お茶のクッキーとか好き

 シスターの導き(案内料ホットケーキ1枚+蜂蜜)により、私達は鍛冶屋へやってきた。

 ついでに鍛冶スキルでも覚えられたらなぁ、とか思ったりしちゃって。


 鍛冶屋といえば、トンテンカンカンと金属をハンマーで叩いて武具を作るイメージだけども、実際のところどうなんだろう。


「どうなのアイシア? ドワーフならそこんとこ詳しくない?」

「大きく分ければ2つあって、鍛造の方は大体あるじ様のおっしゃる通りです。炉に素材を入れ熱し、柔らかくした後に叩いて練って、上げて形を作ります。まぁ、パン作りみたいなものですね」


 おう、鍛冶とパンを同列にしちゃったか。


「ほら、どちらも生地をこねて均一にしますし、炉を使うじゃないですか?」

「確かに! 上手いこと言うねぇアイシア」

「えへへ、パンなだけに!」


 焼いて溶かすのと、焼いて固めるのとで違いはあるけれどね。

 と、ここでディア君が「んー」と首を傾げた。


「鍛冶をしているところとか、実際に見せてもらえたりするものでしょうか?」

「鍛造する武器とかの見学は難しいかもしれませんが、もうひとつの鋳造の方なら、頼めば見せてもらえると思いますよ。サティからお酒買ってますよね? 鍛冶師がドワーフなら、お酒を対価にすれば少しくらいはいけます」

「なるほど。ドワーフだとお酒で釣れるのか」

「そしてこういう町にはドワーフが親方な鍛冶屋が1、2件は必ずあるものなのです」

「なるほど、すごくドワーフっぽい!」


 なんて完璧な理論なんだ。うちのアイシアは優秀だな。


「ちなみに鋳造の方は例えるとなんなの?」

「んー。クッキーですかね? 型に流しこむのと、型でくりぬくのの違いはありますが、同じようなのがいっぱい作れます」

「なるほど。私、お茶のクッキーとか好きー」


 というわけで、早速適当な武器屋を尋ねてみることになった。武器屋を見て、そこで何か買ってついでにドワーフの鍛冶屋の情報を仕入れようという魂胆である。

 ついでにアイシアの武器を手に入れてしまおう。先日のダンジョンではミスリルナイフを持たせていたけど、特に使うことはなかったし。


「ダンジョン行く前に聞くべきだったんだけど、アイシアってどんな武器使うんだったの?」

「私ですか? えーっと、楽器ですね」


 なにそれ。ギターでぶん殴ったりするんだろうか。ロックだなぁ。


「魔物が嫌う音で結界を張ったりするくらいですねぇ。吟遊詩人なので、そもそも戦うことがあんまりないといいますか」

「あ、それはそうだね」

「武器屋じゃ楽器は置いてませんし、私じゃ武器はナイフ程度しか使えません。小盾と解体用のナイフでも買っていただければと」


 となると、武器屋で買うより木工スキルとかで楽器作ったほうが良いんだろうか。ふーむ。


「あの、アイシアさん。吟遊詩人としてはそもそも盾で防御するのもあまりよくないのでは? 大事な商売道具ですし、折角カリーナお姉さんが治してくれたんですし」

「やだなぁディア様。そこはあるじ様がいくらでも直せるからこそ、何の問題もありません。でしょう?」

「あ、うん。まぁ治すけど」


 なんかアイシアの『治す』のニュアンスちょっとおかしいような。いやよそう。


「僕もサブウェポンが欲しいですね。ミスリルナイフは行商品として買ったんですよね? 魔力切れしたときに使える武器なりがあれば」

「なるほどなるほど。ま、良いのがあったら買っちゃおう。生活費の方使うからね、予算は金貨4枚くらいで」


 とりあえずで揃えるには金貨4枚はかなりの予算だと思う。

 もっとも、全身鎧とかだとこれでも足りないかもしれないらしいけど。



「あ、そうだ二人とも!……足は絶対守ってね! 足は!」

「では頑丈なブーツも買いましょう。そうしましょう」


 うん、それならアリだな。頑丈で通気性の悪いブーツなら蒸れるから尚更神様好みになるだろうし。足だけ常時スターモードというのもアリだな。うん。



 そんなこんなで、武器屋で買い物をしてドワーフの鍛冶屋についての情報を得た私たちであった。次回、ドワーフの鍛冶屋へ突撃取材だぜ。ふぅっふー!

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