神様に事後報告 後編
「ま、カリーナちゃんならほっといても靴下の方から寄ってきますよ! そういう星の下に生まれたに違いありません!」
「神様が作った身体ですよね???」
多分その靴下臭い星もこの神様の管轄に違いない。
「あ。そうだ。ついでにアレも頼んじゃおうかな」
「アレ、とは?」
「はい。この世界には
神器。神に至る足がかりとなるアイテム。あるいは、神の如き力を発揮するアイテム。
その形は様々で、例えば聖杯、聖剣、聖鎧といったいかにもな形で祭られている物もあれば、布団やまくらといった日用品の形をしているものもある。岩や木のように自然物に紛れている場合もあるらしい。
その効果は環境を変えるほどの強大なもの。
大地を豊かにしたり、大量の水で砂漠にオアシスを作り出したり、シリーズのアイテムを7つ集めれば神になれたり、絶対的な防御力を城壁に付与したり、数万の敵を一撃で消し去ったりすることができるという。
「なるほど。で、その神器をどうしろと?」
「ちょっと前に気前よくばらまきすぎたんで、見つけたら回収しといてください。現状世界のエネルギーが赤字で、放置してると10年で使い果たしちゃうペースです」
「……え? それって、この世界が滅ぶってことですか?」
「そですね。何もせずにほっとけば滅びますよ」
やべぇ、一大事じゃん。赤字とかそんな軽い表現じゃすまない奴じゃん。
「滅びる前に私がエネルギー追加してるんで、私が見捨てない限り滅びないですよ」
「あ、そうなんですか。よかった」
「でも赤字経営なのはいただけないわけです。あんまり赤字が多いと私も見捨てたくなるかもしれないですし」
うーん、この神様どこまでも自分本位。
神様らしいっちゃらしいんだけど。
「というわけで、神器1つにつき1000SPあげましょう! いかがです?」
神器1つでサティたんの靴下10足分である。
値段設定間違ってないですかね? 世界の運命を左右する神様級アイテムなのに。
「サティたんの靴下にはそれだけの価値があるんですよ!!」
「値段設定バグってるのは靴下の方だったかぁ」
SPを稼ぐには靴下の方が効率が良さそうだ。
しかし、神器を回収しないわけにもいかない。神様が気まぐれで世界を見捨てたら、たったの10年で世界が滅びてしまうのだから。
「わかりました。平和利用してるようなヤツを除いて、できるだけ回収してみます」
「よろしくお願いしますねー」
砂漠でオアシスを作る、みたいなケースを除いておこう。
「あ。そうだ神様。チンピラどもを懲らしめた話します?」
「そうですね、してください。まぁ見てましたけど」
見てたんかい。
「だって、私を引き合いに出しましたよね?」
「……確かに?」
「呼ばれたら気になって見に行くでしょ?」
「……確かに」
神様を信じるかとか、神が怒ってるとか、そういう風にチンピラ共を脅した気がする。
「それに、ある程度の興奮状態を検知したら、気になって覗いちゃうじゃないですか」
「興奮状態」
「ええ、何か楽しい事してるんじゃないかって。お楽しみなシーンは私も見たいじゃないですか? 鑑賞用としてはカリーナちゃんの身体って最高なんですよねぇ、私そっくりな美少女ですし。やっぱり感情移入しやすい外見は重要ですよね!」
興奮状態もキーになってたかぁ。
分かりやすく言ったら配信者のライブ配信通知だそうな。
……やっぱりコッショリ君もらって正解だったな。
「今回のチンピラ退治、とっても楽しめました!」
「それはなによりでした」
「強制スカイダイビングはとっても楽しそうでしたね」
「ええ。あ、ちゃんと急所だけはガードしてたんで、一応命は保証してましたよ」
「別に殺しても良かったと思いますが、カリーナちゃんは心優しいですねぇ。いいこいいこ」
ニコッと笑い、私の頭を撫でる神様。
まるでアリの生死を語るかのように殺しても良かったとかアッサリ言うあたり、少女の外見でも上位存在なんだなってさりげなく思い知らされるなぁ。
「神様的には人の命とかどうでもいい感じなんですか?」
「目をかけてるニンゲン以外は別にどうでもって感じですねー。別に私、この世界の信仰が必要ってわけでもないですし。他にもいくつか世界所有してるんで」
世界ってそんな『パソコン何台も持ってる』みたいに所有できるもんなの!?
この世界については完全に趣味扱いらしい。
そんな趣味の世界で恋人の名前を騙るバカが湧いたら捻り潰したくもなるよな。
「悪人の成敗で私の事を出すのはそれっぽくて面白いのでアリですね。今後も自由に名前を使っていいですよ! ひかえおろー、みたいな感じで!」
「……いいんですか? というか水戸のご老公様も御存じなんですか」
「神様なので!」
神様だもんなぁ。
「むしろ面白そうな場面では『御照覧あれ!』って感じで私を引き合いに出してください。見物します。むしろ呼んでくれなきゃ拗ねるまであります」
神様の使徒である私が神様を引き合いに出すことで、簡易的に儀式として成立し、良く見えるようになるらしい。
具体的には映像の解像度上限が上がるとか。
「なんなら演劇とかお祭りとかでも気楽に呼んでください。別につまらなくても怒らないんで。神様、雑談配信なんかも好きですよ?」
「……神様ってヒマなんですか?」
「ヒマですねぇ。時空神って時間がいくらでもあるんで。あ、コッショリ君展開してたら見えないのでそこだけは気を付けてください。暗黒配信はノーサンキューです」
「わかりました。まぁ、機会があれば呼びますね」
「わーい! 面白かったらSP査定にボーナスが付くチケット発行してあげます!」
おおっ、ボーナスチケットはありがたい。
納品する靴下が少なくて済むなら、面倒も減るというものだ。
「んじゃ、今後とも私を喜ばせてくれることを願います。サラダバー、ノシ」
「あっ、はい」
サラダバーって。それもう挨拶じゃないですよね、神様?
~~ 特設コーナー:時空神の世界経営戦略、大解説! ~~
上手くいった世界をコピーしよう!
世界の配置で若干乱数がズレたりするけど、靴下の色が違う、みたいな些細な違いだからほっといてヨシ! バタフライエフェクト? しらないことばですね。
また、新規開発する場合、別の世界から生物を流用すると楽だぞ!
メイン開発する星では元素や空気の構成といった環境を揃えておくのがコツ!
さもなくば流用した瞬間に息できなくて死ぬとかあるし。マジで。アレは焦った。
神様「と、このようにして、並行世界や人のいる異世界が生まれるわけです。ねっ、簡単でしょ?」
カリーナ「わぁ、勉強になるなぁ! マネが不可能という一点を除けばよォーッ!」
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