そこにはデカいハチの巣があった。

(※蟲表現注意)



 私、カリーナちゃん! 今、某ゲームの気分でダンジョンを進んでるの!

 お、今度はデカい蜘蛛。やはり人間より大きく、これもまたアレだろうか。糸に巻かれて云々のあのセリフを言うチャンス――


「って、普通に襲い掛かってきたよ。なんだよ、期待させやがって」


 しいて言えば前足? にあやとりのように糸をくっつけて、粘着して捕まえようとする感じの使い方だった。うーん、飛ばして来いよ、糸を。なんなら某ゴリラのゲームのお友達キャラのように蜘蛛の巣を飛ばして来いよ。


 え? そもそも蜘蛛の尻から出てくる時点では糸なんだから、巣にして飛ばすのって無理だろって? うるせぇ魔法で何とかしろよ! 魔物だろ!?……いや流石にむりか。口の中でチューインガムを蜘蛛の巣型にして吐き出せって言うより無茶ぶりだったか。


 まぁ蜘蛛も解体して収納にポイだ。



 おっと、冒険者の気配。こっちは回避して、他の道を探そう。鉢合わせても面倒くさいしね。

 空間魔法使いとして、来た通路は完全に把握している。脳内マップは3Dで完璧だ。戻ろうと思えば戻れるし、なんなら攻略を無視して収納空間に戻ればいいだけ。

 人の気配を避けて適当にずんずん進んでしまおう。



 おっとクロウラーだ。お前意外と美味しいやつだったよ――あ、イエローホーネットに襲われてやがる。なんだよダンジョン内でも食料かお前。悲しいけどこれ、食物連鎖ってやつなのよね……と、良いことを思いついた。身を隠してイエローホーネットについていこう。光学迷彩! 私は姿を隠し、クロウラーを襲っていたイエローホーネットを尾行してみることにした。


 あわよくば、ダンジョンの奥にいるというマザーだかクイーンだかの元へ連れて行ってくれるかもしれないからね!


 というわけでイエロー君が食事をし、食べ残しをぐりぐりと団子にしているのをそっと待つ。……よし、飛び立った。尾行開始だ。

 ん? おいまてそこの赤いカマキリ。そのイエローホーネットは私の獲物だ、横殴りは禁止だぞ。

 まったく危ないなぁ。イエロー君は無敵状態スターモードにしておこう。赤いカマキリは関節解体して収納送りだ。ポイっとな。キミはただ通りすがりのオヤツを食べようとしてたのかもしれんが、運が悪かったな。



 というわけで、イエロー君を陰ながら護衛したところ、下り階段へとたどり着いた。

 手前がボス部屋っぽいんだけど、ボスもいなければ扉もついていない。これもしかして未踏領域ってやつですかい? もしかして、こういうのがあるから徘徊ボスとかが出てくるんじゃねぇかな。とか考察してみる。

 まぁいいか。奥へいこう。



 さらにイエロー君についていくと、そこにはデカいハチの巣があった。

 スズメバチタイプの、入道雲みたいな形の巣。それが、2、3階をぶち抜いた大広間を敷き詰めるように埋まっている。そして、大量のホーネット達が飛び回っていた。


 うわああぁ、見るだけで鳥肌が立ってくる。ムズムズしちゃう。生理的にアカンわこれ。人類はハチを嫌悪するようにできているわコレ。集合体恐怖症になっちゃうよぅ!

 黄色と赤と、間を取ってオレンジのもいるな。うわぁ、きもっ。虫虫してて蟲って感じで、ちょ、モザイク。視界全体にモザイクが欲しい! みせられないよ!


 ……ともあれ、ここまでくればもうイエロー君は用済みだ。無敵状態スターモードを解除して、巣の中へクロウラー団子を運ぶイエロー君を見送った。案内ご苦労さん。



「……うーん、これ、殲滅してもいいやつなのかなぁ。わっかんねぇ」


 とりあえず、空間魔法でこの部屋の構造を確認しておこう……と、アクティブソナーのように魔力を放った瞬間、部屋中のホーネットが一斉にこちらを向いた。



 ヤメテ? コッチミナイデ?



 私がそう言おうか悩んだのも束の間、ハチたちが飛び掛かってきやがった。


「うわぁあああああきめぇえええーー!!! お助けぇええええーーー!!」


 待ってこっちの話を聞いて……って聞けるわけねぇかハチだもんよぉ!

 騒げば当然、巣の中からだってハチが襲い掛かってきた。

 ひぇえ! うぞうぞ怖い! キモイ! ダメージ入らないけど近寄らんといてマジで、デカい虫じゃん! いやぁ!!


 気が付けば、私は部屋の中にいたハチたちを全て、悉く、一匹残らず殺しつくしていたのである。

 ……仕方ないね!! あー、ちょっとトラウマになりかけたよ……


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