ブラボー、おお、ブラボー


 いよいよ最後の1足、マシロさんの靴下だ。

 果たして査定額や如何に――


「――115SPです」

「限界を、越えた!?」


 勿体ぶることなく出てきた査定額は、最高値である100SPを越えていた。


「羞恥心こそ薄めですが、毛が。……毛がすごくいい」

「おお、毛のところですか!」


 マシロさんに抜いてもらった足毛の部分である!!


「天然靴下っ毛……いいね! あ、内訳は初靴下の方は25SP、毛が90SPです」

「あ。そういう査定の合計値」


 2個分なら限界突破もまぁ納得である。

 にしても、そんなに良かったのか、毛。


「そりゃカリーナちゃんには分からないかもしれませんが、毛ですからね。しかも足裏の肉球の近いとこをぷちって抜いてくれたやつ。下手な靴下より長く足裏にある存在ですよ? 一ヶ月やそこら履き続けた靴下みたいなもんなのです」

「ほほう」


 ……足の毛が靴下扱いになるなら、また獣人に縁があったら狙ってみますか。


「量こそ少ないですが、味は濃厚。もぐもぐ……どうしてそんな要求されているのかさっぱり分からない困惑もまた良し。ねっとりしたアボカドみたいな感じ」

「わー、マヨネーズ付けたくなりますね」

「それこそが羞恥心という調味料なんですよ、ええ」


 神様は満足げに残りをしまい込んだ。



 で、納品を終えてSPは……きっちり1500SPになりました。

 このキリの良さ、さては神様計算済みだな?


「どちらかというとプラス方向査定ですよ? 赤ちゃん御輿とか」

「あざーっす!」


 なら文句はないです! ハイ!


「ていうかカリーナちゃん、貯め込んでないでもっとSP使ってくださいよ。納品してくれるのでうるさくは言いませんけど」

「すみません残高が少ないと財布の紐がキツくなるタチなんですよ」


 流石にこれだけあれば500SPくらいは使って良いかなって気分になるけど。


「むむむ。神様としてはもっとご褒美に溺れて依存して納品せずにはいられない状態になって欲しい所なんですが。ほらほら美味しい物食べましょう? そちらの世界ではチョコレートなんてないでしょう?」

「神様?」

「本音ですよ? 実際シエスタとかそういう感じでしょう。いやつです」


 まぁ、神様だもんな。仕方ないな。


「ではここで500SPくらい使っちゃいましょう、そうしましょう」

「えっ」

「今日は使うまで帰しませんよ?」


 なんてこった。いつも『時間だからじゃあね』って追い返されるようにされるのに。

 ……よく考えたら神様ってば時空神じゃん、時間が差し迫ったとしても神の力で何とでもなるヤツじゃん。『遅刻? 時を巻き戻せば問題ないよね』とか言いそう。


「え。ガチで帰してくれない感じですか?」

「時間をかけてゆっくり考えたいですか? いいですよ、10年でも100年でも引き延ばしてあげますよ? 私時空神ですし」


 時間感覚の桁がちげぇ……! これが神様か……


 神様はカタログを取り出して手をかざす。

 パラパラと紙がめくれてページが開いた。あら美味しそうなプリン・ア・ラ・モード。


「おススメはここらへんの食べたら消えるスイーツ関係ですね」

「沼にハマらせる気満々じゃないですか。……ランニングコストとかのコスパを考えるとスキルとかの方が良いんですけど?」

「シエスタみたく定期的に欲しくなるようなアイテムだと楽なんですけどね」


 私にくれたポイントなのに、とっても自分本位である。

 まぁ変なこと言って没収されるよりはいいんだけどね。


「じゃあほら、このMP最大値1割アップのお薬なんでどうです? 100SPです」

「1割は確かにデカいですけど、現状別にそこまで魔力切れに困ったことないですね」

「くそっ! 優秀に作り過ぎた!!……でもこのくらい無いとあのゴミをいたぶるのに支障が出たかもしれませんでしたからね、仕方ない」


 パラパラとカタログをめくる神様。


「お。この辺りの使用済み靴下コレクションの複製なんてどうですか、各200SP」

「神様一押しなのは分かりますが、知らない人の靴下とか別にいらないんで……!」


 生産者の顔写真付きで並んでるし、いかがわしさしかない。

 神様は「むむむ、注文が多いなぁ」と他のページを開く。

 というかそんなページあったのかよ……と、ここで私は気付いた。


 ん? これもしかして私のカタログと違くない? と。


 だって、私一通りはパラパラとだけど確認したんだよ。

 でも靴下コレクションのカタログなんて見た記憶がない。見てたら絶対覚えてるよ流石に。


 となれば、私のカタログにない良い感じのスキルとかあれば欲しいかも……


「あ。技術系のスキルとかどうです? 身体を実際に動かすならこの辺りのスキルはあった方が良いですよ」

「確かに……それは選択肢としてアリです」

「お、このマッサージスキルとかLv5までいくとかなり応用効いていいですよ。レアですし……ってあれ? これレアだからカリーナちゃんのカタログに載せてなかったような――」

「じゃあそれで!!――ハッ」


 隙を見せた――と思った瞬間、神様は逆ににまりと笑っていた。

 マッサージLv5。その価格はなんと500SP……予定通りのお値段だった。


 ハメられた。


「神様、まさか」

「すばらしい。見事に食いついてくれましたね。ブラボー、おお、ブラボー」

「あの、キャンセルとかは」

「あ、クーリングオフとか払い戻しサービスはやってないんで」


 ぱちぱちぱち、と神様が拍手すると同時に、私に新たなスキルが宿った。


―――――――――――――――――

(……あれ? 5月が終わったのに書籍化作業が終わってないよ?

 あと1,2話したら流石に更新より書籍化作業優先させるわね……!?)

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