『胸を貸す』(物理)
「あー、あー。……声、もう少し高くできますか?」
「んー、声帯のここを弄って……どう?」
「あー、あー。……ばっちりです、ありがとうございます、あるじ様!」
アイシアの喉をチューニングする。元吟遊詩人なだけあって、こだわりがある様だ。
「……私が定期的に診ないと、どうなるか分からないからね?」
「はい。一生ついていきます、あるじ様」
「うんうん、一生お仕えしてねアイシア。いいこいいこ」
「えへへ、あるじ様」
よしよし。これで私を裏切ったら喉がどうなるか分からない。大切な喉を人質にして私に縛り付けることができるだろう。フフフ。
そして顔はほとんど修正必要なかった模様。元より少し美人になったかもしれないそうな。
まぁサティたんを参考にしたからね! サティたん超かわいい上に私の思い出補正が入ってるもの、可愛くないわけがないっ!
「……あ、ディア君だって可愛さじゃ負けてないぞ! 拗ねても可愛いっ」
「いや、ボク別に……拗ねてませんし」
拗ねてるじゃん。かわよ。可愛くて良い、略してかわよ。
尚、犯罪を犯さないようにするあたりは教育済みだった。
教育ってそういうのも含まれていたらしい。ここ教育しておかないと「犯罪を犯すな」と命令しても何が犯罪か分からず効果が出ないことも多いらしい。
まぁ流石に六法全書を全部覚えさせるみたいなことは無理なので、あくまで常識レベルの範疇までで穴はあるけれど。教育済みで助かった。
「嫌な事は嫌だって教えてね。それでも仕事はやらせるけど、改善しても良い事は改善するからさ」
「はい。お心遣い感謝します、あるじ様」
ぺこり、と頭を下げるアイシア。うんうん、従順だね。さすが奴隷っこ。
あ、部屋も作らなきゃだね。
とりあえずどこに作ろうかなー。
「え、部屋を頂けるんですか?」
「見ての通り、場所はいくらでもあるし、いくらでも増やせるからね」
「あるじ様の部屋の中で常にお仕えさせていただいても」
「じゃあ私の部屋の向かいね!」
連れ込んでエロい事するかもだけど、それとは別にプライバシーとプライベートは重要だからね!!
気分じゃないときに来られても困るし……?
「あー、気兼ねなく歌の練習ができるよう広い部屋にしてあげよう」
「ありがとうございます、あるじ様」
まぁどうせ防音は完璧だからそれほど広くする必要もないけど、狭くする必要もないからね。
「……それで、アイシアには何をさせるんですか? 普通に奴隷にさせるような仕事ってここでは必要ないですよね」
「あー、うん」
通常、身の回りの雑務をさせるのが奴隷というものだ。例えばお風呂のお湯を沸かして湯船に運ぶ、なんてのは奴隷にやらせる仕事なわけだ。が、そこらへん空間魔法で全部やれちゃうので仕事がない。
ディア君の質問には、アイシアを買うときに思いついたアイディアを伝えておく。
「私の身代わりだよ。あまり有名にはなりたくないから、あれもこれもアイシアの仕業にしようかとね。治療関係とか。仮面とかはつけさせるけど」
「なるほど、アイシアさんをカリーナお姉さんの『仮面』にするんですね」
「そういうこと。最初の一回はアイシアを治したことにしないとだから私が仮面付けてやるけどね」
名前はダミーナ・ニセイシャ……いや、もっとそれらしい名前をディア君たちに考えてもらおうかな。私のネーミングセンスってばアレだし。
「そうなるとアイシアさんの胸が足りませんね。詰め物させるんですか?」
「いや、ここは私の胸を隠すよ。こうして、こう」
すぽんっと胸を空間魔法につっこむ。外側、つまり服の上から見ると真っ平に。アイシアよりも小さいな、逆に詰め物した方が良いかもしれない。
「お、お姉さんの胸が消えた……!?」
「ふふん、空間魔法で部屋に置いてあるだけだよ。こっちの方がバレないでしょ」
なにせ詰め物で増やすのは簡単だが、身体にあるものを消すのは難しい。
切り落としたら治すのが面倒だしね。痛いし。……スースーするなこれ。
「びっくりしました……そういうこともできるんですね」
「なんならディア君に胸を貸そうか? てい」
パチン、と指を鳴らし、ディア君の平らな胸に私のおっぱいを生やす。
これぞ空間魔法の秘技、『胸を貸す』(物理)である!!
きゃぁー、ロリ巨乳エルフ! 私サイズでも土台が小柄だと巨乳に見える!
それにおっぱいが寒くない! 胸を隠すときはディア君に預けとくのアリだな!
「ふぇっ!? これ、え、ボクにおっぱいが!? わっわ、下が見えない」
「ひひゃっ!? あ、ちょ、ディア君!」
ぱふん、とディア君はおっぱいを下から支えるように持ち上げた。ぷにゅっと。
しかしそれは私のおっぱいで、しっかり繋がってるわけで……!
あ、だめ、もみゅもみゅと柔らかさを堪能するような触り方だめだってそれ!
「え、うわー、柔らかくて温か……うわぁ……すごい」
「あ、あの、ディア君。ちょっといい?」
「はい、なんでしょう?」
「ひゃんっ! あ、あのね。それ、私に繋がってるんだ……んくっ」
「えっ?……あ! ご、ごめんなさい!?」
くっ、ふぅ、危なかった。何か目覚めてしまう所だった。
今のは男に『自分の胸におっぱいがあったらつい揉んでしまう習性』があるのをうっかり忘れていた私が悪いな……!
誰だってそうする、私だってそうする。した。毎日起きるたびやってる。
……そうだ、これと同じ方法でディア君のディア君を切り離せばより女の子っぽくなるのではなかろうか? 今度試してみよう。
尚、その後改めて相談したところ、別に治癒士の紹介とアイシアの完治報告を一緒にしなければいいだけではないかということで、ディア君に胸を貸す必要は一切なかったとだけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます