さ、酸だーーーー!!!



 鍛冶屋ですっかり一日潰し、観光した私たち。

 サティたんとお別れしたので、今日からは完全に宿の部屋には扉を置いて、アイシアを含めて拠点で休む形になっている。尚、仮に侵入者があっても扉は隠蔽されているので見つけることはできないだろう。フフフ、防犯も完璧だぜ。


 そんな私たちのもとに一通の手紙が届いていた。というか、私ってばチェックするのすっかり忘れてて、気付いてくれたのはディア君だった。


「カリーナお姉さん、今見たらポストに手紙届いてましたよ」

「え、ホント? ありがとディア君。あ、マリア婆からじゃん。どれどれ……」


 ピッと便箋を開けて手紙を読む。……ふーむふむ。ふむ。うん。なるほど。


「読んで! ディア君!」

「え、お姉さん文字読めるでしょ?」

「読めるけどよくわからなかったの! なにこれ暗号文!?」

「あー、貴族の挨拶とか言い回しですね。あれ、2枚目ありますよ。こっちは簡単に書かれているみたいです」

「え? あ、ホントだ」


 よく見たら2枚セットだったらしい。えーっと。


『1枚目は貴族の言い回しで書いたやつだから、カリちゃんには読めないかもね。ってことで分かりやすく書いたのを添えておくよ』


 なるほど、お見通しかよマリア婆。助かるけどもさぁ、だったらこっちだけでいいじゃんかよぅ。え、慣れろって? うーん。そういうのはディア君に任せよう。


 で、内容としては……丁度私たちがカルカッサに来てるのを聞いて、このあたりにある神器について調べてくれたらしい。

 なるほどなるほど。ダンジョンの中、最奥にあるダンジョンコアが神器なのかもしれない――と。ふぅん? ダンジョンコアかぁ。そういうのもあるのか。


「とはいえ、こうして町の基礎として生活が成り立ってる以上、私の回収対象外の神器だよねぇ。有効平和利用だし」

「そうですね。ダンジョンが消えると困る人が沢山出ると思います」


 それこそ昼間に会ったドワーフ君たちだってそうだ。


「まぁ、念のために見るだけ見ておこうかな。ダンジョンコアってやつを」

「え? ってことは、ダンジョンを攻略するんですか?」

「回収はしないけどね。見るだけ見るだけ! ちょっと行ってくるね」

「え、今からですか?」

「私一人なら何の気兼ねなく速攻でいけるしね。大魔導士カリーナちゃん出動だよ」


 忘れてるかもしれないけど、最強なのだよ。カリーナちゃんは。


「まぁ別に明日でもいいんだけど、思い立ったらやっとかないと忘れちゃうからさ」

「なるほど。じゃあその、行ってらっしゃい、お姉さん」

「おう、行ってくるね!」


 と、私はダンジョンへと収納空間の出口を開いた。


  * * *


 サティたんと一緒に攻略したボス部屋の先の通路に出る。後ろの部屋を見ればボスが復活していたので、折角だからサクッと倒して回収。うまうま、ポーションにして売るのもありだな。


 で、奥へと進む。

 階段を下りれば、そこには人よりも大きなアリが3体、我が物顔で歩いていた。

 アーマーアント。その体表は黒い。曰く、熱して溶かせばそのままインゴットのように使えるほど、鉄を多く含んだ装甲らしい。生物の神秘だねぇ。いや、魔物だっけ。どう違うか分からんけど。


 私を見てギチギチギチと鳴く。アーマーアント達。アリって大きいと鳴くのね、知らなかったよ。

 と、うち一体が器用にもエビ反りするようにして、尻の先端をこちらに向けた。

 このモーション……地球の平和を守る某ゲームで見たことあるやつだ!


「さ、酸だーーーー!!!」


 はい、言いたかっただけ。いや実際酸が飛んできたけどね。バシュッて。空間魔法で遮ったから無効だけど。ほえー、本当に酸飛ばしてくるんだねぇ。


「よし。言いたいことも言えたし、じゃ、さよならってね」


 私は空間魔法でアーマーアント達の関節を分断し、収納した。鍛冶練習素材ゲットだぜぃ。帰ったら試そう。



―――――――――――――――――――――

(ストックがもう尽きる…! が! 3月いっぱいは何とか毎日更新する…!!)

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