逃げ場はない。
私カリーナちゃん。神様への貢物ゲット、とか思ってたら盛大にポカしちゃってたの。
あーん、私ったらバカバカ! おバカさん!
「あ。その包帯ってもういらないよね?……はぁー、治療費はこれでいいや。これも足に巻いてたわけだし靴下扱いにならんかなぁー」
「あなた、何者……」
「詮索は不要だよ。んじゃ、お姉さん達を助けるからちょっと目をつぶってもらえる?」
お姉さん達は私の言うことに素直に従い、目を閉じてくれた。
……私の目が届かない所で騒がれても困るので、ディア君のいる通常収納空間とは別の時間停止収納空間に入れておこうね。ポイポイポイッとな。
「えーっと、それでゴメスは……っと」
ディア君のお姉さんはここに居なかった。ゴメスにどこに売ったかを吐かせなければならないだろう。
いや、ヴェーラルドの奴隷商を当たってみるべきか? うーん、奴隷商に売ったとも限らないし、やっぱ先にゴメスだな。放っておくと次の犠牲者が出そうな感じの会話してたし。神器も回収しないとだし。
「しまった、マーキング付け替えてたからゴメスが今どこに居るかわからんぞ。どないしよ」
空間魔法で検索する手もあるけど、さっきお姉さんたちの足を治すのでだいぶ疲れたからあんまり広範囲に広がるような魔法使いたくないんだよなぁ。基本的に自分の外に広く作用する魔法の方が疲れるっぽいんだよねぇ。
「とりあえず先に神器回収しちゃうかぁ……」
一度神器の部屋に戻ることにした。転移するのもなんなので、来た道を歩いていくことにする。
「はーい、ちょっと通りますよーっと」
「あ? 女? なんでこんなとこに――げぶっ」
「おい、お前ちょっと――うぐあっ」
通路ですれ違った海賊をぶちのめしつつ、私は神器の部屋の扉の前に戻った――が、部屋の扉が開かなかった。……大事な部屋だもんなー、鍵くらい掛かるか。
しかし空間魔法を使えば鍵開けくらい楽勝ー……
……って鍵穴ないんだけど?
鍵穴が見つからないなら直接部屋の中に転移するしかないか……仕方ない空間把握だ。
って、んん? 部屋の中がよく見えないな。壁になってる? むむむ? どうなってんだこれ。
そもそも扉に鍵がかかっている感じがしない。
もしかして、扉が魔道具か何かなのか? ゴメスが開けたときだけポセイドンのある空間へ続くとか。どちらにせよ、なんらかの鍵をゴメスが持ってる可能性があるなぁ。
つまりゴメスを探さないといけない。
「……逆に考えるんだ。ゴメスをとっ捕まえればすべて解決すると!」
うんうん、そう考えればやることがスッパリ分かりやすくなったと言えよう。
そうだ! 甲板で暴れたらあっちから出てきてくれないかな? 名案じゃね?
そうと決まれば甲板まで移動だ!
えーっと、道はどっちだっけ……別にいいか。直通で天井ぶち抜いて上に行けば甲板に出るだろ。
というわけで甲板まで戻ってきました。
大きな音と共に現れた私に、甲板で戦闘準備をしていた海賊の下っ端たちが注目した。
「な、なんだてめぇ!? うわっ、船に大穴が!?」
「おい、あれ船長と飲み比べした女じゃ……」
「ひぃ!? ば、化け物ッ」
私の事知らないヤツ、飲み比べでは知ってるヤツ、倉庫でぶっ飛ばされたヤツ。
それぞれ異なる反応を見せるが、とりあえず全員武装済みであった。剣だけじゃない、銃まで腰に下げてるぞ。
え、この世界って銃あるんだ? 初めて見た。
「ふぅ。やぁ下っ端ども、エルフの女の子をしらない?」
「知ってても誰が答えるかよ! それよりその穴どうすんだよ!!」
「船内直通の道ができて便利じゃん。知ってる事を答えろって言ったんだから、お前らは私に従って情報を吐けばいいんだよ?」
やれやれ、簡単な日本語も分からないだなんて……いや日本語じゃなかったわこの世界。
「おい! 手足を狙え、生け捕りにするぞ! 身体で修理費を払ってもらおう」
「あはは! 神を恐れず、私を生け捕りに出来るもんならやってみな! 私は強いぞ!」
お、数人が逃げてる。とはいえ船の上からの逃げ場はない。
つまりゴメスに助けを求めに行ったのだろう、狙い通りだ。ジャンジャンよんどいでー。
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