嘘くさっ
私カリーナちゃん。神様の嘘くさい言葉を神託されたの。
……おっと、時間が止まっている。神様タイムか。そういや神様わりと気軽に時を止めたりするなぁ。マジ時空神。
『いや嘘じゃないですって。マジで』
「ほんとぉ?」
『だってそもそもサティたん、お姉さんのこと一切探してないですし。探してたらソラシドーレで見つけてるはずじゃないですか』
んん?
言われてみればそうかもしれない。だって、アイシアがソラシドーレに売られたのは先月。私がサティたんと飲み明かしたあの日もアイシアはソラシドーレにいたわけで。
サティたんがアイシアを探していたのなら、運命の皮肉と言わざるを得ないほどのニアミスだ。
『多分エルフの国に入るときにお酒目当てですっていうより姉を探してますって言った方が許可が下りやすいと思ったんじゃないかなって』
「あー。サティたんならあり得る」
『でもそこがぁー? そういう計算高いところがー?』
「可愛くて好きー!」
いえーい、とエアハイタッチ。
『アイシアちゃんはご本人登場のノリで会わせてあげたらいいんじゃないですかね』
「あ、アイシアは本当にお姉ちゃんなので?」
『本当にお姉ちゃんですよ。あ、それと大事なことを伝えておきます。心して聞きなさい』
む、なんだろう。と身構える。
『サティたんが今履いてる靴下はカリーナちゃんが作った複製品なので私に捧げないように! でもカリーナちゃんが自分用として確保する分には一向にかまわん!……いじょっ、
そこ大事???
……神様的には大事なんだろうなぁ。うん。ブレないなぁ。
動き出す時間。
うーん、神様の最後の一言ですっかり気が抜けてしまった。
というか自分用って。私に臭い靴下を愛でる趣味は……あれ、なんだろう。サティたんの臭い靴下を想像しただけで胸がドキドキする。
そういや性癖を本能レベルに仕込まれてたっけ私……おっふ。ということは素で100点を叩きだすサティたんの靴下は私にとって極上の
……それも悪くないなって気がするのがなんか嫌ぁーーー!!!
そんな風に私が若干落ち込んでいると、宿にアイシアが入ってきた。
「あ。あるじ様! おかえりなさい!」
「お、アイシア。戻ってきたんだね。そっちこそおかえり」
周囲の食事処を確認してきたアイシア。よしよしと頭をなでてあげる。
……サティたんのお姉ちゃん、かぁ。この無邪気な感じ、サティたんだったら演技なんだろうか……うん。まぁそれはそれでアリだな。あざと可愛い。
「そういやアイシアの妹が来てるよ」
「え?……どの子でしょう? パステル? ガーナ? サティ?」
「サティたんだけど……他にも妹いるんだ?」
「ちなみに弟も2人、姉は4人、兄は3人います」
めっちゃ子沢山だなドワーフ!?
「ああいえ、部族単位でみんな兄弟姉妹なんですよ、ドワーフって」
「あー、そういう」
「なにせ皆で酔ったら誰が誰とナニしたかとか分かんなくなりますからねぇ。多分私のお父さんも旅の吟遊詩人だと思うってお母さん達が言ってました」
めっちゃ奔放だなドワーフ!!
そりゃ誰が産んだ子かとか関係なく、皆の子供という括りで兄弟姉妹になる感じにもなるわ。
「まぁとりあえず来てもらっていい?」
「はい、あるじ様。あるじ様に仇なすなら妹といえど容赦しません」
「大丈夫お友達だから。なんか、一応アイシアのこと探してるらしいよ?」
「あ、それ多分嘘ですね。基本的にお酒のことしか頭にない子なので」
性根バレとるやんサティたん。
そんなわけで、私はアイシアを連れて部屋に戻った。
そして、感動のご対面!
「ただいまーサティたん。お姉ちゃん連れてきたよー」
「あ、おかえりカリカリ……え?」
私の方を見て、驚愕に目を見開くサティたん。
「……サティ! 久しぶりですね!」
「あ、アイ姉ぇ!? な、なんでここに……あ、ちがう。会いたかったよぉアイ姉!」
わーん、と泣きながらアイシアに抱き着くサティたん。
しかし私は見た。その目には一切涙が浮かんでいなかったのを!
「ちょっとカリカリこれどういうことぉ? ガチで本人じゃん……生きてたなんて聞いてないよぉ。しかもなんでここにいるわけ?」
「シラナイヨー。マッタクノ、グウゼンダヨー」
「嘘くさっ」
神様の真似したけどやっぱり嘘くさかったか。知ってた。
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