……着替えました
「あのぉ、カリーナお姉さん。ボク、どこで着替えたら」
「ん? 着替えは、まぁそこらへんで……あ、そっちのベッドの方には近づかないでね! (ある意味)危ないものが転がってるから!」
「は、はい」
私の私的スペースは近寄らせないでおく。……色々と隠しておこう。子供に見せたらいけないものがあるんでな。
あとベッドといってもまだ箱と毛布しかないし。
「カリーナお姉さん……着替えました」
「おー、着替え早かった、ね……ンンッ!」
黒いワンピースにオーバーニーソ。男とは思えない見事な可愛さだ……!
可愛さを求めつつも、恥ずかしさからなるべくシンプルなワンピースを選んだのだろう。だがそれが似合う。初めての女装、という初々しさ!
頬を赤らめ、困った顔をしている。男の子なのに女の子の格好するのはやっぱり恥ずかしいんだね! 分かるよ、私も元男だから!
つまりそれは羞恥心――神様の求めるスパイスということ!
「……ちゃんと、カリーナお姉さんの言う通りに下着も女物にしました。確認、しますか?」
「そ、それはあとでね! ……フーッ、こんなかわいい子が女の子なはずがない、っていうのはこういう事か」
うわ可愛いぃー、抱っこしてぇー! と悶えたくなるところを必死でこらえておく。
コトが終わったら存分に撫で繰り回してやろう!
「お、お姉さんのお眼鏡に適いましたか……?」
「もちろん合格! 可愛いよ、ディア君はとっても可愛い! 可愛い!! 白銀の髪と黒いワンピースが絶妙なコントラストで良く似合ってるよ! 可愛い!!」
「うう、ぼ、ボクが我慢すれば、本当に姉様を助けてくれるんですよね……?」
「助ける助ける!」
「わかり、ました……で、ボクはどうすれば?」
「じゃあとりあえずディア君のお姉ちゃんの特徴教えて」
「え? あ、はい」
助ける人の顔もわからないんじゃ、誰を助けたらいいか分からないもんね。
尚、さりげなく女装してからは君付けで呼ぶことで、あくまで君は男の子なんだぞと意識させていくスタイル。
「えーっと、顔はディア君に似てるのかな?」
「はい。姉様もエルフで銀髪、ええと、体つきはカリーナお姉さんに似てる、かな?」
「ふむふむ。服装は参考にならないからいいとして、情報が少ないな……ま、それらしいエルフ見つけたら助けていくからね。ディア君可愛いから、私頑張っちゃうよ」
「お願いします、姉様は大事な家族なんです!」
ディア君のご家族の商会で船と乗務員を借りての一大事業だったが、運悪く海賊と出くわし積み荷や諸々を奪われてしまったらしい。
元々は別の国の港を目指していて、ヴェーラルドに来る予定はなかったそうな。
……お姉ちゃん殺されてないといいんだけど。
助けるって言ったからには助けないとなぁ。有言実行カリーナちゃんだからね。
「ボクにできることならなんでもしますので……!」
「ん? 今何でもって――」
「すみません……」
「あはは。ホタテだけじゃ足りてないでしょ? 他にも食べ物あるから食べなー。飲み物は……水とお酒しかねぇ! コップ貸すから自分で水出す?」
丁度良い高さの木箱の上に保存食とか屋台の食べ物を複製して並べる。ジュースも買い溜めしとけばよかったよ。
……おっと、調子に乗って複製しすぎてふらっとした。
深呼吸、深呼吸。ふぅ。
なんかこう、マナポーションとかそういうのもあるのかなぁ。
確保しておきたい所存。錬金術でつくれたりするか? 錬金術教本に載ってるかなぁ。
「今、一体どこから……」
「フッ、姉ちゃんを助けてほしいなら詮索は無用だよ?」
「い、いただきます」
そう言って屋台料理を食べ始めるディア君。
食べる姿はなかなか品のある感じだ、というか着てる服も中々良いものだったし船に乗ってたことを考えるに……お坊ちゃんなのかなぁ。
そんなお坊ちゃんに女装させるなんて後々怒られそうだけど……ま、そんときゃそんときよ。いざとなれば逃げれば良し!
「おっと、ゴメス達が船に乗り込んだようだね」
「え、ここから分かるんですか?」
「まぁ魔法でね。さーて、ディア君のお姉ちゃんはいるかな? 船の中に居たら楽でいいけど……」
美人のエルフだし、貞操はともかく命までは奪われていないだろう。私なら少なくとも一週間は弄ぶ。間違いない。多分。そのはず。
ゴメス達は結構大きな船――これぞ海賊船、と言わんばかりの船を出航させた。ドクロマークの黒い帆がすごくそれっぽい。
そしてよほど急いだのだろう、ゴメスはまだ甲板にて肩で息をしている。
神器『ポセイドン』とやらはこの船にもうあるのかな。それも楽しみだ。
「それじゃ、ちょっと海賊船の中を探ってくるよ。ここで留守番してて」
「カリーナお姉さん……姉様を、お願いします」
「まかせてー」
ディア君お姉ちゃんの靴下のためにも、海賊船の中を探っていくとしよう!
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