ディア君の咳払いマジ有能



「というわけで、神器返納式をやろっか、カリちゃん!」


 ミーちゃんは、にぱーっと太陽のような笑顔を浮かべた。


「え、なんで?」

「なんでもなにも。神器の返納だよ? 何もなしに返納とはいかないでしょ」


 それに、返納する前にちゃんと本物だって証明しておかないと「盗まれたから返納したといって誤魔化したんだ!」とか難癖付けられる可能性がある。

 その点をしっかり見せつけるためにも大々的に本物であると示す必要があるそうだ。


「神様に、神様の使いであるカリちゃんにしーっかり協力してもらわなきゃね! 神々しく回収してもらえる?」

「神々しくかぁ……一緒に演出考えてよ。大抵のことはできると思うから」

「キャー! さすがカリちゃんっ、好きっ! ウチのこと鍛造してっ!」

「こほんっ」

「それにしても、まさかカリちゃん神様の使いだったなんて。只者じゃないとは思ってたけれども」


 ディア君の咳払いマジ有能。


「使いっていってもパシリみたいなもんだから、そう大したもんじゃないけどね。……普段は靴下回収して神様に捧げてるし」

「あ、神様に靴下捧げるって言ってたのマジだったの? じゃあ今履いてるのもいる?」

「……いやー、それが私のあげたポーションあるじゃん? あれ飲んじゃったから神様の好みからハズレちゃうみたい。私も含めて、神様本人のニオイがしないほうが良いんだって」

「え、じゃあ……今のウチ、神様のニオイしてるの? ウチも神様の眷属に入ってるってこと? すご」


 そういう解釈が出来なくもないね。


「あ、そだ。他の4人にもカリちゃんの拠点につながるドアを作るの?」

「そうだね。他人は入れないようにするけど、みんなは特別だからね!」

「国防会議とか気軽にできるようになるね。ありがたいや」


 マシロさんと同じく、5人の部屋をそれぞれ作ってそこに繋げる予定。

 拠点のドワーフ率が一気に高まるなぁ。あ、そうだ。


「なんなら工房作ろうか? 一応今も物作り部屋はあるけど、ドワーフの本職からみたらただの小部屋だろうし……詳しいトコ分からないから、設計図くれたらその通りに作るよ」

「!!」


 くわっとおめめを見開くミーちゃん。


「……あの、その、その工房って何作ってもいいの? 敷地のサイズは? 換気、通気性は? 平均気温は? 湿度は? 壁の断熱性は? 水は近くにある? 倉庫は? 燃料置き場は?」


 怒涛の質問ラッシュ。さすが一流の職人。


「お、おう。好きに決めていいよ? 今言ったのなら好きに設定できるし。後から変えるのもできるよ」

「好きに設定できる!?……じゅるっ」


 あ、ミーちゃんが獲物を前にした肉食獣の目に。


「……これは他の4人とも相談しなきゃね。設計を独占したらバチが当たるっ!」

「ああ、個別の工房へやの他にも、みんなでワイワイ作れる合同工房つくってもいいね」


 5人のロリドワーフがキャッキャうふふと作業するとことか見たくない?

 私は超見たい。


「……ちょっとまって。カリちゃんって悪魔だったりする? 大丈夫? 魂取られない? ねぇアイシアちゃん。ウチも奴隷になったほうが良いのかな?」

「バーミリオン様。あるじ様の奴隷は私が務めます、邪魔しないでください」

「あ、うん」


 キリッと言い切るアイシア。強い。


「早速工房の設計しなきゃ! カリちゃん、工房を作るためにできること全部教えて!」

「全部? うーん、私も全部は説明できるかどうか」


 と、ここでディア君が私とミーちゃんの間に割り込む。


「バーミリオン様。それらは全部、返納式の準備が終わってからでお願いします」

「ええ!? そんな! 夢の工房をお預けなんてエルフは酷いっ!」

「そうだよディア君。別に作るのに時間がかかるわけでもないし……」


「いえ。そんな理想の工房ができたら絶対籠るでしょう? 返納式が5年後とかになってもおかしくないですよ」

「……たしかに!!」

「エルフっ子に言い返せない……! くっ、こうなったら他の子も巻き込んでやるぅ!」


 というわけで、工房を作るのは返納式の成功報酬ということになり、返納式の準備は五大老の総力を挙げて全速力で進められ、一週間後に開催される運びとなった。


 ……ディア君ったら人を使うのが上手いねぇ!!

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