冷酷なエージェント(ビーベイ視点)




 僕はビーベイ。『輝く剣』のリーダーにして、ギドラーガ帝国に雇われた聖国出身の傭兵だ。

 ただし傭兵なのは僕だけ。『輝く剣』自体、僕以外は帝国のエージェント達だ。彼らは中々に強く、それでいてリーダーの僕に忠実だった。

 彼らを従えていると、まるで僕も冷酷なエージェントになったかのようで気分が良かった。日に一度マッサージをしてもらうのだが、これも大変気持ちが良かった。

 ……女がいないのだけは少し不満だったが。


 さて、そんな僕への依頼内容は、ダンジョンの破壊。


 これは世界を救うための必要なことらしい。

 ダンジョンは世界のエネルギーを吸い上げ、滅びに導く悪しき存在。

 世界を守るために、ダンジョンの破壊は必要不可欠――だそうだ。


 見事仕事をやり遂げた暁には帝国における『勇者』の称号と、それに見合う贅沢な生活を約束されている。



 僕はこの仕事のためにパヴェルカント王国に潜入し、冒険者ギルド内での地位を得た。

 すべてはダンジョンを破壊するためだ。

 そのために獣人の畜生共にも愛想よく接してやったのだ。本当に苦労した。



 そうこうして、先日ようやく皆をダンジョンの奥底へ連れて行くことに成功した。

 とはいえダンジョンのコアは結界に守られていた。


「さてカーゴ。ここからどうすればいいんだ?」

「ああ。ビーベイは見てるだけでいい。ミゴ、チノ」


 双子の男、ミゴとチノが揃って魔道具を取り出した。

 結界のところでゴソゴソと作業すると、結界が薄くなり、消えた。

 一時的に結界を無効にする魔道具らしい。


「あとはジョーが時限爆弾を仕掛けて終わりだ」

「はぁ、楽なもんだな。これで僕も勇者か。……でもなんですぐ爆発させないんだ?」

「ダンジョンは生き物でな、調子の悪い時があるんだ。その時でないと壊せないんだ。それに、仮に今壊したとしたら俺たちは生き埋めになるぞ」

「そ、そうなのか。それじゃあ仕方ないな」



 ――と、まぁそんなこんなで僕たちは任務を終え、ダンジョンが破壊されるのを確認してから帝国へと向かうことになっていた。


 それなのに、だ。



「皆! 聞いてくれ! ダンジョンに爆弾が仕掛けられていた!」

「何、爆弾が!?」


 冒険者ギルドで、ギルドマスターがそんな事を言い出したのだ。


「おいおい、それなら早く逃げないと!」

「案ずるな、爆弾は解除済みだ。お前ら! 犯人を捜すぞ! 怪しいのは帝国の奴らだ!」


 そんなわけで、まずはそこにいた面子から取り調べを受けることになった。

 僕達『輝く剣』もだ。扉番の記録のある冒険者が犯人であることは間違いなく、その数は限られているのだ。


「『輝く剣』の連中は帝国出身だったっけか?」

「いや。(僕は)聖国出身だよ」

「おお、そうだったな」


 と、リーダーの僕がそう答える。これだけで随分取り調べは簡単になり、口の上手い他の連中はあっさりとギルドマスターの取り調べをすり抜けた。




 だが、僕たちの仕掛けた爆弾が解除されたのは本当らしい。

 これではダンジョンが破壊できないではないか。


「おい、どうする? これじゃダンジョンを破壊できないぞ」

「……仕方ない、もう一度仕掛けに行こう」

「次の新月まで時間がないが、もう1ヶ月待つか?」

「いや。来月の新月には色々と対策されるだろう。逆に今回の方が早い」

「ここの連中は新月にダンジョンが弱まるとは知らないはずだ。であれば、新月直前に潜れば自然だろう」



 かくして僕たちは新月直前のモンスター溢れるダンジョンへと潜ることにした。



 その結果、僕達はあの悪夢のような体験をすることになったのだ。



-------------------------------------------

(次回、悪夢()の体験談。

 尚、正直に言うと今回はストック切れによる時間稼ぎですすみません!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る