今日から私も錬金術師(ポーション編)


 私カリーナちゃん!

 サティたんから錬金術の本、ポーション編を買い取ったから、今日から私も錬金術師(ポーション編)よ!


 というわけで、早速教本を読んでみると中々に興味深かった。いや、元々興味があったから買い取ったわけだけど。

 なんでも、マナポーションによる魔力回復は、薬草や素材に含まれるマナを摂取することで回復する効能らしい。


「ってことは、魔物からもマナポーションは作れるってことだよねぇ?」


 むしろ魔力を含む素材として魔物は優秀な素材であるようだ。ほほう。

 食材としてそのまま食べてもあんまり回復しないので、上手く加工してやる必要はある。それを成し遂げるのが、錬金術(ポーション編)のテクニックだ。



 早速、ソラシドーレ付近の山にて薬草を採取してきた。教本に図解されていたから分かりやすかったぜ。フフフ、さぁ、こいつをどう料理してやればいいのか……それは教本の次のページ。



「あれ、お姉さん。何やってるんですか?」

「あ、ディア君。錬金術だよ。錬金術。ポーション編」

「! もー、そんなのボクにも声かけてくださいよ! それ新しい教本ですか、見せてください!」


 ンモー、ディア君ってば新しい事に興味津々なんだから! いいともー!


「本当は一足先に習得してディア君に先輩風吹かせちゃおうかと思ってたんだけどね」

「ならリビングじゃなくて自分の部屋でやったら良かったじゃないですか?」

「自分の部屋だと、その、気が散っちゃって」


 オモチャが目に入って、ついつい他の事しちゃうのだ。てへ。


「ならいっそ、作業部屋を作るのもいいかもしれませんね」

「あー、いいね。今度作ろう。木工も作業部屋でやるようにしたら捗りそう」

「色々と作業道具を買いそろえたくなりますね」

「鍛冶道具とかはまた鍛冶部屋とか作っちゃったり? いいなぁ、夢が広がるなぁ」


 なにせいくらでも部屋を作り放題なのだ、細かく用途毎に部屋を作っていいのだ。

 あ、じゃあその、アレ用にオモチャを詰め込んだ部屋ってのも……いや、あれは私の部屋に置いとかなきゃダメだな。その、ディア君やアイシアに見られたら死ねる。尊厳が。


「お姉さん、薬草をすり潰すのに薬研とか乳鉢とかが必要なようです」

「私は空間魔法で代用できるけど、ここは石から削りだして道具作っちゃおうか。ディア君もやりたいでしょ?」

「はい、やってみたいです」


 というわけで自然石から空間魔法でしゅぽんっと薬研、乳鉢、乳棒と道具を作成。

 いずれちゃんとした道具を買ってもいいけど、お試しならこれで十分だろう。


「……この道具、下手に買うより品質がいいかもしれませんね?」

「あれ、そうかな? 私的には間に合わせな感じなんだけど」

「お姉さんの空間魔法って精度が凄いですから。それに自然石から削り出しみたいなものですし、かえって高価な道具に相当するかと」


 あー、確かに加工精度はこの世界で神様に次ぐ正確性を誇る自信あるよ。うん。


 とりあえず、教本に従い薬草をすり潰して汁を搾る。あとはこいつを魔法をかけながら鍋で煮る……ポーション鍋という、専用の魔法陣を組み込んだ魔道具が必要らしい。先に書いとけよ。段取り悪いなぁ。

 魔法陣は書いてあったし、すぐ作れるからいいけど。海賊のアジトにあった片手鍋をコピーして、魔法陣をプリント。えいえい、よし。完成。


「この魔法陣、色々と複雑な機能が組み込まれていますね!」

「そうなの?」

「はい、分離や抽出、成分の保存といった効果がありそうです。どれがどれだろう……」


 薬草をすり潰す作業ではあまり楽しくなさそうだったディア君だが、魔法陣を見て大はしゃぎだ。薬草を水と一緒に鍋に入れ、煮る。

 丁寧にアクをとり、アクはアクで別の素材になるらしいのでとっておく。今回は使わないけど。


「……ふぅ、すり潰したり煮込んだり、結構面倒ですね」

「ディア君はこういう作業あまり好きでない?」

「魔道具の回路や組み合わせを考えたりするのとは大違いです。いや、本来は魔道具を作るのもこういう地道な作業が必要になってくるんですよね……お姉さんのおかげで楽しい部分だけやってたのを実感してます」


