マリア婆との反省会
そういや私の肉でポーションつくれるんだし、王様の胃ガンでもポーションって作れんのかなぁ。
いや作らんけど。
で、マリア婆との反省会だ。再びお茶会に呼ばれたので行く。
「……」
「ごめんて。勝手に治しちゃまずかった?」
「いや、それはいい。それはいいんだがね……いや良くないか? うーん」
はぁぁぁ、と盛大にため息をつくマリア婆。
そんなため息ついてると幸せが逃げちゃうぞ?
「まぁ、キング様はいたく感謝されていたよ」
「そっか。健康ってありがたいよね、健康な時には分からんけど」
「そうだね。だがね、王様の病気は回復魔法の効かない死病だったんだよ」
うん? そうなのか……ああ、ガンだったもんな。
ガン細胞に向かって回復を促したらむしろ悪化する可能性が高い。むしろ転移がないのに局所的に症状が進んでたのってそういうことなんだろう。
「ウチの国の王子とかは恨むかもしれないがね」
「誰かの不幸は誰かの幸福、ってことだねぇ」
「ああ。王様のような立場にあると尚更、ね。けどまぁ、おかげでキング様も冷静さを取り戻してくださったようだ」
曰く、王様は死病――回復魔法や欠損回復魔法の効かない病に侵されており、残り少ない命を世界を救うために使うべく今回の泥棒を計画したらしい。
まぁ治したけど。
ていうかパヴェルカント王国には他に差し出せる神器がないのかね。少なくとも王様が認知してる範囲ではなかったっぽいね。
あるとしてもダンジョンコアのように生活に密着しすぎで手が出せないとかか。
ともかく、今後は王様も神器の泥棒とかはしないだろう。
……
「ところでマリア婆。今回の件はディア君やクミンさんには内緒って事で」
「あー……こっちとしても他国に王様の暴走を伝える利はない。いいよ」
よかった、これで私が知らず知らずのうちにマッチポンプしていた件についてはディア君に知られずに済むだろう。
もし知られようものならまた1日くらい布団に顔をうずめてジタバタすることになる。
「けどあの子が自分で気付いたりしたら管轄外だよ」
「……ディア君賢いから気付いてるかもしれない」
そして察して黙っていてくれている可能性もある。
……いや絶対そうだ、だって怪盗ヘルメスの裏にいた黒幕が誰だったかとか聞いてこないし。
私が偽神器取り返すのうっかり忘れて帰ってきて部屋にこもった所から察したに違いない。ディア君賢いもの!!
「あああー、どんな顔してディア君に会えばいいのっ」
「いっそ正直に吐いた方が楽になれるんじゃないかね。自業自得だし」
「マリア婆の含蓄のあるありがたいお言葉が私にダイレクトアタックを決めましたー。ぐふぅ」
やめてくれ、正論パンチは私に効く。
「にしても、まさかカリちゃんが死病を治せるとは思わなかったね。ああいうのはあらかじめ言っておくれよ」
「ごめんて。王様の肩こり治すつもりで触ったら病気で、しかも割と簡単に治せそうだったもんだから、ちょちょいっとね?」
「簡単!? アンタそれ教会にバレたらどうなっちまうんだよ……」
「え、教会はお友達だけど?」
どの町にもいるシスターことシエスタとは同僚だぜ。
なんならこの間スイーツ一緒に食べたりもしたぜ。
「なら問題ないのかね……? いやでも、あの死病を治せるなんて知られたら大変なことになるのは間違いない。ああいうのはしっかり隠しときなよ? 平穏無事に過ごしたいんだろう?」
「う、うん。まぁそうだけども」
「というか平穏無事にとか言いながらテッシンの女王を現地妻とかどういう――」
「あー、ほらほら、マリア婆にもマッサージしてあげるねぇー。お体に触りますよ」
「あああああ……ちょ、こんなんで誤魔化そうって……すやぁ……」
よし寝た。いやーお疲れでしたねーお客さん。
肩こり腰痛スッキリポンと治しときましたんで、起きたら元気溌剌ですよぉー。
そんじゃお茶会のホスト寝ちゃったし帰るかぁ。
「そんじゃお風呂フレンズのオバちゃん、後は任せた!」
「まってカリちゃん、私にも寝ない程度にちょっと頼むよ。なんか凄そうだし」
「えー?」
「誰がグッスリ寝てるマリアベル様を運ぶと思ってんだい?」
「しょーがないなぁ。ちょっとだけね」
オバちゃんご苦労様ー、と肩をたんとんたんとん叩いてあげる。
「あああああ……おお! 肩が軽い! 10歳若返ったよこりゃ。ありがとカリちゃん! お礼に飴ちゃんをあげよう。持ってきな」
「わーい! そんじゃまたね」
私はオバちゃんから飴を受け取り、そそくさとお茶会を後にした。
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(以下お知らせ)
11/20、あとごじ1巻発売! 大事なことだから何度も言うよ!
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