ダンジョンは空間魔法の使い手だった説


 巨大なハチの巣を片付けた。

 もしかしたら何かの素材になるかもしれないので、全部きれいに収納空間に仕舞ったけども……まぁ、ハチミツも取れたっぽいんだけど、これ何の蜜だよ。この洞窟のどこに花が咲いてんのさ? やっべ、ホラー案件? それとも魔法の不思議な力?


 ちなみに巣の中にはクイーンホーネットと思われる個体もいたけど、まぁ普通に殲滅したよね。うん。仕方ない。でもきっとボス個体だろうし、そのうちまた復活するさ。きっと。多分。うん。



 ともあれ、巣を全て片付けたところでダンジョンの奥へと進む道を見つけた。当然のように下りていくと、そこは森だった。

 晴れた青空が少しだけ見える程度に、うっそうと茂った森。ハチの巣にあった蜜はこの森で採取したモノなのだろう。きっと、多分。花も咲いてるし。



 ……って、あれ?


「おかしい。私今洞窟の中にいたよね? そんで、下り坂を下りて……んん? 空ぁ?」


 振り向けば、そこには洞窟がある。こちらから見たら上り坂だ。

 ただしその道の横に回ると、それは空間魔法で繋げた道のように、どこでも現れるドアのように、突然に現れた洞窟の出口。裏側は石の壁だった。


「く、空間座標が歪んでるのか? おい物理法則ぅ。って、私も人のこと言えないんだけどさぁ、どうなってんのコレ。いやホント私も人のこと言えないんだけどさぁ」


 まるでウチの拠点の部屋の扉のよう。空間魔法……

 そうか、空間魔法か? ダンジョンは空間魔法の使い手だった説! あると思います。魔物が魔法を使うなら、ダンジョンが空間魔法を使ってもおかしくないな。ダンジョンだって生きてるのさきっと。


「なら『ダンジョンだからそういうもの』ってことでいいか。よし」


 私は頭を切り替えることにした。

 実際、空間魔法の使い手である私であれば、同じような場所が作れるし。ダンジョンの奥に森だって作れるし。逆に私の収納空間がダンジョンだった説さえあるかもしれない。

 ま、こういうのは深く考えても時間の無駄だ。私は学者じゃないんだし、そこを追求することに何の意味もない。


「にしても、フツーに空もあるな……あれ、今何時だ? 私、どんだけ潜ってた?」


 思い返せば、イエロー君の尾行やハチの巣の殲滅でだいぶ時間を取っていた。もう朝になっている時間だった。やっべー、徹夜しちゃってたよ。気が付いたら眠くなってきた。

 ふわぁ、とあくびが湧いて出る。うん。一旦帰ろう。


 私は今いる場所を記憶し、収納空間への道を開いた。

 また来るよ。んじゃねー。



「あ、おかえりなさいカリーナお姉さん。どうでしたか?」

「流石に一晩じゃ攻略できなかったから寝るぅ」


 私はディア君へのただいまもそこそこに自分の部屋へ。

 布団へともぐりこんだ。すやぁ。



  * * *



 起きた時、ベッドの中にはアイシアが潜り込んでいた。


「ふぁ!? あ、アイシア、なんで布団の中にいるの!?」

「へふ、あ、おはようございますあるじ様……ここ、私の部屋です」


 なん、だと?

 と部屋を見まわしてみると確かにアイシアの部屋だった。

 あれー、おかしいな? 私自分の部屋に戻って自分の部屋で寝たよな?


「むむむ、なんたること。私が部屋を間違えただと……?」


 空間魔法の使い手たる私が、寝ぼけて右と左を間違えるとは……っ! なんたる失態!


「昨日寝てたら、あるじ様がふらりと入ってきまして、そのままご寵愛を頂けるのかと思いきやすやすや寝入ってしまわれまして」

「あー、うん、ごめん部屋間違えたね。うん」

「ご主人様はいつでもウェルカムです」


 内装とかで気付いてもよかったと思うの私。よほど寝ぼけてたんだろうか。ちゃんと寝ないとだめねぇ。


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