男の娘育成計画、始動
そうと決まれば話は早い。
ちらっと空間魔法の外、ゴメスを窺うと、現在手下どもと陸地の拠点へ向かっている様子。もうしばらく放置だな、神器『ポセイドン』とやらも気になるし、確保は船に行ってからでいいでしょ。
さて、エルフ君に悪魔の囁き――もとい、天使の導きをしちゃうよん?
「ねぇエルフ君。君のお姉ちゃんを助けるために条件があるんだけど――ああ、別に奴隷になれとか無茶な要求はしないよ。今の君でもできることだ」
「な、なんでしょうか」
「ちょっと女装してほしいんだよね!!」
私がそう言うと、エルフ君はキョトンと首を傾げた。
「……えっと、どうして?」
「あ、お腹空いてる? これホタテ焼き。食べて良いよー」
「ッ……い、いただきます」
バターのいい匂いにつられ、ホタテを受け取り食べるエルフ君。1日以上食べてなかったんだから当然だろう。貝殻まで食べそうな勢いだ。
「食べたね? じゃあ、女の子の格好してくれるよね?」
そう言ってにこっと笑んでみせると、エルフ君は気まずそうに頷いた。
「……はい。うう、それで姉様を助けてくれるなら……」
「モチロン、下着も靴下も全身ちゃーんと女の子のでお願いね?」
「な、なんで!?」
「とびっきり可愛い君がみたいんだよなぁ。その姿が可愛かったらお姉ちゃん助けるのも気合入れちゃうんだけど」
「うぅっ……」
よし、顔を赤くしてる。このままエルフ君を可愛いと褒めれば羞恥を煽れるだろう。ぐふふ。
「そこの箱の中から、自分に一番似合う可愛らしい服を、自分で、選んでねー。ちゃんとスカートなのがいいなー。君のコーディネートが見たい!」
「えう……わ、わかりました……って、あれ? ここって……どこ、いや、なんですか?」
と、ここで今いる場所が謎の収納空間であることに気が付いたエルフ君。
「あ、ゴメン。ここは私の隠れ家だよ。敵が来るってのは嘘、ここは安全だから」
「隠れ家……えっ、その、すごく広いというか……なにも、ない?」
果てしなく広がるこの収納空間には、私がおいた家具と荷物、それとさっき奪った木箱、丸太くらいしかない。一応床はあるが、天井も壁もないのである。
少なくとも目視できる範囲にはないし、確認しようという気すら起きない程果てしない謎空間なのである。
しかもこの空間の他にもゴメスから奪ったお酒やら屋台で買った食べ物を収納している食糧庫な収納空間、今着ている服のオリジナルをしまってあるクローゼットな収納空間もあるのだ。好きなだけ増やせる。
チートすぎるぜ、今度海の水でもしまっとこうかな。
「ま、そのうち家でも建てるからそこは気にしないで。乙女の秘密を詮索するのは無粋だぞ?」
「は、はい……わかりました」
よしよし。いっそゴメスの隠れ家を建物ごと貰うのもいいな。
「あ、ところでエルフ君の名前教えてくれる?」
「ええっと……」
「ん? 別に言いたくないなら偽名でもいいよ、呼び名にするだけだし」
何故か言い淀むエルフ君にそう言う。もしかしてワケアリかね? まあいいよ、細かいことは気にしないカリーナちゃんだ。偉いにしても神様より偉いってこたぁあるまい。
「なら、ディアと呼んでください」
「オッケー! ディアちゃん! 私のことはカリーナお姉さんとでも呼ぶがいい!」
「ちゃん……」
「おっと、ちょっとまってねディアちゃん。いや着替探しといて」
外のゴメスがどうやら拠点に着いたようだ。わざわざ私に強盗される荷物を纏めてるねぇ。書類も袋につめちゃってまぁまぁ。あれはなんかの証拠になりそう。
お! 金貨じゃん! 袋いっぱいだ、溜め込んでやがったかー! やったぜー!
……その、一割くらいは貰ってもいいよね?
さてさて、ディアちゃんのお姉様はこの拠点には居ないようだ。船の方かな? それとももう奴隷商に売られちゃったのかな?
ま、ゴメスに聞けばわかるだろ。引き続き監視を続行する!
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