逆にすげーよお前
私カリーナちゃん。ゴメスの海賊船で暴れたのち、神器ごと海賊船を徴収したの!
ついでにお風呂にするのに良さそうなボートを見つけたので試し乗りしてるところよ。
何故ボートをって? 湯
というわけでゴメスをからかった後、命乞いした船員を空間魔法で持ち上げる。
「誰が、誰がテメェなんぞに助けてもらうもんかよぉ!!!」
「ここまできてそう言えるの逆にすげーよお前」
しかしゴメスだけは命乞いをしなかったので誇り高く立ち泳ぎを続けてもらうことになった。がんばれがんばれー。
おっと、海中からデカいアナゴが急接近。シーサーペントってやつかアレ。あっ。
ゴメスが丸呑みされちゃったよ。あーあ。……って、『ポセイドン』の鍵もってるかもしれないんだった。回収しとかないと。
「……そういや、シーサーペントって食えるのかな?」
ゴメスを丸呑みしたシーサーペントを空間魔法でザバーっと空中に引き揚げる。
パチンッとシーサーペントの脳を切断し
腹の中のゴメスを食べる気はもちろんないので、腹を掻っ捌いて取り出してやる。ゴメスは、ぬちゃっとした液体に包まれて気絶していた。
ざばーっと海に沈めてシーサーペントの体液を洗い落とし、身ぐるみすべてを収納空間にポイした。……きたねぇ裸のおっさんだなぁ。
「いやぁ、こんな綺麗にシーサーペントに食われるだなんて。ゴメスは釣り餌としては優秀なのかもしれないね。どう思う?」
「ま、まさにそう思います姉御!」
「一生ついていきます姉御! 姉御が居れば百人力だ!」
「俺達を助けてくれてありがとうございます姉御。さあ、皆であの船を襲撃に!」
「ん? 何か勘違いしる奴がいるな。お前らは全員あの船に突き出すんだよ――はい黙れ」
騒ぎ出しそうだったので、連中の口を閉じておく。
シーサーペントとボートはとりあえず収納空間に突っ込んでおいた。
近くに浮かぶゴメスたちのターゲットだった船――かなり大きな商船に、ゴメス一味達を連れていく。
船に連れて行ってやるとは言ったけど、もちろん襲わせてやるという意味ではない。全員を固めて動けない状態にして連行していくと、商船の上では、臨戦態勢の船員たちがいた。
うん、海賊船が見えてたもんね。その上で突然海賊船が消失してなぜか海賊を引き連れた女が飛んできたんだ、訳が分からない事だろう。私も自分じゃなかったら訳が分からないところだ。
「ちわー、通りすがりの魔法使いでぇっす。そしてこちらは許可があるのにこの商船を襲おうとした海賊共です。捕縛ヨロ。責任者おる?」
「は? え、あ、はい。あ、私が船長です」
商船の船長に海賊を引き渡すと、戸惑いつつもしっかり捕縛してくれた。
「魔法使い様。助けていただき感謝します。して、その、これはいったい……我々が目視している所で、船が真っ二つに割れた後、消失したように見えたのですが」
「海賊に襲われたけど返り討ちにしたっていう
「は、はい!」
ちょっと商船の船長を脅してしまったけど、手柄をあげるんだからまぁいいよね!
手柄になるよね?……シーサーペントもつけようか? あ、いらない。そう。
「魔法使い様。あなたほどの使い手ともなればさぞ名のあるお方なのでしょう。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ん? んー、それはよろしくないなぁ」
いくら行商人カリーナ・ショーニンちゃんにアリバイがあるとはいえ、こんなトンデモ魔法が使えるとなったらそのアリバイも余裕で崩れるだろう。面白半分で顔を突っ込んだようなもんだけど、面倒事は御免だ。
「姿から私の事調べようとしてもダメだよ。この姿はこの海賊に因縁つけられてた女の姿だ。本当の姿については詮索しないでね?」
「なんと! 魔法使い様は変身魔法の使い手でもありましたか。それほどまでに素性を隠そうというのであれば、分かりました。お名前を伺うのはあきらめましょう」
「ありがとう、助かるよ」
うんうん。あとこの姿が本当の姿じゃないとは言ってないんだから、嘘じゃないよ。
「流石に魔法使いが関わってるのは隠せないだろうから、そこは言ってもいいよ」
「安心しました。見るに、彼らは悪名高いゴメスティ一家。我々では太刀打ちできないことは明白ですからな」
「あー、やっぱ悪名高かったんだ? よきかなよきかな」
とりあえずゴメス達については、これでいいだろう。
……『ポセイドン』という力をなくしたゴメス達が、これからどうなるか。
一度は領主との繋がりで解放されるかもしれない。
しかし、その後は?
いやぁ、どうなるんだろうね。カリーナちゃんただの商人だから想像がつかないや!
今まで真面目にやってきてたなら、きっと皆が助けてくれるよぉ。
なんて、能天気な事でも言っとこうかな。
あっそうだ。ついでに船で助けたお姉さん3人をよろしく頼んでおこう。
こっちの船長は良い人そうだし、もし私のお願いを反故にしたとなったらどうなるかを考える頭もありそうだ。
「あの。3人ほど面倒を見ていただきたい女性が居るんですよ。海賊につかまってたんで助けたんですが、身寄りとかそのあたり聞いて、いい具合に頼めます?」
「かしこまりました。魔法使い様の頼みとあらば……」
深々と頭を下げる船長。うむうむ、苦しゅうないぞ。
これで少なくとも悪いようにはならないだろう。
私はお姉さん達をこの船に預け、ヴェーラルドへと転移。
そんで、サクッとゴメスの陸上拠点の家も収納空間に強盗。その日、街中の一軒家が、突如消失するという事件が起きた。
家のあった場所は、地下室もあったもんだから綺麗に四角い穴が開いている。
空間魔法使いでもなければ、いったいどうして、どこに家が消えたのかは分かるまい。
「後は野となれ山となれ! さーて、次は改めてディア君のお姉さんを探さなきゃだな!」
確か、領主の所だって言ってたよな。ゴメスが。
―――――――――――――――――
(海賊退治、完!)
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