げぇー!? バレてるぅ!?
よし。ここはコッソリと正体を隠しつつ相談だな!
というわけで私は仮面で顔を隠し、通りすがりの不審者として礼儀正しく挨拶し、警戒して遠巻きに見られている間に聞きたいことを聞いて、さっさと帰るスタイルで行こう。
私、カリーナちゃん! 仮面を装着したから今は怪盗カリーナ! いざまいる!
……光学迷彩解除!
「失礼マダム。少々お時間よろしいか?」
「ん?……なんだい、アンタ、どうやってここまで入ってきた?」
「ちょっと魔法で。ああ、危害を加えるつもりは今のところないのでどうかご安心を」
ぺこり、と演劇のような礼をする。オバちゃん達がスッとマリア婆の前に立ち、身構える。おう、やる気だね。護衛としては正しい立ち位置だ。
「実は先日、エルフの男の子に海賊に捕らえられた姉を助けてほしいと依頼されまして。海賊を問いただしたら、領主様のペットになっているとかで、何か知らないかなと」
「エルフ……あー、あの子かい。それなら安心しな、今頃国元に向かって移送中さ」
「え、そうなんですか?」
「国際問題になるからね、見舞金もたっぷり持たせてある。流石にエルフと戦争する気は無いよ……というか、海賊を壊滅させた魔法使いってアンタだったのかい、カリちゃん」
げぇー!? バレてるぅ!?
「なっななな、なにをおっしゃるマリア様。私はそのような美少女ではないですぞ?」
「こちとら裸見てんだ、そんな仮面で顔隠してもわかるさ。前領主夫人舐めんじゃないよカリちゃん。せめてもっとマシな仮面付けな」
「くっ、それはその、えーっと。はい」
やれやれ、と肩をすくめるマリア婆。確かに私だってマリア婆さんだってすぐわかったもんなぁ。ってか、前領主夫人かよマリア婆。そりゃ子育てのご利益もありそうだわ。
「こっちはこっちでエルフの男の子を探して返すように頼まれてるんだ。そしたら海賊どもが許可のある商船を襲おうとして魔法使いにやられたとか、船を沈められたとか、荷物は魔法使いに全部奪われたから知らないとかで……」
「あー、うん、その、お荷物お預かりしてます。エルフの男の子と一緒に」
「ならよかった。カリちゃんと一緒なら悪いようにはされてないんだろ?」
ええまぁ、女の子の格好をしてるくらいですね。
「ゴメスはただでさえ色々とやりすぎてたから、そろそろ処分する頃合いだったのさ。まさか最後にエルフに手を出すたぁね。カリちゃんがやってくれて手間が省けたよ。……ま、処罰は息子に任せるけど最低でも鉱山送りだ」
「あらそうなんで? 領主様と繋がってるから即釈放とかされるかと」
「ハハッ、そんな軟弱な育て方はしてないさ。もしそんなことしたらケツを蹴り上げて息子の方を鉱山送りにしてやるからね!」
私が手を出さなくても、ゴメスはもう手遅れだったらしい。
豪快に笑うマリア婆。マリア婆がそう言うならそうなんだろうな!
「でもマリア婆。なんでディア君――エルフの男の子をおいてお姉さんだけ先に?」
「……そりゃカリちゃん。荷物がすべて忽然と消えたなんて一大事だろ? すぐに見つかるアテがなかったし、まずはあのエルフっ娘を無事に返すことが第一だったのさ」
そもそもゴメス達は本来の守備範囲外まで出張って海賊していたので、非はヴェーラルドの方にあるらしい。
「すぐに鳥を飛ばして呼び戻させるよ。昨日のうちに来てくれりゃまだ居たんだけど。……姉が来たらそのディア君を返してくれるかい?」
「おっけ、じゃ、それまでは私の方で預かっとくね」
「助かったよ。コトがコトだけに
やれやれ、と肩をすくめるマリア婆。
「……ああ、それと、カリちゃんが破壊した神器『ポセイドン』についてなんだが」
「あ、うん、ゴメンね! それは返せないんだけど、大丈夫かな?」
「まぁなくても何とかなる。神の怒りに触れたとでも思って諦めるさ」
あっさりと引き下がる。いいのかな。
「錬金王国の二の舞はご免だしね」
「あ。その情報はいってるんだ?」
「当たり前だよ。私を誰だと思ってんだい?」
「公衆浴場で出会った子宝と子育てにご利益のありそうなお婆ちゃんかなぁ」
「違いないね」
ククク、と笑うマリア婆。
「マリア婆ちゃんのおかげで丸く収まりそうでなによりだよ」
「それが領主一族の仕事さ。ま、カリちゃんの強盗行為と不法侵入については不問にしてあげるさ。……ウチの兵たちじゃどうあがいても捕らえられそうにないし」
「わーい、ありがとマリア婆。おっぱい揉む?」
「それはまた風呂場でね。いまはこの子らも仕事中だし」
こうして和やかに事態は収拾するのであった。
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