ゴーレムってやっぱロマン



 私カリーナちゃん。神様に愛され、女の子の靴下を集める宿命を背負わされた女……


 ちなみに、神様からのご褒美アイテムについては『複製不可』とカタログにかいてあったわ。つまり生理スキップ薬も毎月使うなら毎月買わないといけないわけで……


 だけど私は生理に負けない!


 節約することは儲けること!

 毎月50SP分、生理痛に耐えればいいだけの話ッ!

 それだけで実質毎月50SP稼いでるも同然なのだから、耐えるのよカリーナちゃん!


「ちなみに、生理っていつごろにどうくるんです? ココだけの話、私ってば生まれてからまだ1か月経ってなくて」

「え? んんと、そうですね……えっと……オリモノが増えて……」

「??? 保健体育で習わなかった専門用語が多いな……」

「用語から教えないといけないんですか。ええとですねぇ……」


 ふむふむ。なるほどぉ。




 ……んんー、なんか体が重い気がしてたんだけど、まさかこれも生理の予兆だったとは。

 てっきり胸が重いだけかと思って空間魔法でちょっと軽くしていたのはここだけの話。クーパー靱帯を労われ。


「ありがとうございます、勉強になりました」

「まぁ私も実際に生理したのって随分と昔なのでうろ覚えですけど。お腹を冷やさないようにするといいですよ」

「腹巻でも買うか作るかしといた方が良いですかね」


 あと石を温めてカイロ作っておくのもいいかもしれない。


 ……とにかく一度生理については経験してみるしかないだろう。怖いけど。世の中の女の人はみんな経験してて、普通には死ぬわけじゃない事なんだから。怖いけど!


 ど、どうしても無理そうならスキップ薬使う方向で! ぐすん!



  * * *


 せっかくなので神様に屋台で買ったご飯をいくつかお供えし、しかし今回は靴下の納品がなかったので神様に会うこともなく町中に戻る。


 と言っても特に目的地があるわけでもない。退出偽装してるから商人ギルドにも冒険者ギルドにも顔を出せないし、なんなら宿に泊まることも難しい。まぁどうせ自分の家こと収納空間で寝るわけだけど。


 適当に夕方までぶらぶらしようかなー、と港付近の道を歩いていると、大変興味深いものを発見してしまったのである。


「……あれはなんだ?」


 人間より二回りは大きい、二足歩行する岩の集合体。人型のそれが、器用に木箱を持ち上げて運んでいたのである。

 灰色の石を手足にした姿はどことなく甲冑騎士のようにも見え、ロボットといってもいいかもしれないスタイリッシュさを醸し出している。凄いカッコいい。


 私は思わずそこにいた通行人の男を捕まえて聞いた。


「ちょ、ちょっと! あれ、アレなんですか!?」

「え? あ、あー、アレはゴーレムだよ。なんだお姉さん、ゴーレムを初めて見たのかい?」

「ゴーレム! あれが! へぇー!」


 言われてみれば間違いなくゴーレムと呼ぶに相応しい存在だ。

 あの胸の装甲をぱかっと開いたらコクピットでもありそうだけど。


「あ! モンスターをテイム、って感じで?」

「ちっちっち。お嬢さん、モンスターじゃあないよ。あれは錬金術で作った大型魔道具のゴーレムさ」

「マジで!?」


 そういえばマッサージ器を買った魔道具店でもゴーレムがあるとか言ってたっけ。

 マッサージ器の事しか覚えてなかったわ。てへっ!


「あれ魔道具ってことは……もしかして乗り込んで動かしたりできるの!?」

「モチロンだよ。そしてあのタイプのゴーレムは半自動制御だから無人で動かすこともできる。あ、テイムよりも安全なのは間違いないよ。言うことを聞いてその通りに動くし、逃げ出したりもしない。力仕事は間違いなく向いてる。ただ、魔石代はべらぼうにかかるから、大商会でもないと運用は難しいね」


 むむむ、そうか。魔石代かぁ。

 というかなるほど。ゴーレムは重機みたいな存在ってことか。実際、少し眺めてみるとその仕事は大型船からの積み荷降ろしというクレーンやフォークリフトのような仕事をしているようである。

 中に人が入っていれば細かい制御ができ、命令だけだと自動運転とか……いいなぁ。


「いいなぁアレ。カッコいいなぁ」

「ほう、見る目があるね。あれはゴメスティ商会のゴーレムで、錬金術師スワンティアが開発した最新式さ。どうだいお嬢さん、お茶でもしながらボクとゴーレムについて詳しく話さないかい?」

「んんん。……お兄さんゴーレムに詳しいの?」

「ちょっとばかしマニアなのさ」


 どうしよう、ちょっと魅力的なお誘い。断る理由もあんまりない。

 ……お茶くらいは良いかな?


「いいよ、ゴーレムについて聞いてみたい」

「よしきた! おすすめの店が――」

「まちな兄ちゃん。その嬢ちゃんには、先約があるんだ」


 ん? と、その声に振り向けば、そこには頭にバンダナを巻いて横縞のシャツを着た、いかにも海賊の三下っぽい男達がいた。


「ひっ、ご、ゴメスティ商会の……し、失礼。用事を思い出したのでこれで」

「あちょ!?」


 通りすがりのゴーレムマニアは逃げ出した!

 ……逃げられてしまった。


「誰よあんたら。私に何か用だって?」

「ああ、探したぜ嬢ちゃん。ウチの船長がお呼びだ、来な」

「船長?……あー、ゴメスティ。そういや、あの飲み比べで私に負けた海賊の名前がゴメスなんちゃらって名前だったなぁ」

「なんちゃらは要らねぇ、ゴメス船長だよ!?」


 そうだっけ? まぁいいじゃん。大体合ってるし。



――――――――――

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