うーん、多様性パーティー
鍛冶屋といっても武器や防具だけを作るわけではない。包丁はもちろん、ハサミ、鍋やお玉、釘などの金属製品は大体鍛冶屋で作られるものだ。
お値段は手作りなので技術料でそれなりにお高くはなるが、このカルカッサダンジョンでは鉄の外皮を身にまとうアーマーアントが出るため特に鉄製品はそれなりにお安い。
実際、鍛冶屋の情報を得るために買った武具は鉄板仕込みの安全靴はそれなりにお買い得なお値段だった。(1足銀貨25枚はしたけど)
鍛冶工房に向かって、アイシアが声をかけた。
「すみませーん。ちょっといいですかー?」
「ん、なんだ? オーダーメイドか?」
赤髭なひげ面の小柄なおっさんが出てきた。親方のドワーフだろうか。
アイシアの手には渡したお酒があり、そちらに目が行っている。
「店員さん、鍛冶場を見学したいんですが、責任者呼んでもらっても?」
「ん、おうそうか。おーいオヤジー。お客さんが見学希望だってよ」
と、そのドワーフはどうやら普通に店員だったらしい。
「ディア君、私今の人が親方かと思っちゃったよ」
「ボクもです」
「え? あの子多分ディア様より年下ですよ、ドワーフですし」
マ!?
「ちょっとまって、今のドワーフで大体何歳くらいなの!?」
「えと、15歳くらいですね。鍛冶見習いかと」
「それは確かにボクの方が年上ですね。ボクは30歳くらいなので」
マ!? なんてこった。ディア君は合法だったのか……!?
「エルフって長生きですからね。人間で言うと11歳くらいですよご主人様」
「あ、そうなんだ? ドワーフは寿命どうなの?」
「人間とそう変わりません。女性は若く見られがちですが」
そう言って胸を張るアイシア。うーん、合法ロリである。パーティーメンバーが合法ロリしかいねぇ……いや、ディア君は脱法かな? 脱法ロリ。
「それにしても、なるほど。実際見てみるとこれは年齢が分かりませんね」
「さっきのよりアイシアやサティたんの方が年上なんだもんなぁ。しかもドワーフ的観点ではちゃんと年齢が分かるみたい」
エルフからしてみたら特に貫禄のある髭に見えたらしい。……そりゃおじいさんが子供に手を出してるように見えるわ。うん。
と、今度は白髭のドワーフが現れた。なるほど貫禄が違う。
「おう、見学だって? 酔狂だな」
「初めまして親方さん。これお近づきの印にどうぞ」
「よし、邪魔しなきゃ好きに見ていいぞ。そっちの連れの嬢ちゃんたちもちゃんと面倒見てくれよ」
ドワーフ式交渉術(酒賄賂)により、アイシアは快く見学権をゲットした。話が早い!
「やりましたご主人様。鍛造の方も見ていいそうです!」
「あまりにもアッサリで驚いたよ」
「サティのお酒が良かったんでしょう。見た瞬間に乗り気になりましたから」
ふふん、とサティたんの功績に鼻高々なアイシア。
一方でディア君は眉を寄せていた。
「……どちらも立派な髭の持ち主でしたね。やはりどちらが親方なのか、言われなかったら分からないですが。カリーナお姉さんは解ったんですね」
「なるほど。エルフ視点だとドワーフの貫禄も良く分からないのか。こう、髭の質感とか皴の感じとか眼つきとか?」
「言われたら、なんとなく分かるような……触れれば多分マナの洗練具合で分かりそうなものですけど」
「私はそっちの方が分かりませんね。ドワーフは普通に見たら成人直後の子供と腕のよさそうなオジさまだって分かりますけど」
どうやら私達3人は、それぞれ同じものを見ても違うように見えるらしい。うーん、多様性パーティーだなぁ。
……
二人には私の事どう見えてんだろうな? とすこーし気になったのはここだけの話としておく。
―――――――――――――――
(書籍化情報の続報です。
マイクロマガジン社より、レーベルはGCN文庫から秋ごろ発売予定!
……え、絵師さん見つかるかなぁ。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル )
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます