少しやり過ぎたか?


 ビーベイ達を赤ちゃん御輿で辱めた後、約束通り冒険者ギルドに引き渡した。

 もちろんコッソリと履かせっぱなしだった靴下は回収してある。


「犯人共が『ばぶぅ』としか言わなくなってしまったんだが」

「おや、もう呪いの魔道具は解除したのだが……少しやり過ぎたか?」


 ギルドマスターのガルオーンにそう文句を言われた。


 呪いといっても空間魔法を駆使して喉や口の動きを捻じ曲げ、強制的に「バブゥ」とか「オギャア」とかに強制変換してただけで、本当に呪いというわけでもない。

 やれるからやってみたけど、手動なのでめっちゃ面倒臭かった。


 今回、靴下以外のおしゃぶりとかオムツ、御輿とかは手持ちの素材を色々コピーして作った。使い切りの予定だったので空間魔法大盤振る舞いの特別だ。

 使用済みのアレコレはばっちいので消滅済み。


 ゴーレムはヴェーラルドでゴメスから貰ったやつだ。ディア君が頑張って動くように調整してくれた。魔石はダンジョンで沢山狩ったものがあり困らなかったぜ。


「というか、今更奴らになにか聞きたい情報とかあるのかね?」

「……よくよく考えてみると確かに不要なんだが、証言はとっておきたかったな」

「であれば、我が取っておいたということでよかろう。奴らはそう言っておった、と我が保証すれば問題なかろ?」


 どうせ証言が真実かどうかは別途検証が必要なんだし。


「むむむ。そう言われてしまえばそうなんだが」

「つーか、早く報酬くれ。アタシら疲れてんだ、さっさと帰りてぇ」

「白銀もご苦労だったな。うむ、報酬を渡そう」


 と、見た目のわりにずっしりとした袋を渡される。中を見ると金貨20枚が入っていた。

 ……日本円にして2千万円相当!(カリーナちゃん調べ)


「……うむ。確かに受け取った」


 予想外の大金にびっくりしたが、今の私はヒーラーなので何食わぬ顔して受け取っておく。ローブで顔が隠れててよかった。


「おいギルマス。気が利かねぇな、せめて中銀貨くらいにバラせよ使いにくいだろうが」

「どうせ預けるんだろう? 両替するなら受け付けるが」

「まーな。ヒーラーはどうする?」

「あー、では我も半分預けよう。残り半分はむしろ大金貨にしてくれ」

「む、そっちか。分かった、すぐ渡そう」


 折角だし、まだ見たことない大金貨で貰うことにした。

 だって見てみたいじゃん? ね?



 というわけで二人揃って袋は返し、私は大金貨1枚を受け取った。

 おー、通常金貨よりふた回り位でかい。これが大金貨……!


「んし、そんじゃ行こうぜヒーラー。またなギルマス」

「後は任せたぞ。ガルオーン殿」

「ああ。今回は本当に助かった。また何かあれば頼む」


 マシロさんに引っ張られるようにして私は冒険者ギルドを後にした。

 後のことは全部冒険者ギルドに丸投げだ。がんば。




 マシロさんの家に連れ込まれた私は、変装を解いてカリーナちゃんに戻った。


「いやぁ、結構な収入になったな。暫く遊んで暮らせるぜ」

「ねぇマシロさん、報酬こんなに貰ってもよかったの? 金貨20枚だよ、2人で40枚も」

「あったり前だろ、この町の危機だったんだぞ。もしアタシらが居なくて『輝く剣』の連中がダンジョンを破壊してたらとんでもねぇ被害が出てたんだぜ?」


 言われてみれば確かに。

 そもそも私が爆弾を見つけていなかったら、普通にダンジョンの爆破に成功していた可能性が高い。それを考えたらむしろ安いくらいの報酬なのかもしれない。


「それよかほら、扉だ扉。ここら辺に作ってくれ……いやいっそ今回の報酬で良いとこに引っ越すか?」

「引っ越すならその時は扉作り直せばいいだけだよ」

「それもそうか。んじゃここに頼むわ」

「うん。ほいほいっと」


 言われるままに扉を作る私。扉も買わないとなー、そろそろ海賊の拠点にあった鍵付きの扉は品切れになりそうだ。……ドワーフ君にでも頼んだら作ってくれるかな?


「おーし! 風呂入ったらアイシアの飯で打ち上げすっぞ! 酒も飲むかんな!」

「あ。私はちょっと先に行きたいところがあるんだけど」

「ん? わかった。じゃあ先風呂らせてもらうぜ」


 マシロさんは収納空間の拠点へと突撃していった。

 ホントお風呂大好きすぎるなぁマシロさん。


「それじゃあ私も仕事を片付けてこようかな……いざ納品だ!」


 私は教会へと向かう。

 正直、ビーベイ達の靴下をさっさと納品したい気持ちが強い。

 ……マシロさんの靴下はコピーとって保存してあるけどね。へへへ。


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