港町ヴェーラルド
港町ヴェーラルドへ行こう!
美少女奴隷ちゃんゲットへの道のりは遥か遠く険しいものだった……
お金稼ぎするにも、木こりが封じられるだなんて……こうなったら別の依頼を受けるしかあるまい。
うーん、討伐依頼とかあるかな? コボルトにウルフにスライム……あばれ火馬? 燃えてるのか馬が。そういうのもあるんだ?
「そういやカリーナちゃん、ハルミカヅチ姐さんに買い物頼まれてるんじゃなかった?」
「あ。そういえばそうでした」
やっべ、うっかり忘れかけてた。私としたことが!
となると、行商も含めてサティたんに教えてもらったローションを仕入れられる町――港町ヴェーラルド方面の配達依頼でも受けたい所存。
「って、あんだけデカいリュック背負って、野営道具も入れて、その上で何か運ぶ余裕あるのか? 重さ的には心配してないんだけど」
「あっ、えーっと……そうだ、木こりで使った荷車って1台買えないですかね」
「大銅貨1枚くれたら交渉してやっても良いぞ。多分中銀貨1枚くらい、高くても大銀貨はしないはずだ」
ありがたい。木こりで懐が温かい今のうちに頼んでおこう。
収納魔法があるので本当は必要ないが、「ならこの荷物はどうやって運んだんだ?」と突っ込まれたら答え難い。私に荷車があって困ることはないだろう。
そんなわけで、中銀貨1枚、ブレイド先輩の報酬も大銅貨1枚支払って荷車を1台購入。先輩の交渉のおかげでロープと雨除けの布もオマケしてもらえたのでホクホクだ。
これがあれば大抵のものは「これを使って運びました」と言えるだろう。
ってか、この布だけでも普通に銀貨2枚くらいしそうなんだけど? いいの?
「将来大商人になるお嬢様だから、今のうちに恩売っておくといいぞって言ってやったんだよ。あいつも当然木こりの話は知ってたし、普通に納得してくれたわ」
流石先輩、交渉上手。
先輩を嘘つきにしない為にも、いっぱい稼がなきゃね!
「あ。道中野宿とかすんだろ? スカベンジャースライムも用意しといたほうがいいな」
「あー、その辺の小物も揃えないとっすね」
「ついでだ、手伝ってやる。色々買っとけ。服とかは要るか?」
「あ、そっちは大丈夫っす。ストックあるんで」
服については複製でどうとでもなるからね。
実際最初にハルミカヅチお姉様に身ぐるみはがされてから、私はオリジナルを保存して複製品を着てるし。着潰したらコピーするだけさ!
「じゃ、小物とか食料だな。ヴェーラルドなら気候もここらと変わらないし……よし。ついて来い、いい店を知ってる」
で、面倒見のいいブレイド先輩に連れられ、そのまま色々とお買い物だ。
木こり報酬をふんだんに使い、個人用スカベンジャースライムやらテントやらも購入。魔物除けのお香(気休め程度だがないよりマシ)とか、調理器具もだ。
「おいカリーナ、これ、酒1本と交換でもいいか?」
「いいっすよ。むしろリュックが空いて助かるっす……って、それ酒1本でいいんすか!? フライパンっすよ!?」
「あ、じゃあ2本で。んでこれとこれも付けてもらえばトントンじゃね」
「うぉぉ、油もいいの? マジで? あああありがとうございます!」
そんな風に物々交換する事もあり、なんやかんやお得に揃えていくしリュックに空きスペースもできていく。スゲー、買い物上手じゃん先輩。
「本来は馬車持ちでもなきゃこんな沢山買ったりしないもんなんだが。丸太を軽くする魔法が使えるお前なら何とかなんだろ?」
「っすね。うぇへへ、生活水準めっちゃアップしますわこれ……ってか先輩、冒険者より商人の方が向いてるんじゃないっすか?」
「バカか、知り合いが多く居るだけだよ。顔が利くのはこの町だけだしな」
小突かれた。まぁ確かに先輩は人が好過ぎて商人には向かないかぁ。
サティたんにかかったら翌日尻の毛まで毟られそうだ。
「お前の顔が良いのもお得に買えた要因だぞ」
「まぁ! 美人ってお得だわ! うふふふふ」
「んで、そういえばその美人は護衛依頼を出すのか? 受けても良いぞ」
ん、先輩たちなら安心して依頼できるけども……
「んー、折角ですが、今回は一人で行ってみますわ。ちょっとやりたい事もあるし」
「そうか。普通なら止めるとこだけど、お前だしなぁ。無事に帰って来いよ」
「うっす、色々お世話になりました! あざーっす!」
そんなわけで、配達依頼の荷物と併せて酒の詰まった大きなリュックを荷車に載せ、私は最初の町、ソラシドーレを後にしたのであった。
初めて商人ギルドのギルド証使っちゃったよ! いえーい!
* * *
「このソラシドーレ出町記録は本日の昼だな。早すぎる、偽物だろう」
「あひん……!?」
私カリーナちゃん! 今、港町ヴェーラルドの門に居るの!
聞いてないよ! 商人ギルドのギルドカードでは町の入出に日付込みの記録が記録されてるなんて!
「商人ギルドのギルド証だぞ? 偽造なんてありえるか?」
「現実に目の前にある。……積み荷はギルド証のものと一致しているな。数も問題ない」
「冒険者ギルドの依頼物だろう? そちらもグルということか」
「どちらにせよこれは大問題だ。我々では判断が付けられない。おい、上とギルドに問い合わせ――」
「み、皆様ぁ! こちらを、こちらをご覧くださいぃ!」
私は五円玉の偽造催眠身分証をかざす。私を取り囲んで話をしていた兵士の皆さんの目が優しくなった。
「……ああ、なんだ。最初からそれを出してくれれば。よし、こちらも入町許可を」
「ああああまってまって! それは今度でいいです。一旦帰るんで!」
「む? しかし仕事だしな……」
「ちゅーーーもーーーーく! 身分証、この身分証に免じてどうにか!」
「そうか。わかった」
っぶねー! あっぶねーよこれ。あー、ビックリした。超焦ったぁ。
いやね、空へ転移するじゃん? 空から港町ヴェーラルドを探すじゃん? 行くじゃん? 堂々と門から入ろうとするじゃん? ギルド証見せたじゃん? これよ。
てか、荷物についてもギルド証の方に記録があったらしい。
いやぁ、ハイテクな機能ついてんなぁ! 商人ギルドのギルド証はよぉ! 税金対策かよぉ!?
あってよかった偽造身分証。神様に返納しないで良かったよぉ。やっぱり重要アイテムはとっておくもんだね。
「っくぅー、どうすっよこれ。私何も悪いことしてないのにぃ……」
このままじゃ町に入れない。いや、入ろうと思えば勝手に中に入ることもできるんだけど、入退で記録がされる以上中でギルド証が、身分証が使えないという事だ。
いや、ここは逆に考えよう。勝手に町の中に入ってギルド証を使った結果、「違法侵入だ!」と騒がれなくてよかったんだ、と。
「……仕方ない、5日くらい時間潰すかぁ」
要するに、時間が早すぎたのが問題だったのであり、普通に違和感のない時間になるまで待機すれば何の問題もない。
ま、休暇だと思ってのんびりしよっと。
―――――――――――――――――――――――
★の評価がどういうシステムなのか良く分かってない今日この頃、章分けをしておきました。この話から新章です。今後ともよろしくお願いします。
(ところで、★っていっぱいあると嬉しい感じのやつって認識であってます?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます