やってきましたダンジョン


 というわけで、やってきましたダンジョン。

 本日はサティたんは抜きで、3人での攻略だ。なにせ初連携だし、どんなもんなのかなーっと。サティたんいない方が空間魔法全開にできて安全だしね。


 カルカッサの中央にある、内壁に囲われた岩山。そこにあいた洞窟から下へとダンジョンは広がっている。

 ダンジョンは洞窟タイプのダンジョンであり、中にモンスターが生息している。

 内壁の門には受付があり、そこで冒険者ギルド証を見せると入場できる。


「なぁ嬢ちゃんたち。そんな装備で大丈夫か?」

「大丈夫だ、問題ない。ここのダンジョンは防御よりも回避力のが大事っぽいし」

「まぁ分かってるならいいけどよ。入場料は一人中銅貨1枚だ」

「あいよ」


 ただし奴隷のアイシアは道具扱いで私の付属品として無料だった。

 そんなアイシアは私のリュックを背負わせてポーターとした。実際の中身は空間魔法に収納しているわけだけど、一応見せかけだけね。



 ダンジョンの中は、まさしく岩むき出しの洞窟だった。

 とはいえ剣を振り回すのに不都合がないくらいには広く、足場もしっかりとしていて比較的平坦。槍だったら流石に引っかかるかもしれない。

 不思議と洞窟内は暗くなく、明るい。別段明かりを持っていなくても探索ができそうだが、見通しはよくない。自分の周囲だけが明るく見える不思議な感じ。


 ダンジョン内に足を踏み入れると、ふわりとした湿度ある空気が漂っていた。もしかしたらすぐそこから、曲がり角、天井や床からでも魔物が出てきて襲い掛かってくるかもしれない不安混じりの空気。

 実際、床の端にはキノコが生えていて、これは成長するとマイコニドになって歩き出すそうだ。

 ……このキノコ、何を栄養にして育ってんだろうね? マナとかそういうやつ?


「ね、今更だけど、ディア君って戦えるの?」

「本当に今更ですね。一応、嗜み程度には魔法が使えますよ。ダンジョンなら火魔法が良いでしょうか?」


 と、ディア君は50センチくらいの、警棒程度の長さの木製杖を取り出した。先端には宝玉がついている。どこで手に入れたの? あ、クミンさんから預かってたと。

 魔法使いってそういう杖使うもんなんだ、知らなかった……


「あるじ様。魔法の杖はめっちゃ高いです。魔法触媒っていうやつです」

「そうなの? え、どんくらい?」

「ええっと、金貨1、2、3……いっぱいです!」


 うーん、アイシアは『3より上の数値はいっぱい』の民であったか。

 サティたんが商人でバリバリ計算できるので似たようなもんかなと思ってたけど……そうか、この世界には義務教育とかないんだもんなぁ。


「これは金貨7枚くらいの杖だったかと思います。使う魔力が半分以下になるので倍の魔法が使えるんですよ」

「わあぉ。お高いのね、ディア君」

「そんなでもないです。魔法杖の中では安い方ですよ」


 うん、お高いし貴族様の感覚だねそれは。庶民の私にはお高いのよ。



「あるじ様は治療だけじゃなくて戦闘もできるんですか?」

「そういえばボクも、カリーナお姉さんが戦うのを見るのは初めてになりますね。倒した獲物は見た事がありますが」

「うふふ、前衛と後衛と中衛はまかせてもらってもいいよ! あ、索敵や荷物持ちも得意だよ!」

「それってつまり全部じゃないですか」


 うん。元々ソロでなんでもできる空間魔法使いだもの。


「ま、今日はダンジョンの様子見だもの。二人に何ができるかの確認も兼ねてる。サティたんと一緒に行くときは今日の内容を踏まえてちゃんと役割分担しようね」

「あるじ様が守ってくれるなら安心ですね!」


 そうそう。私が守るので、絶対安全に試せるんだよ!

 不意打ちだって許しはしないさ。


「アッチにクロウラーが1体いるから、まずは私の力を見せるべく倒してみせようか」


 空間魔法にかかれば索敵なんて息をする程に容易い。

 というわけで、初モンスター、クロウラーだけど……わぁ、思ってたよりデカイ。中型犬くらいあるぞ。がぶがぶと地面に生えたキノコを食べている。

 雑食らしく、冒険者にも麻痺毒で襲い掛かってくるそうだ。


「どうやって倒そうかなぁ。輪切りにする? 頭潰す? それとも神経切断で外傷のない綺麗な形に?」

「では、輪切りに?」

「ほい」


 指をパチンと鳴らすと、クロウラーが輪切りになった。ぷちゅ、と体液が切断面から溢れる……これ麻痺毒混じってんのかな。


「す、すごいですあるじ様! 表皮の硬い部分も綺麗に切断されています!」

「……お姉さんの魔法の腕前は知ってたつもりでしたが、生物相手にも普通に通用するんですね」

「むしろ生物をいたぶる魔法……いやなんでもない。師匠が良かったからね」


 神様のチュートリアルのおかげで戦闘方面はバッチリだ。


「次はディア君戦ってみて。アイシアはどうする?」

「私は戦えません。荷物持ちに徹します。吟遊詩人スキルを使えば索敵なら少しできるんですが、あるじ様には及びませんし」

「お。エコーロケーションってやつ? いいね、それじゃあ次からアイシアに索敵してもらおうかな」

「いいのですか? あるじ様が索敵された方が多分安全ですよ」

「私はなんでもできるから、余った仕事をやることにするよ。それとも全部の仕事を私にやらせて楽をさせてくれない気かな?」

「め、滅相もありません! では、索敵をさせていただきますねっ!」


 うむうむ、よろしく頼むぜよ。


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