色々と教育に悪すぎるんだ!!


 ディア君のランクがEになったところで、私は改めてブレイド先輩にディア君をお任せすることにした。


「ディア君。私は商談を済ませてくるから、その間ブレイド先輩に冒険者の何たるかを教わっておいてよ。お酌すると色々教えてくれるいい先輩だよ、私が保証する」

「おいおいカリーナ、俺らに子守をしろってか?」

「へいマスター、先輩方に酒とツマミを。あ、ディア君のご飯代も置いときますね」

「任せろカリーナ。俺達がバッチリ面倒見ておいてやる」


 話が早くて好きよ。


「よろしくな、ディア」

「よ、よろしくお願いします。ブレイドさん」

「あ、ディア君に手ぇ出したら後が怖いから気を付けてね」

「人の女には手ぇ出さねぇよ……いや男だっけ。どっちにしろ出さねぇよ」


 ならいいけど。私は冒険者ギルドを後にする。

 そして向かう先は――もちろんローションの納品先、シュンライ亭である!


 すまんなディア君、これから行くシュンライ亭は色々と教育に悪すぎるんだ!!

 大人のお店なんだ!!

 もしかしたらうっかり朝帰りになるかもだけど、先輩ならきっと任せられるから!!


 そんな軽い足取りでシュンライ亭にやってきた私。

 まだ日が高いので開店はしていないが、私はローションの納品に来たのだ。裏側の勝手口からコンコン、すみませーんと声をかける。


「おや。カリーナ。アンタかい、無事戻ってきてたんだね」

「ハルミカヅチお姉様! お久しぶりです、ちゃんと戻ってきたしローション仕入れてきましたよー」

「ほぉ、そうかい。まぁ入んな。酒は出せないけど茶くらいなら飲ませてあげるよ」


 えへへ、相変わらず顔がいい。性格もいい。そしておっぱいにおみ足。

 ハルミカヅチお姉様の後ろについて店内へ入る。目の前に揺れる色艶のいい狐尻尾はあまりにも誘惑が強すぎる。もふりたい、吸いたい。でも怒られるだろうから我慢……!


「さ、見せてみな。粗悪品じゃないだろうね?」

「はいどうぞ」


 私は33袋のローションを取り出した。テーブルがいっぱいになった。


「……仕入れてくれとは言ったけど、こんなに買ってきたのかい」

「多い方がいいかなって」

「確かに何個までとは言わなかったけどねぇ。どれ、中身は……ふむ」


 お姉さまは指を軽く唾で濡らしてからローションの粉をつけ、ペロリと舐めた。

 ふむふむ、と吟味している。緊張するなぁ。


「極上品だね……これを1袋銀貨1枚じゃぁ儲けにならないだろう?」

「まぁ、ほぼ仕入れ値と同額ですね。交渉して少しオマケしてもらった分が儲けって感じで」


 というか普通なら輸送費とか人件費にあたる部分で大赤字だろう。


「……アンタ商人向いてないんじゃないかい? アタシゃ何かのついでに2、3袋買ってきてくれればいいかなって思って言ったんだが。なんなら多少混ぜモンしてかさましするもんだろ、こういうのは」

「いやぁ、お姉様の依頼だから全力で応えたくて!」

「ったく、仕方ない子だねぇ」


 やれやれ、と肩をすくめるハルミカヅチお姉様。


「……これなら量をケチってもいいくらいだから、3袋で銀貨4枚、全部で銀貨44枚……キリよく45枚の買取りにしてあげるよ」

「え、いいの? わーいお姉様太っ腹!」

「あぁン!? アタシのこの引き締まったお腹が太いって!?」

「すみません!」


 私は土下座する勢いで謝った。女性に太っ腹はなかったな、うん。


「でもホントにいいんですか? 銀貨45枚なんて」

「何、気にすんな。多少周りの店に配ってやればこれでも元が取れるさ」

「はぇー、そういうもんなんですね」

「ほら、アタシの気が変わんないうちに取引終わらせちまうよ」


 商人ギルド証を使い、お金をやり取りする。これにて納品完了だ。



「あ、そうだ。お姉様、こういうの作ってみたんですよ」

「ん? なんだいその珍妙な玉付き棒は」


 私はマッサージ器具を取り出した。至って健全なやつである。

 ディア君に作るのを手伝ってもらったやつである。

 全くエロではないやつなのだが、私はこの店にあるべきだと確信している。


「この棒の使い方はですね……ここがスイッチで、震えるので……」

「ふむふむ?……へぇ、震える魔道具ねぇ。デンマっていうのかい、確かにこりゃ肩に効くねぇ。胸重いと凝るから割といい具合だ」

「ちなみに肩以外に当ててもいいんですよ。例えば……」

「……あン? ま、待ちなよ。これをそんな……!? い、痛くないのかい?」

「試してみます? あ、これを小型化したやつもありましてねぇ、まぁ今のとこは試作品が数個しかないんですが……」


 実演をふまえてお姉様に熱烈アピールしたところ、試作品ワンセットを銀貨5枚でのお買い上げとなった。やったぜ、これでちゃんと仕入れた材料で作って売り物にしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る