマシロに投げかける。
それは職業病と言ってもいい。
使用武器は何か。どういう装備が似合うか。合うエンチャントは何か。
その人となりを、ついつい
五大老ともなれば、5秒も眺めれば冒険者の大体の実力は分かる。
――分からなかった相手はカリーナくらいだ。
あれはドラゴンを従えてるのにただの素人にしか見えなかった。
「ふむ。中々の腕前だけど、もうちょっと欲しいかなー」
「素早さは良い感じ。もう少し上乗せしたいけど」
「このふわふわ感はもう少し磨けるはず」
「B……いや、ギリAランク? もう少し発展の余地があるな」
「ワイルド系が似合うのは間違いない」
その評価は、『まぁまぁ』といったところ。
最上級を知る五大老の目線は、やや辛口だった。
「んぁ? なんだよいきなり」
「あー、ゴメンゴメン。つい職業柄ね」
「あちき達、ドワーフだからさ。みんな職人なの」
「お詫びに今度何か作ってあげるよー、タダとはいかないけど」
「カリちゃんのよしみもあるし、格安にしてあげる」
「最低でも材料費はもらうけどねー」
ニコニコとマシロを見る5人。
「ふーん。まぁそんならいいか。アタシより年上っぽいし、この程度でグダグダ言うほど小せぇケツの穴でもねぇからな。ま、今ちょっと金貯めてて余裕ないから、また今度頼むわ」
と、手をヒラヒラさせるマシロ。
そう、マシロは今、カリーナの知り合いである五大老に装備を注文するため、お金をためている最中だ。
なので、初対面の、
……と、この反応をみて五大老第一位、バーミリオンことミーちゃんがひそひそ話を始める。
「……これウチらの事気付いてないっぽい?」
「ぽいぽい。気付いてたら、冒険者なら大喜びのハズだもんね」
「節穴……ってわけでもないか。わっちらが若返った情報、広まってないだろうし」
「どーする? ちゃんと自己紹介する?」
「折角だしちょっと遊びたいかも。今後私達に対する反応のサンプルにもなるし」
結果、「カリちゃんに紹介されるまで黙っとく」という形で対応方針は纏まった。
と、対応が決まった5人にマシロが声をかける。
「なあ、折角の出会いだ、飲むか? 丁度ここに置いておこうと思ってクローラー酒もってきたんだ。まとめ買いだとちょっと安くなるって買いこんだんだが、ちーっとばかし買いすぎた気がしてたんだ」
ドワーフ5人と飲むには少し少ないかもだが、とリビングのテーブルに酒の入った箱をカシャンと置くマシロ。
「評価上方修正。この子ってばいい子だ」
「うんうん、あちきならもっと才能を引き出してあげられるよ!」
「わっち、ブラシを作ってあげようかなー」
「これならあたし手を貸してもいいよ。超特価で」
「逆に可愛い系の服を着せてみたい気持ちが芽生えた私がいる」
ここがカリーナの拠点であり、間違いなく『お仲間』であること。
お金を貯めていると言っていたのに歓迎のためお酒を奢ってくれようとしてくれること。
辛口評価はあっさりと甘く転じた。
―――――――――――――――――――――
(ドワーフにとって、お酒を奢ってくれる人は基本良い人なのだ。
お酒を奢ってくれるので。)
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