チガウヨー
「カリカリ、その子が知り合いのエルフさん?」
「うん。ディア君っていうの。ディア君、こっちはサティたん。私のお友達の酒商人」
「初めまして。ディアと呼んでください。……サティタンさん?」
「サティでいいですよぉ、初めまして。ディアさん」
ぺこり、と丁寧に頭を下げるサティたん。
「どうしたのサティたん!? 何か悪いものでも食べたの!? 超普通!」
「私だってちゃんとする時はするよぉ。それにこっちはお願いする立場なんだから、失礼があっちゃいけないでしょ?」
「ああ、楽にしていいですよ。お姉さんのお友達のようですし」
にこやかにそう言うディア君。でもサティたんはすぐにはしっかりモードを解かない。
これが商談するサティたん……凛々しい、好き!
「とりあえず立ち話もなんですし、部屋に行きますか?」
「あ、じゃあ私もここで部屋取っておきますので――はい、では行きましょうか」
「エスコートは必要ですか?」
「大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
……ディア君もなんか真面目だぞ!? なぁ、私置いてけぼりになってない!?
ともかく私たちの部屋に入ると、ベッドがひとつだけの狭い部屋だった。
「立ち話もなんだけどって言ってたけど、ベッドくらいしか座るとこないね」
「……そうですね、椅子でもあればよかったんですが」
「あー、その、お気遣いなく?」
ひとつのベッドにふたつ用意されていた枕をチラッと見てサティたんが言う。
多分私とディア君の分ってことかなその枕。
ん? ってことはディア君と同衾すると思われてる!?
「ちがうのサティたん! ディア君は観賞用だから! 私、女の子の方が好きだからね!?」
「え? あ、うん。それは知ってるけど」
「ちょっとまってね椅子借りてくる!――借りてきた!」
「早っ」
尚、廊下に出て収納空間の中に入っていた椅子を取り出しただけである。
狭い部屋の中、改めて椅子に座って話をする私達。
「それで、エルフの国にどのような用件で?」
「ええ、実は私、姉を探していまして」
「え、サティたんお酒を求めて世界中行商してるんじゃなかったの!?」
「……それもあるんだけど、実は行方不明になった姉を探してるんだよぅ。嘘だと思うなら冒険者ギルドで聞いてきたらいいよ、情報収集の依頼だしてるから」
なんと! 受付嬢に返していた銀貨が依頼料とかなんだろうか。
「なんだよぅ、言ってよ水臭い。私だってサティたんのお姉ちゃんなら張り切って探しちゃうよ?」
「ん、ありがとねカリカリ。その、種違いの姉でハーフドワーフなんだけどね」
「ふむ、ハーフドワーフ」
「吟遊詩人をしてたんだけど、3年前に急に音信不通になって」
「へー、吟遊詩人……ん?」
「名前はアルディスーラー……アイシアっていうんだけど」
……凄い偶然もあったもんだね? 丁度うちの仲間に元吟遊詩人でハーフドワーフの奴隷で、アイシアって名前の子がいるんだよ。
「多分、流石にもう死んでると思うんだ。だけど、諦めきれなくて……もしかしたら、姉はエルフの国で生きてるのかもしれない、一縷の望みに賭けたいんだ」
「お、おう。そっかー、サティたんのお姉さん……」
「ディアさん。どうか、姉を探すためにエルフの国への入国許可を取り付けられないでしょうか」
真剣な面持ちで、頭を下げるサティたん。
「……あの、カリーナお姉さん」
「ちょっとまって。確認してくる」
「あ、はい」
私は部屋を出た。
宿屋なら大抵簡易祭壇こと神棚がある。あったあった。さーてお祈りしますかね。
――神様神様ぁ? これは神様の導きってやつですか?
『チガウヨー。マッタクノ、グウゼンダヨー』
嘘くせーーーーーー!!!
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