いやぁうっかりうっかり
ダンジョンの最奥、結界の張られた通路の先にある黒い玉。それがダンジョンコアだ。
ダンジョンのコア、折角なのでコピーして複製を持って帰ってみようかなぁ。
……ん? コピー不可? あ、そういや神器だって話かこれ。残念。
「これは生活に紐づいてるから、回収できないよなぁ……ん?」
しかし、コアの後ろ側に貼り付けられていた物体はコピーできた。
なんだこれ魔道具? コアを制御する装置かな?
「ねぇ、コアの後ろにあるのって何?」
「コアの後ろ? 何のことだ?」
おっと、通路側からは見えないか。私はコピーした物体をマシロさんに見せてみた。
「これと同じものがコアの後ろにペタッと張り付いてたんだけど」
「こいつは……爆弾だな!?」
「爆弾、そういうのもあるのか。いざという時にダンジョンを破壊するために仕掛けてあるのかなぁ」
「バカ! んなわけあるかっ! ダンジョンが破壊されたらこの町はおしまいなんだぞ!」
おぅ。それもそう、か?
と、マシロさんがドンッと私を壁際に追い詰めて壁ドンしてきた。
真剣なまなざし。近い顔。吐息の音まで聞こえてくる。
……やべ、ドキッとした。カッコいい……壁ドンって良いものだったんですね……
「おいカリーナ! こいつが本当にコアの後ろ側についてんのか!?」
「え、あ、うん。外す?」
「外せるなら外せ!」
ひょいっと指を動かして、空間魔法発動。爆弾は私の手元に転移した。
「はいよ、これでいい?」
「……言っといてなんだが、本当に外せんのかよ!」
外せるから言ったんだよ、外せるに決まってんじゃん。
「よし、それじゃそいつは持ち帰ってギルドで見てもらおう。何か分かるかもしれねぇ」
「大丈夫? 途中で爆発したりしない?」
「あー、あり得るな。どうすっか……」
考えるマシロさん。……よし、一肌脱ごうじゃないの。
えーっとスキャンするとここがこうつながってて、こうだから……あ、ここが爆発部分かな? 魔力爆弾って感じ? 中に魔力詰まってるっぽい。
じゃあこの部分だけ抜けば良いな。部分転移っと。
「はい、爆発部分とそうじゃない部分で分けといたよ」
「おう、サンキュ……って、マジかよ。すげーな魔法使い」
「もっと褒めてもいいよ?」
「いやマジですげーんだがアタシじゃすげーとしか言えねぇよ」
なるほど、言葉もない程素晴らしいということか。むふん。
「でもこれ、本当に勝手に外してよかったヤツ? また何かモンスター出てきたりしない?」
「大丈夫だろ。多分」
うん、マシロさん分かってないなコレ。
「後ろめたいからコソコソ裏側なんかに隠してやがったんだ。それに、ギルドで聞いてみてやっぱダメだったら付けなおしにくりゃいいだけだろ?」
「それもそうか」
Aランク冒険者で、自分で責任をとれるからこその発言か。男前なレディだぜ。好き。
マシロさんが声をかけてくれたら私も手伝ってあげよっと。
「じゃあ私は帰るから、あとは任せたよマシロさん」
「まてまてまて。アタシだって帰るんだ、一緒に行くに決まってんだろ。ついでにカリーナが見つけた新ルート教えろ、アタシが説明するなら案内できなきゃダメだろ」
おっと、転移で帰る予定だったけど言われてみれば。
ギルドへの説明を丸投げする分、マシロさんにはちゃんと情報を引き継ぎしておかないとね。
というわけで、私達は来た道を引き返す形で、ダンジョンから帰還するわけだが、気になったことをマシロさんに尋ねてみる。
「そういえば、帰還ポータルとかってあるの?」
「このダンジョンにはねぇが、そういうのがあるダンジョンもあるぞ。ボス部屋を突破した後、入口まで一瞬でとべるやつだろ」
「え、あるんだ」
まさか本当にあるとは。このダンジョンにはないけど。
……やはりダンジョンが空間魔法の使い手説、濃厚だな。うん。
その後、マシロさんと一緒に戻ったダンジョン入口のところで「入場記録がないぞ、どこから入った!?」となったので、久々に五円玉の万能身分証が活躍したのはここだけの話。いやぁうっかりうっかり。
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(単純にストック切れそう)
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