おお勇者殿。



「あるじ様に簡潔に分かりやすく言いますと、あの直後にやんややんやと突発的に酒宴が開始されまして。……まぁドワーフ的にはいつものことなんですが」


 誰かがお酒を飲み始めて、そこに人が集まれば酒宴は始まるらしい。

 ましてやそこは調理場。つまみの料理もあったし、歓迎する客人(私)もそこにいて、しかも出来上がってるとくればもうあとは何がなくとも酒宴にならない筈がなく。


「それで、あるじ様はおばあちゃんを初めとして年かさのドワーフ女性を集めて可愛い食べちゃいたい今履いてる靴下頂戴と口説きに口説いて、このありさまです」


 わーお。酒の入った私ってば相変わらずアクティブすぎる。

 ハルミカヅチお姉様も口説いたりしてたしよ。



「ちなみにおばあちゃん達を集めてたこともあり、男共は気まずくて誰も近寄ってきませんでした。そこは楽でしたね」


 まぁうん。私からしたらロリハーレムだが、ドワーフ視点では老婆を侍らせているところだ。あんまり近寄りたくなかったのだろうね。ましてや肉親だ。


 お前、ばーちゃんの前で「お誘い」できんのか? っていうね。

 流石のドワーフでも無理だった模様。



「それにしても、私そんなおばあちゃんばっかり集めてたの?」

「男を避けつつ、あぶれてる女性を集めてたようなので。結果そうなったんじゃないかなぁって……」


 あー、うん。おばあちゃんならお見合いパーティー(意味深)も兼ねた宴であぶれるのは当然だよね。男は若くてかわいい女の子の方に行くだろうし。



 と、アイシアのおばあちゃんが部屋をのぞき込んでいた。私を見つけてぱぁっと嬉しそうな顔になる。なにあれ、かわよ。


「あっ……お、起きたんだね。カリちゃん。お、おはよっ」

「あ。おばあ様おはようございます」

「……~~~ッ、うう、年甲斐もなく恥ずかしいねぇっ! ほら、これあげるっ!」


 何かの照れ隠しにパシパシと軽く肩を叩かれる。

 え、なにその乙女な反応。かわよ。指輪? わー、凄い綺麗な天使のレリーフ。素敵ぃー。


 と、さらに他のドワーフっ娘がそれを聞いて、私が起きたのを見て寄ってきた。多分私が昨日侍らせていた子たちだ。

 あ、お水っすか。どもども……うん、下手したら酒かもと思ったけどちゃんとお水だった。よかった。


「カリちゃん、これおあがんなさい。前の旦那が言ってたが人族は二日酔いってのするんだろ? 可愛いねぇ。あ、実はこのコップは私の手作りなのよぉ、良かったら貰って」

「あー! ずるい、あちきもカリちゃんになんか作る! ちょっと工房借りてくるね! まってて、すぐなんか作ってくるから! あ、ナイフ、ナイフでいい!?」

「カリ、また遊ぼうね? ウチの里にも来てね。ああ、わっちならいつでもオッケーだから。それとこれ昨日もらったドラゴン素材で作ったポーチだよ、わっちだと思って大切にしてね」

「くぅ、カリちゃんに(ピー)ついてたら、子供産んであげてたんだけど。カリちゃんとならあと10人くらい産める気がする。ウチからは髪飾りあげちゃう。自信作ぅ」


 やっべー、なんかすっげーモテモテなんじゃが? ぐへへ。

 まぁこの子たちみんなドワーフ的にはおばちゃんとかお年寄りらしいけども。

 さらに言えば、うち4人はドラゴン素材目当てに酒宴に駆け付けた他里の子らしいけど。


 あ、ナイフ作ってくれたの? 早っ。しかも私の手にぴったり。

 みんなありがとう。大切にするね! 好き!


『ちなみに神様的にはおばあちゃんでも恥じらい靴下なら大歓迎ですよ? 納品お待ちしてますね! ぐへへ!』


 神様、突然語りかけないでください、ちょっとびっくりしました。

 あとぐへへ言うな美少女が台無しやぞ。




 で、里長にも声をかけられる。


「おお勇者殿。おかげでばーさま達がものすごく機嫌が良いぞ。さすが勇者殿」

「まって? なんで客人から勇者になったん? 聖剣を抜いた覚えはないんだけど」

「そりゃぁ……ばーさま達を全員口説いて侍らすなんて、儂らから見たら勇者以外の何者でもねぇぞ? 五大老を全員現地妻にするとか正気かってならぁ」


 そういう意味の勇者か。そうか。

 ……って、現地妻?


「え、ちょっとまって。私、結婚とかしちゃった系?」

「ばーさま達からドラゴンの素材をおねだりされて気前よくホイホイ渡した挙句、それ使った手作りの自信作をプレゼントされてたじゃねーの。その指輪、コップ、ポーチ、髪飾り、ナイフ……普通に買ったらどれも人間の国で屋敷が建つ代物だろう。うん、見れば見るほどヤベェわ。なにこの魔法付与エンチャント。五大老はダテじゃねぇな……」

「ど、どんなのがついてんの!?」


 指輪:身代わりの指輪。一度だけ致命傷を肩代わりする。

 コップ:毒消しの盃。毒の沼すら清水に変える。酒も水にしちゃうのが欠点。

 ポーチ:大容量ポーチ。見た目とは裏腹に小屋くらいの量が入る。

 髪飾り:姿隠しの髪飾り。一時的に敵から見つかりにくくする。

 ナイフ:自動解体ナイフ。自ら飛び、自動で剥ぎ取りをしてくれる。


 ……と、どれも国宝級らしい。


 うわぁ。女の子からのプレゼントだし売る気は無かったけど、とんでもなかったわ。

 そんで、自信作をプレゼントするのがドワーフ的プロポーズでしたね。忘れてました!



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(以下お知らせ。)


書籍版、『あとはご自由にどうぞ!~チュートリアルで神様がラスボス倒しちゃったので、私は好き放題生きていく~』


の1巻範囲は――


「最初の町、ソラシドーレ」までです!!


つまりディア君は……2巻以降や!

1巻売れなきゃディア君が出られないので、買ってね……買ってね!!



はい、というわけでソラシドーレ編をガッッッツリ書き増ししてます。

イラスト担当、Ixy先生の表紙出るのが楽しみですねー。

そして他にも色々やってくれる模様です……楽しみ!!

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