頭おかしいよこの女。(ビーベイ視点)


 ダンジョンの中、僕たちは卑怯な手段により捕まってしまった。

 何が起きたか分からないほどに卑怯な手段だ。


 しかし、とはいっても皆が一緒だ、きっと何とかなる。


 それにしてもやたら綺麗な牢屋だな……いつの間にダンジョンの中にこんな牢屋を作ったんだ。


「フォッフォッフォ……気分はどうかね」


 白銀と一緒にいたローブの男がやってきて、牢屋内に縛られて転がされた僕たちを見下してくる。怪しい、怪しすぎる男だ。


「……最悪、だね。どうなっているんだいこれは」

「何、君はダンジョンを破壊しようとするテロリスト。それを生け捕りにした。単純な話だろう?」

「僕は勇者になる男だぞ」

「つまりテロリストで間違いないだろ?」


 フンッ、と鼻で笑われる。


「さて、お前達の処遇だが……そうだな。適当に拷問してやろう」

「は? ご、拷問?」


 何を言っているんだ。僕は勇者になる男だというのに!?


「そうだな、これからお前らの世話をする拷問係を紹介しよう。しばしまて」


 顔の見えない男は、そう言って一旦牢の前を立ち去り、一人の女を連れて戻ってきた。

 黒髪で見目麗しい女性だ。


「こやつが貴様らの世話係だ。ではな」


 男はそれだけ言って去っていった。……この女だけにするのか? なら、僕の甘いマスクをもってすれば篭絡できるかもしれない。


「なぁ、僕の女にならないか。僕は勇者になる男だよ?」

「寝言乙。マシロさんの方が100万倍カッコいいし」


 あっさりと却下された。え、どうして?

 あんな獣より僕の方が良いに決まってるじゃん??? 頭おかしいよこの女。


「じゃあやろうか、拷問!」


 ……そしてついに拷問が始まってしまった。


「ぼ、僕はなにも知らないぞ! するなら後ろの4人にするといい」

「えっ。躊躇なく仲間を差し出すあたり、すげぇカッコ悪すぎるしドン引きなんだけど」


 何言ってるのやら、これは適材適所というものだ。

 拷問っていったら痛い事をするのだろう? 僕の仲間たちは痛みに耐える訓練をしているらしく、痛覚がとても鈍いらしいのだ。


 それに、僕は実際何も話せないしな!



「マジで操り人形なんだねぇ。ま、安心して。別になにも聞き出したい事はないから。……どうせ帝国の送り込んだスパイと、聖国出身の操り人形でしょ。ハイ、これ以上になにを確認しようっていうの?」

「え? ゆ、勇者として予定されていた待遇とか?」

「あはは。それきっと嘘を教えられてるよ。操り人形君の情報は一切アテにならないね」


 なん、だって?


「そうだ、先に一つだけ言っておくよ。拷問とはいっても身体を痛めつけたりはしない。君たちはギルドに引き渡すことになってるからね、安心して?……まぁ、マシロさんに傷ひとつでも付けてたらその傷の数だけ身体のパーツを切り離してたところだよフフフ」


 え、あ、それはよかった?

 んん?


「痛めつけたりしないなら、一体何をするつもりなんだい?……ハッ! まさかエッチな事を!?」

「うーん、寝言は寝て言え? まぁ全員剥いで着替えてもらうけど」


 そう言いながら女は牢に入ってきて、小さな何かを取り出した。

 何だソレ。……おしゃぶり? 赤ちゃんが咥えてるヤツだ。え、それをどうするんだって?


「ぼくちゃん、たっぷりおめかししましょうねー、ふふふ」

「むぐっ!?」


 口におしゃぶりを突っ込まれた。他の4人もだ。

 ……!? なんだこれ、口に違和感が。口が勝手におしゃぶりを咥えて……!?


「ば、ばぶっ――ばぶう!?」

「おー、成功だ。さすがあの方の魔道具だねー」


 言おうとしたのは「何をした」で、口から出てきた言葉は「ばぶぅ」。

 勝手に言葉が消されている! 自分の体なのに!


「ば、ばぁ、ばぶぅ……ッ」


 顎が、舌が、頬が、俺の言うことを聞かない! なんだこれは!?


「さっきも言ったけど、別に君達から私達が知りたい情報はないんだよ。そういうのはギルドに引き渡した先でやってくれ。……さぁて、これから始まるのはマシロさんに銃を向けた分のお仕置きだよ! せいぜい後悔するといい!」


 そ、そんな……や、やめろ! やめてくれ、こんな!

 僕は勇者になる男なんだぞ!? その手に持ってる布は――『おしめ』じゃないかぁあああああああああああああああ!?



―――――――――――――――――――――――

(次回、ビーベイ死す! デュエルスタンバイ!)

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