ドワーフの国、テッシン
心優しい天使かな?
ドワーフの国の国境は、遠目から見えるほどにがっちりとした石の砦だった。
万里の長城、というやつに近いだろうか? ただし壁が1枚の石なんだそうな。
「どうです、この大きく整えられた一枚岩はドワーフの国でも有数の名所なんですよ」
「おー、コンクリートでもないのにこんなに大きいのは確かにすごいね」
「元は初代故国王が魔法で作り出したといわれています」
そうか、魔法があるんだよなこの世界だと。じゃあそれほど大変でもないのかな?
逸話として残される程度には難しいんだろうけど。
というわけで私達は魔道具車で国境にやってきた。
国境の入り口には馬車が並んでいる。……これ順番待ち? すごく長いなぁ。
「なんかジロジロ見られてるねぇディア君……」
「馬のない馬車ですからね。珍しいのは間違いないでしょう」
作成に一枚かんでいるディア君は得意げだ。
と、アイシアが窓から身を乗り出して前の様子を見る。
「あるじ様。この行列、かなり時間がかかるかもしれません」
「ん、どうして?」
「前の方で商人がテント張ってます。審査が停止してるのかも」
「うげ、マジか」
そうなると単に待っているだけではドワーフの国に入れないということじゃないか。
私たちの場合は車の中にいると言い張りつつ収納空間の拠点でゴロゴロできるからいくらでも待てるんだけど、さすがに当てのない待機はしたくない。
「なんだってこんなことになってるんだろ?」
「わかりません。聞いてきましょうか?」
「情報収集といえば吟遊詩人だもんね。……頼める?」
「はい! お任せください!」
そう言って、アイシアは鉄琴を手に車から出て、行列の前のほうへ歩いて行った。
そして早速情報交換をしている模様。
「鬼に金棒、吟遊詩人に楽器……コミュ力高いよなぁアイシア」
「コミュニケーションが取れないと吟遊詩人はできないでしょう。僕も車のメンテナンスをしておきましょうか」
「空間魔法で動かしてて稼働してないし大丈夫だと思うけど?」
「操作機構を考えたので、それを組み込む下準備です!」
ゴーレムの機構を見て勉強しましたからね、と早速エンジン部分をいじりだすディア君。
ディア君、こういう機械とかの魔道具作るのホント好きよね。私も好き。
しかし本当に動かないな……手持無沙汰になったので私は私でお薬系の錬金術教本を読んで暇をつぶす。
のんびりと時間が過ぎ、アイシアが戻ってくる。
「おかえりー。何か分かった?」
「なんか国内で危険な魔物が出現したらしいです。ここ並んでるのは安全が確保されてからの入国審査の順番待ちだとかで。……一応、自己責任で通れるみたいですが。どうします?」
「へぇ、なんて魔物?」
「サンダードラゴンだそうです」
ほう。ドラゴン……ドラゴン!
そりゃロマンじゃないか! しかもサンダー、電気かぁ!
「アイシアさん、それってこのまま放置していたら安全が確保されるまでどのくらいかかりそうかは分かりますか?」
「一応、国軍が出るらしいので……うーん、討伐まで1週間くらいでしょうか?」
それくらいなら追加でゴロゴロしててもいいかもしれない。目立ちたくないならそうすべきだ。
「……お姉さんなら狩れますか?」
「んお? 余裕だと思うけどなんで?」
「いくらドワーフの軍でも、ドラゴン相手だと死人も出るかと思います。できるなら、お姉さんが対処した方が犠牲が出なくていいな、って……」
「なるほどね」
やん、ディア君ってば可愛い。見知らぬドワーフの心配をするなんて……!
「心優しい天使かな?」
「ち、ちがいますよ。助けられる人命があったら、なるべく助けたいと思うでしょう?」
「その手段も余裕もあるとなれば尚更ってことだね」
「ディア様は本当にお優しいですね。眩しすぎて直視できません」
両手で目を覆うアイシア。わかる。
いやうん、私も無駄に人が死んでいいとか思ってたりしないよ。
「いいよ、やったげよう。ディア君のために」
「! ありがとうございます、お姉さん!」
「私からもお礼申し上げますあるじ様。ドワーフの同胞を助けてあげてください」
嬉しそうなディア君を見てほっこりする私とアイシア。
と、ふと思った。
「ねぇ、ディア君のお願い聞いてあげるんだから、ディア君から何かご褒美欲しいな?」
「ご褒美、ですか? はい、ボクにできることならなんでもしますよ」
ん? 今なんでもって言ったね?
ぐへへ、ちょっとアレなお願いでも考えとこうかしら。耳しゃぶらせてもらうとか。
「……あ。ドラゴンって人化したりするのかな?」
「
ファンタジーなのにおとぎ話とかあるんだ。とか思ったのはここだけの話。
――――――――――――――――
(ホントすまんがまだ書籍化作業(大量書下ろし)が終わってねぇんだ…!
いろいろあって……まじで……orz 編集さんにもごーめーん!!)
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