 あー、そのへん私の空間魔法でサクサクやっちゃってたもんなぁ。インク作るのとか。

 木の板とかに魔法陣彫ったりインク流し込んだりするので失敗することがないのは、確実にディア君が魔道具熱と才能を高めている要因だよなぁ。


 自分が設計した魔法陣を魔道具として動かせた回数だけでいえば、ディア君ってばもしや駆け出しの魔道具職人よりも多いんじゃなかろうか。逆に、インクを作ったり彫ったりの本来必要なスキルは全く培われていない。魔法陣設計専門というこの世界的に超珍しい存在になりつつあるな。

 特化型、嫌いじゃないわ。


 ともあれ、煮込んだ薬草を濾してやればポーションベースの出来上がり。青みがかった緑色で、とても綺麗だ。

 ポーションベースに魔力を含んだ素材を加えてポーション鍋で煮込んで濾せば、様々なポーションになるらしい。


「魔石を煮込めば確実にマナポーションにはなるっぽい。ブレンドしたりで研究の幅が広そうだねぇ」

「魔法陣の方を工夫したら、特定のポーションを効率よく作れるようになりそうじゃないですか?」

「うん、そっちの方の研究はディア君に任せるよ。私はとりあえずマナポーション作って飲んでみるかぁ」


 試しにざらざらとゴブリンやオークの魔石を砕いたものを入れて、煮込んでみる。

 ……

 色がだいぶ青くなった。こんなもんでいいのかな? 試しに一口飲んでみよう。

 木さじでひと掬いして口に運ぶ。


「んん……苦い。あと全然魔力が回復しない……」

「ボクにも一口ください。……お、一口で結構魔力回復しますね」


 んんー? 私とディア君で反応が違う? どういうこと?


「でもこれ、瓶一本飲んでも空間魔法の転移1回分も回復しないよ? コピーとかしたら絶対赤字だって」

「……それは空間魔法の消費魔力が大きいだけなのでは?」

「はっ!?」


 【悲報】うわっ、私の魔力量、多すぎ!?【当然】

 チート魔法を使いこなす、神様謹製の私だ。器がデカすぎるのは当然だった!


「割合回復してほしかった……!」

「ポーションから魔力を補給するんじゃないってことですよね。それだと多分体に負担かかる薬になると思いますよ」


 おーう、それもそうだ。いざって時に未来の自分から前借りする感じの薬になるだろう。それは良くても栄養ドリンクと同様、常飲すれば普通に体に毒になりそうだ。



 完成したポーションを空間魔法で小分けにして仕舞う。ポーション用の瓶とか買ってなかった。今度買っておこう。


「でもお姉さん、それなら逆に、普通の魔法ならいくらでも使えるってことじゃないですか? カタログにあった魔法スキルとか」

「おお。そのための魔法スクロール。なるほどなぁ……」



 ……そうだ。逆にそんな私の体を素材にしたら、どのくらい魔力回復するポーションが作れるんだろう。思い立ったが吉日、私は自分の胸肉の一部をコピーして、細切れにしてポーションベースにぶち込んでみた。

 おー、すごい勢いで色が変わっていく。


「……お姉さん、今入れた素材はなんですか? 一気に青、青を通り越して紫、そして赤くなってますけど」

「え、私の肉」

「躊躇なく自分を素材にしないでくださいよ!?」


 コピーだからいいじゃんか。ねぇ?


「それにしても赤いポーションかぁ……ディア君、これってマナポーションだよね? 最初青くなったし」

「え、さぁ……? 少なくとも、マナポーションは青いって教本に書いてありますけど」

「所詮は初心者向けの入門書。きっと上級書には赤いマナポーションだってあるんだよ。うん、きっと」


 真っ赤になったところで完成として、空間魔法で小分けにする。

 ポーション用のガラス瓶、今度買って来ようかな、映えそうだし。


「なんかニオイ嗅ぐだけで魔力があふれるくらい回復しそうですね」

「まぁ、これ全部飲めば私でも多少は回復しそうだねぇ。コピー1回分には満たないけど、他の空間魔法だったら数回分くらい」


 効率は悪いけど、魔力使いすぎてクラッとしたときに飲めば多少マシになるだろう。

 魔力が余った時に取っておくには丁度いいかもしれないね、カリーナちゃんポーション。


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