ソラシドーレよ、私は帰ってきた!
私カリーナちゃん! ソラシドーレよ、私は帰ってきた!
まずは門でチェックだ。ディア君は最悪私の
「ちーっす門番さん。行商人のカリーナ・ショーニンです」
「ふむ、商人ギルドの行商人だな。……ん? そっちの少女は連れか? 身分証を見せてくれ」
「えっと、どうぞ」
「……! こ、これは失礼いたしました! お通りください!」
ディア君が胸元から出したペンダントを見ると、明らかに私と違う態度で門番さんは快く通してくれた。
多分貴族のやつなんだろうなぁ。私の荷物もノーチェックだ。中身見られてもいいようにしておいたんだけど。まぁ仕入れたのローションとマッサージ器具だけだけど。
「じゃ、早速冒険者ギルド行こうか」
「はいっ、お姉さん!」
私はディア君の小さくて柔らかな手を取り、冒険者ギルドへと向かった。
* * *
冒険者ギルドの扉を開けると、中はそれなりに冒険者たちで溢れていた。
そして注目の集まる私のおっぱい。だからバレてんぞ……いや、これディア君見てんな。まぁ可愛いエルフっ娘だもんな。男の娘だけど。
「へぇ、冒険者ギルドって初めて来たんですがこんな感じなんですね」
「ヴェーラルドのも同じ感じだったよ。あ、ブレイド先輩だ。おひさー!」
丁度酒を飲んでるブレイド先輩達を発見。声をかける。
「おうカリーナ。ヴェーラルドから戻ったか、心配はしてなかったけど元気そうでなにより……って、そいつは誰だ? 隠し子か?」
「うん、私の可愛い子供――って、んなわけないでしょ。この私にこんな大きい子供がいるように見える?」
「見えねぇな、見たところエルフっぽいし……奴隷ってわけでもなさそうだが、ワケありか。そいつもとんでもなかったりすんのか?」
「ふふん、ディア君はね……ご覧の通り、めっちゃ可愛いんだよ! 超賢いし癒されるしで最高じゃね? ということで私の仲間にしたの」
「お、おう。確かに可愛いな。……俺ぁブレイドってんだ。よろしくな」
「あ、はい。ディアと言います。よろしくお願いします」
ぺこり、とブレイド先輩達に頭を下げるディア君。
「じゃ、早速冒険者登録してパーティーになろうねディア君!」
「なぁカリーナ。少し気になってたんだが、女の子を君付けで呼ぶのは」
「あ、ボク男です」
「……おう。その、なんだ。どうせカリーナの仕業なんだろうが、嫌になったら言ってくれ。匿うくらいはするから」
ディア君の一言で瞬時に状況判断を行ったブレイド先輩。
なんだよぅ、私が諸悪の根源みたいに。
ともあれ、ディア君の冒険者登録はあっという間に済んだ。
ちゃんとした身分証を持っていたし、登録料も払えたので最初からFランクだ。
このままパーティーを組んでしまおうと受付嬢さんに話しかける。
「パーティー名は何になさいますか?」
「おおっと。……ディア君、なんかいいのある?」
「ええ? そうですね。行商をメインでするということで、フェイカーズなんてどうでしょうか。行商人という意味です」
「お、よさげじゃん。じゃあフェイカーズで」
「かしこまりました。では手続きをしてきますね」
と、受付嬢さんが離れたところでディア君がそっと私に耳打ちする。
「フェイカーには『騙す者』という意味もありまして。まさに裏の顔のあるカリーナお姉さんにピッタリかなって」
「マジかよ、さっきの一瞬でそこまで考えてたの? すっご、天才かよ……」
「……すみません。実はずっとパーティー名について考えてました」
「なんだよそれ私とのパーティー組むの楽しみだったってか? 可愛いかよ……」
かくして、私とディア君はパーティー『フェイカーズ』を結成した。
さて、サクッと儲けてディア君もEランク昇格させておきたい所存。
木こりは……あ、買取価格ガッツリ下がってる、半額だ。……本業で木こり冒険者やってる人に悪いし、これ以上はやめておこう。
儲かりそうで簡単な依頼ないかなー。他の人には難しくて私たちには簡単だとベストなんだけど。ん? ワイルドボアの討伐?
一昨日くらいに狩ったイノシシかな。納品しとこう。討伐証明部位は牙、可能なら毛皮の納品求む、か。ふむふむ。
「すみませーん、これたぶん狩ったんですけど、見てもらってもいいですか?」
私はイノシシの毛皮と牙を納品することにした。
「はいはい……あ、はい。間違いなくワイルドボアの牙と毛皮ですね。……剥ぎ取りは雑でお肉がいっぱいついてますが毛皮に目立った傷はなく、鮮度的にも最近のもの……えーっと、毛皮の納品を含めると報酬が大銀貨2枚で……えっと。パーティー的に一人当たり大銀貨1枚になりますねぇ?」
「あ、じゃあもしかして?」
確か一か月で銀貨1枚稼げばEランク昇格である。
「はい。その、一応ディアちゃんのランクアップが可能ですが……します? あからさまに引き上げ感があっておススメはしませんけど」
引き上げ、いわゆる冒険者ランクのパワーレベリングだ。箔をつけたい貴族がたまにやるそうだが、ランクだけ上がって実力を伴わない冒険者になるため推奨されない行為ではある。
そして事実、ディア君は貴族っぽいし、討伐は私一人でやってた。うん、引き上げ以外のなにものでもないなコレは。
「うーん、私とランク揃えるってことであげとこうか。ま、所詮見習いのEランクだしそれほど問題にはならないでしょ。ディア君、いい?」
「……まぁ、カリーナお姉さんと一緒でしか冒険者しないと思うので。上げてください」
「かしこまりました。Eランク昇格おめでとうございます」
かくしてディア君は登録からわずか1日でEランク冒険者となった。
最速記録かどうかといえば、まぁ最速ではあるけど引き上げだとたまにある話であり特筆すべき記録でもないそうな。まる。
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