知識教えちゃったかも……まぁいっか!
私カリーナちゃん! 鍛冶場の見学許可をもらって、早速見せてもらってるの!
石造りの大きな炉に黒い燃料と金属インゴットをくっつけた棒を突っ込んでゴウゴウ燃やし、赤から白にまで熱された金属をカンカンと叩いてるわ!
うーん、すごく鍛冶っぽい!
ちなみにこの鍛造、今は鉄の包丁を作っているらしい。作っているのは最初に出てきたドワーフ君(15歳)。お父さんの後を継ぐべくお手伝いしているそうな。
流石に親方の仕事は簡単には見せてくれないようだ……いや、今は単に親方がやるほどの仕事がないだけっぽいかなぁ。
「にしても、鍛冶見て楽しいだなんてなぁ。人族にも変わったやつがいるもんだ」
「いやぁ、楽しいよ? なんかこう、モノができていくのってさ。材料が製品に変わるのってなんか不思議というか魔法っぽいよねぇ」
「お、分かってんじゃないか姉ちゃん。そうなんだよ、鍛冶って転がってる石コロが剣になったりすんだよな、すげーよなぁ!」
上機嫌なドワーフ君。結構気が合うぜ。
尚、この『姉ちゃん』はお嬢さんという意味ではなく文字通りお姉さんという意味である。私の方が年上なんだ。外見的に。
「そうだ。こうさぁ、楽器とかって作れるかな? 鍛冶で」
「楽器ぃ? そりゃ木工の仕事じゃねぇかな。せいぜい一部のパーツを金属で作るくらいで……あ、でも木工でできるなら全部金属でやってやれないことはねぇか? 細工師の仕事になるかもだけど」
「ウチの地元だと金管楽器とかいうのがあって、それは金属の楽器だったね。笛とか」
「ああ。金属の笛。それなら聞いたことあるな!」
へぇ、あるんだ。金属の笛。まぁラッパとかそういう感じで。
「あるじ様、笛は吟遊詩人に向かないです」
「そういえばそんなこと言ってたっけ。じゃあ、金属の……打楽器? 鉄琴とか? 小さな板を並べて、叩くの。板の大きさで音が変わるからそれで音階作ってさ」
「金属の板? そんくらいなら炉を使わなくてもすぐ作れなくもないぞ。こんなか?」
と、ドワーフ君は鉄のインゴットを手刀ですぱっとスライスした。
なんそれ。すご。鏡面仕上げとまではいかないが、平たい断面の薄い板になっている。ちょっと空間魔法みたいじゃんか。
「鍛冶スキルってやつ?」
「ああ。自分でこしらえたインゴット限定だけどな。オヤジくらいになるともっとデカい鉄板を作ったりできるけど、話に聞く分にはこんぐらいでいいんだろ? 丁度いい練習だ」
と、お刺身をスライスするが如く、鉄板を床に並べていくドワーフ君。
えーっと、じゃあ私も木工スキルで。収納にしまってあった木材を切って、ほぞ刺して、とりあえず糸で橋のように鉄琴の土台部分をつくる。鉄板は置くだけ。本体はこれで良し。
そんで小さな木の玉に棒を刺せばバチも完成だ。バチで適当に置いた板と叩くと「キーン」と澄んだ音が鳴った。
「へぇー! すげぇな、こんな簡単に楽器になるのか!」
「あ、あるじ様あるじ様! 演奏してみてもいいですか!?」
「お。いいよ。でも音階は調整しないとだねぇ、よくわからないけど」
「大きさ変えればいいんだろ? 任せろ」
「あ、出来れば穴開けて糸通す形にした方が固定できるなぁ」
「穴か、ん-、小さい穴だと……うん、いける! やってやらぁ!」
わいわいと盛り上がりつつ、アイシアとドワーフ君は鉄琴の音階を調整していく。
鉄板の長さを削るように調整するだけなので、少しまかせておこう。アイシアの耳は正確な音階を切り分けてくれる模様。チューナー要らずだね。……へぇ、こっちの世界もドレミファソラシドなんだねぇ。これも銭湯同様に輸入なんだろうか。
で、私は半ば放置気味だったディア君の方へ。
「ふぅ、中々に盛り上がっちゃってるよ。ディア君ほったらかしでごめんね?」
「いえいえ。ボクもお姉さんが楽しそうで何よりです」
にこり、と微笑むディア君。可愛い。耳しゃぶりたい。
「お姉さんって楽器も作れるんですね」
「あれはぶっちゃけ板を叩ければなんでもいいんだよ。叩けば大体音が鳴る。難しいのは微調整だ」
音を響かせるための工夫はもっといろいろ必要になるし、オモチャレベルだけども。まぁこれはこれで十分楽器だ。
「なるほど。……お姉さん、上手いこと回転する魔道具と組み合わせたら、魔道具に演奏させるとかできるんじゃないでしょうか?」
「ほう。オルゴールを作る気かね? いいぞディア君。そういうの私大好き。私の知識にあるオルゴールについて色々教えちゃるぜ」
ディア君も面白そうな閃きを得たらしいので、オルゴールについて教えておく。
紙オルゴールとかいいよねー。アレどうやってるんだっけ、穴に引っ掛けるんだっけ? 紙が破けないんだろうか。不思議。
「そういや、パンチカードとかいうのもあるんだよな……穴によって事前に決められた挙動をするやつ」
「おお、それは面白そうです……もっと詳しく教えてください、お姉さん!」
あっヤベ。ディア君に余計な知識教えちゃったかも……まぁいっか! 楽しそうだし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます