魔道具店


 私カリーナちゃん!

 海賊に飲み比べで勝ったの! 反則? ううん、空間魔法も私の外付け胃袋だから全く合法よね!


 というわけで気持ちいい気分で商人ギルドを後にして、今日も宿はとっていないので商人ギルドの扉を出ると見せかけて収納空間へと帰還。


 一晩明けて翌日、改めて商人ギルドから出ることになった。


「今日はローションを仕入れてこようかな」


 商人ギルドにお酒を買ってもらった代金は、銀貨15枚程。ハルミカヅチお姉様にあげたりブレイド先輩が交渉で使ったりした分を抜いてこれなので、かなり利益があったと言ってもいい。

 サティたん、もしかしてだいぶサービスしてくれてた? 今度会ったらお礼しなきゃだね。



 さて、そんなこんなでローションを仕入れに行くわけだけど……

 取り扱いが魔道具店なのである。


 魔道具店なのである!!


「異世界で魔道具店といえば、ロマンだよなぁ」


 私も魔道具を作って遊んでみたいもんだ。便利だよねー魔道具。

 え、空間魔法で十分なんでもできるだろって? それは――


 火をつける魔道具? 火を空間魔法に入れておけばいいよね!

 水を出す魔道具? 水を空間魔法に入れておけばいいよね!

 光る魔道具? 光を空間魔法に入れておけばいいよね!



 ――確かにそうだ! 神様の空間魔法がチートすぎる!!



 いやまぁさすがに空間魔法にはできないことをできる魔道具だってある。

 空間魔法はあくまでも自分の手足の延長みたいな感覚である。ってことは、他の人には使えないわけだ。私以外を仲間にしたときは使い道も多いだろう。


 それこそローションを作ったりできないわけだし。

 うん、きっと魔道具には未知なる可能性がたくさんあるに違いない!




 魔道具店の扉を開け中に入る。

 外から見たときはただの家に看板が出てる程度の怪しいお店だったわけだが、内装はすごく雑貨屋のよう。

 用途の分からない小物が転がっていて、値札もついていないんだけど。この良く分からないデコボコした物とかは一体、何に使う何なんだろうか……?


「す、すみませーん。商人ギルドから、ここでローションが仕入れられるって聞いたんですけどー」


 店の奥に向かって声をかける。何度か「すみませーん? もしもーし」と声をかけると、店主らしき男がやってきた。


「ああ、らっしゃい。ローションね、ウチで作ってるよ。どのくらい買ってくれるんだ?」

「えーっと、買えるだけ? あ、でも質を見てからで」

「ああ、こいつがサンプルだ」


 カウンターの上に小袋をおく店主。中身は白い粉末だ。小指を軽く舐めて濡らし、粉を付けてペロリと舐める。

 ……ふむ、特に味もにおいも感じない、多分上物だな。


 なんかこの取引、イケナイ薬をやり取りしているような気分になってくるな?

 ちょっとアウトローっぽくてカッコいいかもしらんね。


「いいね。これ、お値段は?」

「一袋で銀貨1枚だ。どのくらい買ってくんだ?」


 んんー、銀貨1枚。ハルミカヅチお姉様の提示した買い取り価格と同額じゃないか。それだと利益が出ないんだよなぁ……むしろ普通なら経費で赤字アシが出る。

 一瞬複製してしまおうかと考えたけど、縛りプレイに反するのでそれはナシ。

 ここは素直に値切り交渉といこうじゃないか。


「うーん、銀貨30枚分まとめて買うから、もうちょい安くならない?」


 こっちの資金はおよそ銀貨50枚。ローション以外も取り扱うことを考えると、とりあえずこのくらいかなという買い取り量を提示する。


「ならないねぇ。なにせこれだけの品質の粉だ、他では取り扱ってないよ。嘘だと思うなら商人ギルドに聞いてみな」

「そこをなんとか! こっちも生活があるんだよ!」

「……うーん、どうしようかなぁ」


 そう言いつつ、チラチラと私の胸に目線が行っているのが分かる。

 あれか? おっぱい揉ませたら1割引きとかになったりするのか?


 オバちゃんにフルーツ牛乳と引き換えに揉ませまくった乳でよければ、揉ませてやるのもやぶさかではないぞ? 元男としておっぱいの引力は分かってるからな!


「うーん、どうしようかなぁ」

「……何とか安くなりません?」

「うーん、どうしようかなぁ」


 おい、チラ見じゃなくてガン見し始めたぞ。なんとなく胸を隠すように腕を組む。

 ひょっとして私から言い出すのを待ってるのか?

 素直に言えば揉ませてやっても良かったんだが……これはないな! 臆病者チキンめ。


「じゃあ、なんかこう、魔道具も買うんで。ここって魔道具の店なんですよね?」

「……ああ、そうだね。魔道具と合わせてなら1割引きにしてあげてもいい」


 よっしゃ。それなら――と、魔道具の値段次第だけども。


「ちなみにこいつは何の魔道具で、お値段はいかほど?」


 先ほどあったデコボコの魔道具を指さす。

 店主は「なんだっけかそれ……」と少し考え込む。おい、しっかり把握しとけよお前んとこの商品だろ。


「あ、思い出した。それは羊皮紙を特定の形に切る魔道具だね。銀貨1枚だよ」

「特定の形?」

「羊皮紙の上に置いて、その魔道具の輪郭の形に切るのさ。ほら、四角でちょうどいい向きでおけるだろ? そのあと上のポッチを押せば、そのサイズで切り取ってくれるんだ」

「……ハサミでよくない?」

「だから売れ残ってるんだよね。買ってくれたら助かるけど」

「なるほどね?」


 もしかしてこの魔道具店、流行ってないな?


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