1揉み銀貨1枚


 ダンジョンの町、カルカッサ。その観光といえばやはりダンジョン関係なわけだが、ただダンジョンに行くだけでは普通に冒険者のお仕事である。

 ここはダンジョンに関係のありそうな施設について調べるのが良いのではなかろうかと思う次第で、私はこういうのに詳しそうなカルカッサの教会へとやってきた。


 ディア君とアイシアにはちょっとお祈りしてついでに観光できそうなトコ聞いてくると言っておいた。まぁ、お祈りはしないけど。だって神様と私はいつでも繋がっているんだから……! いやガチで。神棚で十分お祈り届くし。今は納める靴下もないし。


 教会の開かれた扉をくぐると、そこに見覚えのあるピンク色を見つけることができた。

 今回の目的である、どこの町にもいて、記憶を共有している御同輩、シエスタである!

 うん、これほど各地の観光名所に詳しそうな人物は他に知らんからね!


「ヘイ、シエスタ! 観光名所教えて!……ってうぇい!?」

「あら、素敵な香りを漂わせてますね御同輩?」


 だが教会にいたピンク髪のシスターは、大変な熟女様であった。

 ムチムチで色気が半端ねぇのである。シスター服もはちきれんばかりだ……!


 なんだこいつ、身体から「ムチッムチッ」とか「どたぷん」とか擬音がうるさく聞こえてきそうだぜ……!?

 なんていやらしいんだ……ごくり。こんなの犯罪でしょ! 歩くわいせつ物陳列罪とか大変けしからん罪かなんかでしょ! 青少年育成に深刻な影響を及ぼすよ!


「えーっと、シエスタ、だよね?」

「はい。ソラシドーレのシエスタから見たら叔母という設定のシエスタです」

「叔母! なるほど、そういうのもあるのか……」


 流石にどこもかしこも従姉妹や双子じゃ無理がある。なのでこういうバリエーションもあるのかぁ。すげーや、さすがサキュバス。性癖的に万能かよ。


「ダンジョンの町ですと、こういう豊かな実りを感じられる方が評判が良いのですよ」

「なるほどなぁ、おっぱい揉んでいい?」

「1揉み銀貨1枚となります」


 金払えば揉ませてくれるんかい。揉まんし払わんけど。私がサティたんとアイシアとスッキリした後でなかったら払ってたかもだけど!


「祈祷料みたいなものです。ご利益がある、と皆さまから大好評をいただいていますよ」

「なるほど、縁起がいいおっぱいなわけだ」

「ええ。それにご利益がなかった方は帰ってきませんから、クレームはゼロです」


 わぁ、そりゃ大好評間違いなしだぁ。


「……冗談ですよ?」

「あ、えっと、どのあたりが?」


 ニコリと笑うだけのシエスタ。くっ、大人な色香に翻弄されちゃうぅ!



 ステイステイ、ふぅ。一旦深呼吸だ……


「まぁそれはさておき、いい具合の観光名所とかない? ダンジョン関係の場所がいいなぁ。ダンジョン本体は別で」

「そもそもここは観光するような町ではないのですが。それこそ見所はダンジョンくらいですよ」

「身も蓋もねぇ……」


 まぁ言ってしまえば工場にやってきて美味しいお蕎麦のお店ありますかみたいな見当違いな話ではあったか。


「あ、ではダンジョン周辺のお店はいかがですか? 鍛冶屋とか。武器防具の需要が高く、素材もダンジョン産のモノを取り扱うということで多少は特色あるかもしれません」

「ふむ。鍛冶屋か」


 アリだな、と私は頷く。


「ありがとうシエスタ、鍛冶屋行ってみるよ!」

「よかった。では相談料を頂きましょうか」

「……冗談?」

「いえ、真面目に。お気持ちをお布施していってくださいね」


 くっ、迷える子羊への道案内は有料であったか……!

 しかたないにゃぁ……


「ちなみに相場はどのくらいで?」

「ホットケーキですね。神様から話は聞いていますよ?」

「……ホットケーキかぁ。これ空間魔法無効でコピーできないんだけどなぁ……わかった。作り置きしてたの一枚あげるよ。蜂蜜もつけとくね」

「おお、それは嬉しいですね。御同輩に神の祝福あれ」


 スッと聖印のマークである円を空に描き、シエスタは祈った。

 ……それ、ホットケーキのマークだったりしないよね?


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