改めてダンジョン攻略


 私、カリーナちゃん。

 今、私お手製のカリーナちゃんポーション(原料名そのまま記載)をコピーしているの。

 魔力を内包するものをコピーするにはコピー元以上の魔力を消費するので魔力的には赤字。だけど、余ってるのを保存できる形にするわけだからね。このロスはむしろ預け賃みたいなものよ!


 元は小ビン5本程度の量だったけど、コピーを繰り返したことで30本分くらいの量にはなったかなぁ。直に空間魔法でまとめてるけど、ビン買ってこなきゃなぁホント。


 あー、もうフラフラ。今日はもう寝よう……

 宿の部屋をディア君に任せ、私は拠点の方でぐっすり寝ることにする。アイシアは引き続き今日もサティたんの部屋だ。


 あふぅ、自分のベッドは落ち着くなぁ。うん。


 ……と、毛布に包まっているとふとサティたんからいただいた靴下のことを思い出す。

 そういやこれは神様に納品する必要ないんだよなぁ。くんくん……くっさっ、チーズを鼻に詰められたかのような濃厚なニオイだ……って、私はなんで無意識にサティたんの靴下を嗅いでいるの!?

 しかも無意識にオリジナルを保存してそのコピーを!!

 こわっ、神様仕込みの性癖こわっ!


 そして身体が言うことを聞かねぇほどたかぶっている……ッ! これが、靴下のパワー……! やだやだ、私靴下に負けたくないッ!

 くっ、こんな靴下なんかに屈したりは……すぅー、はぁー、はぁ、くっさ……


  * * *


 靴下には勝てなかったよ……おのれ神様。あー、太陽が眩しいぜぃ。

 尚、さすがに体中が臭かったので風呂に入ってから拠点を出てディア君と合流した。


 うーん、寝不足気味だけど魔力は充実してんなぁ。なんでだろうなぁ……


「おはようございますお姉さん」

「おはよー」


 今日のディア君は男の子バージョンか。うんうん、可愛いね。


「あれ、朝からお風呂入ったんですね」

「うん、朝風呂もいいもんだよ。ディア君も入ってきたら?」

「……いや、今日はサティさんとダンジョンに行く予定でしょう? バレませんか?」


 そういやこの宿お風呂ないんだったわ。

 まぁ町に風呂屋はあるし、そっちに行ったということで誤魔化そう。


「でもむしろ私のサティたんだし、アイシアの妹なら身内ってことでいいかもね。バレたらそん時はそん時ってことで」

「お姉さんがいいならいいんですけど」


 特にバレても罰とかないもの。サティたんなら頼めば黙っててくれるだろうし。




 というわけで、改めてダンジョン攻略である。

 今日はサティたんも含めて4人パーティーだ。入場料を支払い、ダンジョンへ。


「で、カリカリ。どこまで攻略するぅ?」

「そうだなぁ。どこまで攻略しようかディア君?」

「なら、ボスまで攻略してしまいましょうか。索敵をお願いしますアイシアさん」

「分かりました!」


 ダンジョンに潜っていく私達。クロウラーやグラスホッパー、イエローホーネットが襲い掛かってくるが、まぁ注意していればなんてことのない魔物達だ。


「ほへー、アイ姉ってば索敵にすごい便利じゃん」

「サティこそ。酒瓶振り回して戦うの初めて見ましたけど、そんな感じだったんですね」


 鉄製の酒瓶を、ヌンチャクのように紐で結んでいるサティたん。ひゅんひゅん振り回して本当にヌンチャクのように敵を叩き潰していくし、なんなら中に入ってるお酒をくいっとあおったりしている。

 大丈夫? 質量減って攻撃力下がらない? あ、バフの方が上回るから問題なし。補充用のお酒も持ってきてるから大丈夫。へぇ。


「んじゃ、ホーネット収納しとくねーっ、と」


 死骸からサティたんが潰した頭をブチッともいで、カバンに突っ込んでいく。


「ポーターが居るとたくさん持ち帰れるからいいねぇ。……でもアイ姉のかばん、見た目よりだいぶ入ってる気が……?」

「サティ、酔ってるんですよ。気のせいです。これはあるじ様にお借りしている何の変哲もないカバンですよ?」

「そっかぁ、気のせいかぁ」


 ケラケラと笑うサティたん。うーん、酔っ払い可愛い。好き。お持ち帰りしたい。


「えーいエアカッター」

「カリカリ、そういう魔法使うんだねぇ。クロウラーも頭真っ二つとか強くない?」

「ふふん。こう見えて私、最強だから? あ、でも可愛さではサティたんに負けちゃうかなぁ!」

「あはは。飲み比べでも負けないよぅ? ズルなしならね。今日帰ったらしようね」

「うんするー!」


 わー、思わず約束しちゃったけど飲み比べだぁ。しかもズルなし。これは勝てる気がしないぞぅ。負けちゃうなーわくわく。


 と、そんな風にダンジョンを気楽に散策していると、下り階段をいくつか降りた先で明らかに浮いた雰囲気の人工物――レリーフ入りの大扉がある部屋の前へと辿り着いた。


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