オトナな買い物の話


 私カリーナちゃん。神様とお話して帰ってきたところなの!

 神様は相変わらずえっち……というかド変態だったわ!


「……ていうか、なんかすっかり神様の眷属だよなぁ私」

「御同輩? 何をいまさら。私たちは生まれた瞬間から神の子ですよ」


 にこりと微笑むシエスタ。可愛い。


「……ずっとそこに居たの?」

「神様とお話しされていたんですね。こちらでは数秒程度です……おや、その本は?」

「ん? ああ、神様から貰ったカタログだね」


 私の手にはSPカタログが握られていた。


「シエスタもこういうの貰ってるの? 神様からのご褒美」

「ご褒美ですか。私はいつも現物支給ですから、こういうカタログでもらったことはありませんね」

「現物支給……」

「主にスイーツです。そのカタログには載ってませんか?」

「あ、載ってる! へぇー、色々あるなぁ」


 日本で見かけた事のあるコンビニスイーツはもちろん、異世界フルーツを使っているスイーツまで幅広いメニューが記載されていた。


「普通においしそうなんだけど、安いのは50SP、高いのは300SP。それなりに面倒くさそうだな……」

「でも神様じゃないと手に入れられないですから。異世界スイーツ」

「確かに。これは魅力的だなぁ……」


 4つで神器1つ分のスイーツとかどんな味がするんだろう。

 そんな風にパラパラとカタログをめくっていると、とある品に目が留まる。



 ――『生理スキップ薬(1回分):50SP』



 説明文を見ると、月一のアレを1回スキップできるご褒美だった。『生理の途中で使った場合はその時の生理が即座に終了します。直前の使用を推奨!』とのこと。


 ……そっかぁ、今は女だったなぁ私。

 っていうかカタログに載ってるってことは、生理あるんだ私。

 こういうのも、もしかしたら使うかもわからんね。


「シエスタはこういうの使ってるの?」

「あ。私サキュバスなんで、生理とか自分で自在に操作できます」


 種族特性いいなぁっ!



  * * *



 さて、神様との話し合いを経て、やっぱり奴隷の一人でも欲しいなと思った次第。

 異世界モノの定番だしね! 可愛い奴隷少女とくんずほぐれつ! してぇ!


 というわけで、どうすれば奴隷を買えるのか、いくらぐらいするのかとかをブレイド先輩達に聞きにきました。わーい。おせーて先輩!


「やめとけやめとけ、奴隷なんて良いもんじゃねーぞ」


 早速のダメ出し!


「いきなり夢を折ってきますねブレイド先輩……!」

「だってなぁ、奴隷だぞ? まず、自分から好き好んで奴隷になるやつはいないだろ」

「そっすね」


 余程の変態でもなきゃあり得ない話だ。


「その時点でまぁ全員奴隷抜けを狙ってると思っていい。ここまでは分かるか?」

「奴隷抜け……なるほど、一般人への復帰っすね」


 できるなら一般人に戻りたい。うん、普通にそう思うだろう。当然だ。


「この時点で、奴隷は信用できない。主人の信用を得ようと真面目に働く奴隷もいるが、それは全部演技だと思え。絶対に信じるな。信用していいのは、清算が終わって奴隷から一般人に戻った後、それからだな」

「えっ、どうして?」

「奴隷でなくなった途端に豹変するヤツが多いんだ。例えばこんな話がある」


 ~・~・~


「奴隷ちゃん、結婚しよう!」

「嬉しい……! でもご主人様。奴隷は結婚できないわ……」

「じゃあ君を解放する! これでもう奴隷じゃないから結婚できるよ! さぁ――」

「よっしゃあ!!! 奴隷抜けだぁああ! あー、お前みてーな(ピーーーー)野郎、誰が好き好んで寝るかよ! 格下相手じゃねぇと碌に話も出来ねぇ陰キャがよぉ! 毎回演技すんの大変だったぜ! アバヨ! ついでに今までの慰謝料にプレゼントして貰ったモンは全部残さず貰ってくから! 趣味悪いけど売れば少しは金になんだろ。ギャハハハハ!」


 ~・~・~


「と言う感じで騙されて有り金全部巻き上げられたのがそこのシルドンだ」

「シルドン先輩!? マジっすか!?」

「……ぐふぅ……古傷をえぐるなブレイド……! それは俺に効く……ッ」

「あの件でどんだけ迷惑かけたと思ってんだ。一生ネタにしてやる」


 体験談かぁ、うわーい。

 ちなみに実際は解放されて数日間は猫をかぶっていて、金目の物を法に触れないように周到に自分にも所有権があるように移し、合法的にありったけ奪っていったそうな。

 え、えぐい。


「勉強がしたい、って勉強させたら犯罪にならない悪事のやり方を学んでたなぁ」

「それに高いポーションで傷の治療もしてやって、3年も一緒にいたのになぁ」

「セッコー先輩も追い打ちやめたげてよぉ! シルドン先輩、その……ドンマイ?」

「甘えん坊な清楚系だと思ってたのに……ぐすん」

「ま、シルドンの貯蓄だけで助かったよ。結婚資金に貯めた二人の貯金、なんかは全部持ってかれてたけどなぁー」

「ああああああーーーーッ!!」


 防御力に優れたシルドン先輩がここまでダメージを負うとは……

 物理じゃなくて精神ダメージだけど。これはひどい。


「い、いいかカリーナ……見目のいい女奴隷を見たらそいつは詐欺師だと思え……!」

「……うっす、シルドン先輩。肝に銘じておくっす!」


 シルドン先輩に、敬礼!!


「とまぁ、シルドンを見ればわかる通り『好かれていると思って可愛がってたら心底憎まれてた』ってのは超キツい。愛玩用なら裏切られる覚悟を持っておけよ」

「もう放っといてくれ……」


 グサグサと言葉のナイフで刺し続けるブレイド先輩。死体蹴りがひどい。


「セッコー先輩。奴隷って夢も希望もないんすね……」

「そうだねカリーナちゃん。奴隷は金も掛かるし責任も増える。気軽に買うもんじゃないんだよ」


 購入費の他、飯代に宿代、服やらなんやらで面倒見るための金が掛かる。

 管理責任も増え、もし奴隷が逃げて犯罪を犯したら主の責任になるらしい。


 これを利用して気に入らないご主人様を破滅させ、奴隷商に出戻って新たな買い手を待つという奴隷もいるらしい。なにそのご主人様ガチャ。怖っ。



「ま、そうはいってもソロのお前なら奴隷を持つのは選択肢としてはアリだ」


 お? 話の流れが変わってきたな?


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