私。傾国の美女じゃん。


 そして翌日。


 盗まれた偽『破城壁槌ヘパイストス』はさておき……

 ミーちゃんに私の事情を話して、『破城壁槌ヘパイストス』をどうにか譲り受けることはできないか、という交渉が始まった。


 急ぐ旅でもないし、なんなら拠点に繋がるドアを置くんだから長期間かけて気長に交渉しても何の問題もない。


 人払いしてもらったので、私達だけで応接室に集まり、ディア君にちょいちょい補足を入れてもらいつつ、ミーちゃんに説明していく。

 ミーちゃんは真剣にそれを聞いてくれた。可愛らしい顔がキリッとしててやっぱり可愛いかった。


 そして、一通り説明し終わった。


「……と、いうわけなんだよミーちゃん。……ダメかなぁ?」

「いいよぉー、返納しちゃお。どうせ使わないし」


 なんという事でしょう。難航すると思われた交渉が、一瞬で終わりましたとさ。


「軽っ! え、それでいいのミーちゃん!?」

「うん。事情も分かったし、カリちゃんの頼みだし。それにウチ達はドワーフだよ? 自分たちで作った物を置く方が、むしろドワーフの象徴らしくていいじゃん?」


 なんという事でしょう。難航すると思われた交渉が、一瞬で終わりましたとさ。(大事なことなので2回目)


「あの、上の人とか王様とかに相談しなくていいの?」

「あれ? 言ってなかったっけ? ウチここの王様なの。女王様!」

「マジかよミーちゃん。え、ボンデージ着る?」

「そっちの女王様じゃないよ! 着てもいいけどね?」


 そういやこの町治めてるとか言ってたね。んでこの町は首都だったわ。


「ミーちゃんって王族だったんだ?」

「あ、そういうんじゃないよ。テッシンの王様は一番物作りが上手い人がなる決まりなの。ウチらはみんな職人だからね!」


 そしてトップ5人が五大老と呼ばれている。マジかよ重鎮じゃん。

 国の大事は5人の合議で決まるが、私の頼みなら誰も断らない(断言)とのこと。


 ……やっべ、国堕としてたわ私。傾国の美女じゃん。

 他の国で言うとこの王位継承権所有者が全員私の妻ってコト?

 ちょっとぉー! 誰か言ってよぉー!!


 そりゃAランクのマシロさんがホイホイ頼めない高額発注になるわけだよねぇ……



 え、五大老全員女だけど、男は王様になれないのかって?

 過去には圧倒的腕前で王になった男もいたらしいが、曰く「男は子供作れないじゃん。その分不利なのよ」だそうだ。


「材料と工房なら工房の方が上でしょ」

「あ、種は材料扱い。なるほど」


 そして工房で生まれた作品の出来がいいと工房の評価も上がるように、子供の腕前も親の評価に一部還元されるのだとか。

 ……種は大体不確かなので、主に母親に。あとは里単位なら里長に。


「ん? じゃあミーちゃん子持ちってこと!? 私、パパになっちゃってた!」

「えへへ、孫もたくさんいるよぅ?……ウチたちのコト、嫌いになっちゃう?」

「ならないよっ! むしろ魅力が増えたよ!」


 ぎゅーっと涙目になりかけてたミーちゃんを抱きしめる私。

 小さな体が私の腕にすっぽり収まる。……やっべ、このロリ経産婦かよ興奮してきた。


「えへへ、めっちゃ本心でそう言ってくれてるの理解ワカるからカリちゃん好き」

「私もミーちゃん達の事大好きだよっ!」


 私、ドワーフと相性めっちゃいいな。ただし女の子限定。


「……こほんっ」

「おっと話が脱線したね。それで『破城壁槌ヘパイストス』なんだけど」


 ディア君の咳払いで話を本筋に戻る。


「元々『破壁槌パーペキハンマー』とか言ってたし、模造品はそっちが正式名称の神器レプリカってことでいいんじゃない? 性能の再現はしきれないけど」

「いいの? それで」

「いいよいいよ。というわけで、神器返納式典をやろっか、カリちゃん!」


 ミーちゃんは、にぱーっと太陽のような笑顔を浮かべた。



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(以下お知らせ)

公式Xアカウントで、電子版の特典SSのキャラを誰にするかの投票中ですわよ。(10/31まで)

※その後の締め切りはマッハなのである。圧倒的大差がついていればあらかじめ書けるかもですので、いっぱい投票してね……してね!!

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