バレた。あっさりバレた。



「まぁ駆けつけ三杯?」

「お客様にお酒を出さないのはドワーフの名折れだものね、ささどうぞ」


 と、ドワーフのお姉さん達が当たり前のように台所の戸棚からお酒が出してきた。

 ガラス瓶に入った、琥珀色のお酒だ。

 小さめのグラスに注がれたそれは、揮発したアルコールからリンゴのような甘い香りがする。


「あ、ちょっと! あるじ様は人間だからお酒はそんな……」

「あー、いただくよ。大丈夫、こう見えて飲めないわけじゃないからね!」


 アイシアが止めたが、私だってバカじゃない。

 あからさまに強そうなアルコールを感じるお酒。一口でも飲んだら、私が泥酔待ったなし!

 ディア君が男の娘で私のモノだと周知する前に酔いつぶれて記憶も失うことだろう。


 だからここはゴメスとの飲み比べ勝負で使った飲んだフリ作戦でいく!


 私は受け取ったお酒を口に運び――その瞬間に収納空間に格納!

 かわりに差し替えた水を飲みこむ!


 ッぷはー!


「いやー、美味しいですね! ご馳走様です!」


 空になったグラスを返す――と、アイシアのおばあちゃん他がじぃっとジト目で私を見る。


「……呼気に酒精が混じってない。ちゃんと飲んでないねぇ? アタシらの目はごまかせないよ」

「えー、お酒消しちゃったの!? どんな手品つかったのかな。ギミックが気になる」

「信じらんない、酒への冒涜だよ!……捨ててないよね?」


 バレた。あっさりバレた。


「遠慮しなくていいよ。とっておきの美味しい酒だからね」

「さ、飲んで飲んで。仕組みを見破ってやる!」

「これはオトン秘蔵の火酒だよ。次ぃ消したら怒るよ?」


 す、すごく注目を集めている。観察するような目、酒を粗末にするのは許さない目。

 家族なだけあって、アイシアやサティたんそっくりのそんな目に見つめられたら、私はもう、ごまかさずに飲むしかないじゃない……!


 ってか火酒ってアレじゃん、ドワーフでもお酒判定出さざるを得ないヤツじゃん。


 ……アイシアを見ると「だから止めたのに」と言わんばかりの目をしていた。

 わかったよ。覚悟キメるよ。


「い、いただきますっ!」


 ぐっとグラスを傾けて口に含む。一瞬ひやりとした感触と、芳醇な香りが口に広がる。

 あ、美味しい。と思った次の瞬間、刺すような熱さが口内粘膜に襲い掛かった。


 うごぉおお!? キッツ! アルコールきっつぅうう!?

 喉が……喉が焼けるッ!! あああ、おなか、胃袋がカッカと熱い感じぃ!


「っぷはぁ……」

「おっ! 今度はちゃんと飲んだね。やるじゃないか客人!」

「それでこそアイシアのご主人様に相応しいわけだ。歓迎しよう」

「火酒ぇ……私も飲みたい。おばあ。一本頂戴……ダメ? ケチ」


 こ、今度は、ちゃんと飲んだ私を、ドワーフの女たちは笑顔で歓迎してくれた。

 ……あ、ダメ。頭ふわっふわすりゅぅ……


「あ、あるじ様ー!」


 アイシアの声を聞きながら、私は体から力が抜けてきたのでくたりと座り込む。

 そして――




「ハッ……! あー、頭が痛てぇ……」


 目が覚めた私。スッとんだ記憶。うーん、久しぶりだねこの感覚。


 で、今回はいったいどうなったのかなーっと……わぁお。この部屋ドワーフがたっくさん寝てるね。男女両方ごちゃっと雑魚寝である。私の周りはロリしかいないけども。

 ……うん、服着てないやつもちらほらいるね、これも男女共に。


「あ、おはようございますあるじ様」

「……おはようアイシア。ねぇ、あれからどうなったの? お酒口にしてから記憶がないんだけど」

「はい! ディア様は御無事です!! 子供部屋で隔離して休んでいただきました!!」


 うん、それはよかった。で、私はどうしたの???

 ちょっと聞くの怖いんだけど。



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