真理の一端
私カリーナちゃん。ローションも仕入れたし、もうこの町に用はないわ!
私は港町ヴェーラルドを出立した――
――ということにして、門から出た後、町の中に転移した。
いや、今から町を出た事にしてソラシドーレにつくのが5~8日後くらいにしないといけないんだけどさ。あれなんだよ、ひとり時間が多すぎても暇っていうか、あまりよくないっていうか。ね?
あ、もちろん冒険者ギルドでソラシドーレ行きの配達依頼も受けてるよ。大事なお小遣いだからね。荷物は収納空間に納めてるので、私は気軽にヴェーラルド観光を楽しめるって訳よ。
お金のやり取り履歴が残らないよう身分証明書も封印。あらかじめ現金にしておいた銀貨7枚が滞在予算である。
使い切ったら収納空間に帰ってソラシドーレ到着の頃合いまで一人のんびりする方向で行こう。
錬金術の店で買ったマッサージ器、じゃなかった。オモチャの改造も試したいしね!
まずは港町らしく魚介類でも堪能してみますかぁ!
あ、できれば女の子の靴下も手に入れたいな。生理スキップ薬を1回分は手に入れておきたいし……
地味に靴下くださいとかいうの難しそうだなぁ。お金を払うこともやぶさかではないのだけど。……羞恥心、のところがキモだよなぁ。
「さーて、屋台だー」
屋台が並んでおり、イカや貝を焼いたいい匂いが漂っている。結構な賑わいだ。
お! ホタテあるじゃん!……バター焼きだと!? 醤油欲しくなるな……あと日本酒。
あ、いやまてよ? 醤油はないけど、酒なら昨日海賊から巻き上げたワインがあるんだよなぁ。
魚介だし白ワインの方が合うかな? あー、でも昼間からこんなお外で飲むのは不味いか。私の酒癖的に。
なら、ここで焼きたてのホタテを購入してお持ち帰りで飲むのがベスト!
「おっちゃん! そのホタテ2つ!」
「あいよっ」
私はこの場で食べたい気持ちを抑え、ホタテを購入してそっとリュックに入れるフリをして収納空間に仕舞った。ちいさな木箱に入れるカモフラージュも忘れずにな。
「あん、ここで食ってかないのかい? 熱いうちにすぐ食って欲しいんだが」
「ん? あー、ああ。土産にするんだよ。帰ってから温めて食べる感じ」
「なるほど。けど、そん時に腹壊してもしらんからな」
「わかってるって」
まぁ中だと時間止まってるからへーきへーき。
うん、やっぱりリュックを買って良かった。木箱もDIYした甲斐があるってなもんよ。
「ちなみに新鮮な生魚を買うならどこで買えるの?」
「朝市かなぁ、もう終わってるけど……あ、一応一般人向けの魚屋もあったか」
「行ってみようかな、場所教えてよ」
「おう、場所はな……」
ホタテを買ったからかスルスルと色々教えてくれるおっちゃん。
私が美人だからかもしれない! あるいはその両方か?
「あんがと! あ、ここの他におススメの屋台とかある?」
「クラーケン焼きだな。マーマン焼きはえぐいから手を出さない方が良いぞ」
「クラーケンはイカだからいいとして、マーマンは確かに遠慮したいなぁうん」
と、こうして次の屋台でもおススメを聞いて沢山の海産物を数人前ずつ買っていった。
……むむ!
美人の売り子さんがおる!!
「あらお嬢さん。ウチの磯煮込みも買っていってくれるの? そんなに食べられる?」
「お土産を届ける先に食べ盛りの子が沢山いるので大丈夫ですよー」
「ふぅん。孤児院かどこか?」
「まぁそんなとこです」
頭にバンダナ、ショートパンツという、海賊みを感じる美人さんだった。
これは、結構なSPが期待できる!!
気さくな感じで、頼んだらワンチャン靴下を手に入れることができないだろうか……と思い、私は意を決して話を切り出した。
「ところで素敵なお姉さん……その、突然こんなことを言うのは驚かれると思うんですけど……お姉さんの靴下を売ってくれませんか!?」
「んん!? く、靴下?」
「お金払うので……その、病気の妹の治療に美女の靴下が必要なんです!」
「どんな病気だいそれ!?」
多分、頭の病気だと思うんだよなぁ。
「えーと、ほら、魔法薬の材料とかそんな感じだと思います?」
「あーなるほどねぇ。魔法薬の素材か……でも、靴下は売れないよ」
「中銀貨、中銀貨払いますから!」
「そうじゃなくて、私ほら、サンダルだし。ってか、靴下なんて上等なモン持ってないんだよ。悪いね」
「なん……だと……?」
私は世界の真理を一つ知った。
美女だからといって、靴下を履いているとは限らないのだ……!
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