ただの商談でしたよ?
私カリーナちゃん。
ハルミカヅチお姉様との商談が長引いてしまい、気付けばすっかり夜だったの。
「あちゃー、ちょっと張り切りすぎた……でもお姉様の綺麗で可愛い姿を堪能できたのでよし!」
いやまぁ、ただの商談でしたよ? ホントホント。ちょっと上の個室で身体張った実演販売を行っただけですわ。お姉様の唇柔らかかった。でへへ。前回は記憶なかったから、実質初体験だよぅ。
あ、売ったヤツはちゃんと素材消費して作ったやつだよ。海賊から奪った素材だけど、試作品でまだ個人取引の範疇だからセーフ。
ちなみにお姉様にも「これはすぐ真似されるだろうね、単純だし」と言われてしまった。そして「最初にいっぱい作っておいて売り抜けるのが良さそうだ」と商人目線のアドバイスもいただけた。お姉様優しい。好き!
……まぁ真似されるならそれでいいのよ。それでマッサージ器具の自由競争が始まれば、私が作るより優れたマッサージ器具が生まれるかもしれないね。
あくまでマッサージ器具、というか魔道具を作るのは趣味と割り切ろう。
そもそも商人の仕事は売り買いであって、作るのは職人の仕事だものね。カリーナ・ショーニンちゃんは商人なのよ。
っと、それはさておきディア君を迎えに行かねば。
むん、空間魔法!……冒険者ギルドにいるな、よし。ダッシュで向かうぞ!
「ディアくーん! ごめーん待たせたねぇ!」
「あ、カリーナお姉さん。おかえりなさい、商談は終わりましたか?」
にこっと笑顔で私を出迎えてくれるディア君。くっ、すまない、最悪朝帰りになる予定だったのっ! ああ眩しいっ!
「うん、バッチリ終わったよ。あ、ディア君と作ったマッサージ器、ワンセットで銀貨5枚で売れたよ」
「そんな高く買い取ってもらえたんですか? 嬉しいです!」
「次はこれを元手に材料を買って、作って増やして売りさばくよ! まぁ売れるのは模造品が出るまでだろうけど、ちゃんと分け前は渡すからね!」
ディア君開発する人、私増やす人。
売る分の材料は複製しないけど、材料の加工を空間魔法で省略するのはセーフだね!
「おうおうカリーナ。随分ゆっくりしてたじゃねぇか、俺らには挨拶なしか?」
「おお、先輩ありがとう。マスター、先輩達に水とディナーを。あ、私とディア君の分も合わせて5人前で」
「酒じゃねぇのかよ」
「だって昼から飲みっぱなしでしょ? そろそろ水のがいいよ」
「それもそうだな。気が利くじゃねぇか」
わっはっは、と仲良く笑う。ハルミカヅチお姉様のおかげで懐は温かいので先輩達に飯奢っても痛くも痒くもないのだぜ。
「わぁ、このサンドイッチ、野菜がシャキシャキしていて美味しいですね。バターもいい香りです」
「なぁディア。エルフってのは肉を食わないって聞いたんだが。それハム入ってるぞ」
「やだなぁブレイドさん。お肉くらい普通に食べますよ、それはデマです」
ディア君、すっかり先輩と打ち解けて……一抹の寂しさを感じる! 自分を慕っている妹が自分の友達と仲良くしてほっとかれる感じ!
「シルドン先輩、セッコー先輩。ディア君どうでした?」
「礼儀正しい良い子だな。ブレイドの『良い冒険者になる』が10回は出た」
「ねぇカリーナちゃん、あの子本当に男なの? 仕草的に女っぽさ感じるのは気のせい? コテッと首を傾げたりするところとか、スカートの中見られないように足閉じて座ったりするところとか」
ほほほ、教育の賜物ですわね。
「そうだ。奴隷商、後任が決まって今運営再開してるよ。しかも大量入荷があったとかで掘り出し物が多くいるかもしれない」
「お、マジすかセッコー先輩。良い奴隷いるかな……訳アリ美少女。値段だけでも見ておきたいなぁ」
「美少女……奴隷……うっ、頭が」
「シルドン先輩、乙っす! 私はその屍を乗り越えていく!」
ちなみに大量入荷の訳は錬金王国。難民が生き延びるために自身を売ったり、家族に売られたり、所有している奴隷を売り払ったりとかなんとか。
錬金王国に一番近いこの町の奴隷商はそんな人たちで溢れかえっているらしい。
奴隷商自身が入荷した奴隷を整理しきれていない今こそ、掘り出し物を見つける大チャンス! 乗るしかないこのビッグウェーブに! ディア君の生活費に手を付けることもやぶさかではない!
私はディア君にこっそり内緒話する。
「ねぇディア君お金貸して! ちゃんと稼いで返すから! なんなら身体で返すから!」
「……普通に使ってくれてかまいませんから。お姉さんがボクの生活費と言ってるだけで、最初からお姉さんのお金みたいなもんですし」
きゃーディア君優しぃー!
「あ、でもそっか。ボクがお金を貸したという体裁をとれば、新人商人なのにどこから奴隷を買うお金が出てきたのか、という説明になりますね。さすがお姉さんです」
「うんうんそんな感じ?」
ごめんそんなこと全く考えてなかったや。まぁちゃんと返すから安心してね!
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