人の身で神に勝てるハズもなし



「さぁこのマッサージスキルで女の子達をあひんあひん言わせて羞恥心を煽り美味しい靴下を稼ぐのです! のです……のです……!」


 神様のセルフエコーと共に、私は現実へと帰還した。

 結局神様自分の欲望に忠実なヤツじゃないですかぁ!!


 うう、折角なら錬金術とかもっと有用なスキルあったじゃんよぅ、なんでマッサージにしちゃったの私。


 ……いや別にさ、残りのSPで余裕で取得できるよ?

 そう、余裕で取得できちゃうんだよね。やっぱこっちが良かった、と後悔しつつもそれは入手可能で、残高に余裕もあって。


 というかそもそも他に使い道もないことを再認識していて。

 もうこれ錬金術とか剣術とかのスキルと交換でいいんじゃないかな、という気分……



 つまりは神様の巧みな誘導である。ちくせう!

 人の身で神に勝てるハズもなし、ということか……!



「はー、でもまぁ実際きっと本当にレアで有用なスキルなんだろうなぁ」


 帰ったらディア君達のことマッサージしてあげよう、そうしよう。


  * * *



「ただいまぁ」

「おっ! カリーナおかえり!」

「おかりなさいカリーナお姉さん。お疲れ様です」

「ただいまー。あれ、ディア君ゴーレムのメンテしてるの? 後でいいって言ったのに」

「手持無沙汰だったのでつい」


 拠点に戻ると、マシロさんがリビングでお酒を飲み、ディア君はお御輿で使ったゴーレムのメンテナンスをしてくれていた。……あ、今日は男の子の格好してるよ? 中性的なメカニック少女に見えるけどね。可愛い。


「マシロさんはどっから出したのそのお酒」

「ウチから持ち込んだ。風呂上がりの酒は最高だな!」


 依頼が終わったので早速風呂上がりの一杯を嗜みたかったらしい。

 と、そこにアイシアがツマミを置いていく。クロウラーの干し肉を水で戻してぷるっぷるになったやつだった。これもマシロさんの持ち込みか。


「おかえりなさいませあるじ様。お風呂にしますか? ご飯にしますか?」

「んー、私もなんかお腹空いてきたしご飯かなぁ。ちょっと早いけど晩御飯だ」


 あとオマケで『それともワ・タ・シ?』と聞いてほしかった。

 まぁディア君の手前、その選択肢は選べないけども!


「ディア様もご飯にしますか?」

「そうですね、キリもいいし……っと。」


 バタン、とゴーレムのハッチを閉じてこちらに来るディア君。

 『洗浄』で汚れを落としてソファーに座った。


「つーかディアよぅ、お前ゴーレム技師なのか? 子供なのにすげーな」

「動かすだけならそれほど難しくはないですよ、マニュアルも魔石もあったので」

「ウチのディア君は天才なんだよ。ふふん」

「カリーナが胸を張るとこじゃねぇだろ。おら、ここ座れ。カリーナも飲めよ、アタシの奢りだ――ディアは飲むなよ、子供ガキにゃまだ早ぇからな」

「だから僕の方が年上なんですけど……」

「エルフん中じゃ子供ガキなんだろーが」


 マシロさんに招かれて隣に座る。

 ちなみにアイシアはドワーフ基準でちゃんと成人判定なので飲んでもいいらしい。

 マシロさんの理屈では。


「おまたせしました。パエリアです」

「おっ! まってました!」

「へぇ、珍しいモン食うなぁ! アタシにも少しくれよ。酒いでやるからさ」

「いいよー、ヴェーラルドでは別段珍しくない食べ物なんだよね」

「お姉さん、カルカッサではだいぶ珍しいですからね?」


 アイシアの作ったパエリアを少し分けると、マシロさんがジョッキにお酒を注いでくれた。いやぁ至福至福。

 こんなの神様に感謝しかねぇなぁ!


『また靴下納品を頑張って恩返ししてくれればいいですよ』


 と、神様の声。


 ……そういやコッショリ君は部屋に置きっぱなしだった。

 まぁ見られて困ることするわけでもないしいいか。


―――――――――――――――――

(次回、ドワーフの国へ。

 書籍化作業が間に合ってないので「あっ」てなりそうな予感……!)

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